「見通しの良い人生」のための用語とツール開発<5>AIリテラシーを可視化する
娘「AIいいわー、助かるわー」
父「最近、こまめに使ってるみたいじゃん」
娘「学校のテスト前とか、英語とか私向けにテスト作ってくれるんだよ。おまけに、語りが優しい」
父「楽しそうなのがいいね。学校っぽくないのがいいのかい?」
娘「とにかく、私が好きなリアクションにしてって頼んでるのよ。間違えても、アゲアゲにしてくれる言い方ね」
父「確かになあ。テストって、どこか間違えるのが大前提だからな。それがどんな問題でも、できなけりゃ凹むし」
娘「あと、言い回しの語尾ね。『・・・・だっちゅ』とかキャラっぽく言ってくれるんだよ。絶対、先生は言わないよ」
父「そうだっちゅか」
◼️話の始まりは生成AI利用の3つのパターン
以前にアップした話から。
「不登校から試考する生活思創」で、「生成AIとの最適な距離ってあるのか?」というお題で、生成AIと利用者の関係を3つに集約しました。
再掲 図表393

ボス型とブカ(部下)型と、パル型です。ボス型はAIに上司になってもらって、効率良く指示を仰ぐような使い方です。例えば、企画書の手順や、添削など。ブカ型は、AIを作業代行として、利用者が管理者になる使い方です。例えば、プログラムでのコーディングや、リサーチデータの統計処理など。どちらも効率性を重視しています。時間が短縮できる、労力傾注が少なくて疲れない、みたいな方向です。
第3のパターンのパル型は、やや様子が違います。効率性ではなく、今までにないものを創発する方向です。ただ、この創発って、やや曲者です。なぜかというと、「AIよ。何か斬新なものを出せ!」っていうのが通用しないからです。このアイデア出しを求めるのは、一種のブカ型になります。楽してアイデアゲット系の動きですからね。効率の一つです。

パル型は、自分が変わることで、今までになかったものの見方ができるようになること、今までの自分の考え方に疑問を抱くためのものです。新しい何かは、新しい自分からしか生まれることはない、そんな態度で生成AIと付き合うわけです。結構、奥行きがあります。手っ取り早くないからね。

当然ながら、生成AIに対して働きかけるのは利用者側です。今のところ、生成AIは大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)なので、言葉が媒介になります。それらはプロンプトと呼ばれて、何らかの指示書になりますから、言葉にできるかどうか?、もっと求めるなら、言葉で更なるツッコミができるか?、は重要な能力になります。このAI利用のための言語化能力をAIリテラシーと呼んで、ボス型・ブカ型をAIファースト・リテラシー、より深みのある(味のある?)パル型をAIセカンド・リテラシーに区分けしてみたのでした。
さて、前説はここまでです。やっと、今回の話に突入します。
◼️ヴィゴツキーの最近接領域から、思創の手がかりを探ってみよう
目指したいのは、「AIセカンドリテラシーって具体的に何か?」です。
このパル型っていうのは、ユニークなAIの利用の仕方であり、かつ、かなり重要な自己変容に貢献するものになっていきくと睨んでるんですな。まあ、今のところ、睨んでいるだけw
まずは、生活思創ラボの話から。生活思創の手筋は、常に、4つに視点の組み合わせで試考します。4つとは、記号接地・対称性・相補性・カテゴリー越境です。これで、生活に「見通しの良さ」を提供することを目指します。(手法的分類は、アブダクションです)その人の日常生活に新たな見方を提供して、混乱を鎮静させ、退屈に気づきをもたらすことです。
まあ、結構、小難しいことを語ってしまっています。生活思創は小生が提唱しているだけの、孤立した思想探究なのです。知的与太話だと思っていただければ幸いです。
話がズレました。本題に戻します。
パル型に対して、何とか対称性のある関係を持ち込んで、パル型独自の文脈を浮かび上がらす作業をします。
パル型が持っている特徴には、「AIと利用者が対等に近い関係での学び」があります。対等ってことは、普段の生活では友達や仲間と教え合うみたいな場面が近いですかね。社会人で言うなら、自主的な勉強会や読書会などで、先生ー生徒の関係のない中での、知的探究や相互学習です。
これってヴィゴツキーの最近接領域の学びが近い概念ではないでしょうか。ZPD(Zone of Proximal Development)って言われているやつです。
ZPD(最近接発達領域)とは、「もう少しでできる」ことに挑戦するとき、人がもっとも学びやすく成長しやすい領域のことです。これはソビエトの心理学者レフ・ヴィゴツキーが提唱した概念です。
たとえば、子どもが一人ではまだうまくできないけれど、大人の少しの助けや友達のヒントがあればできるようになる課題があるとします。この「一人では無理だが、支援があれば可能になる領域」がZPDです。 ZPDは、今できること(既習)と、まだできないこと(未習)の間にある「成長ののびしろ」とも言えます。この領域で学習を行うと、子どもも大人もスムーズに力を伸ばすことができるのです。
たとえば、自転車の補助輪を外すとき、少し支えてあげることで一人で乗れるようになる瞬間があります。それがまさにZPDの状態です。この考え方は、教育だけでなく、仕事や大人の学びにも応用できます。適切なタイミングで適度なサポートを受けることで、私たちは「あと一歩」のところにある力を引き出し、自分のものにしていくことができるのです。

図表で説明すると、ちょうど真ん中のゾーンです。つまり、挑戦の難易度に範囲があり、かつ、本人の学びの能力にも範囲がある。そして、それを他者(援助者)が、まるで触媒のようになって、「一人ではできないけど、一緒ならできるようになって、その結果、一人で自主的に取り組めるようになる」ゾーンが成立するってことになります。
◼️援用できる文脈を「フロー理論」から持ってきてみよう!
次に用意するのは、どこか類似している要素を抱えている概念です。ここは任意です。ゆまり、あなた次第。作成者のセンスというか、趣味性が反映されてきます。
異質だけど、部分的には同質感のある概念を持ってきて、そこに対称性(同じカテゴリーと妄想しても、蓋然性が維持できる何か)を見出してみます。ここでは「フロー理論」を持ってきました。なんか、料理のレシピ紹介っぽいな。
「フロー理論とは、心理学者のミハイ・チクセントミハイが提唱した、高度な集中状態である「フロー状態」を理論化したものです。この状態は特定のゾーン(領域)があるとされています。
では、生成AIにフロー理論の説明をしてもらいます。
フローのゾーンとは?
フローのゾーンとは、挑戦のレベルとスキルのレベルがちょうど良いバランスにあるときに入る状態のことです。「挑戦がありすぎず簡単すぎない」「自分の力をフルに発揮できる」というちょうど良い状態が「フローのゾーン」です。
🔶 フローが起きる具体的な状況例
① 楽器の演奏ピアノやギターなど、演奏中に「指が勝手に動いている感じがする」「時間があっという間に過ぎる」と感じるとき。
楽譜が簡単すぎると退屈し、難しすぎるとミスばかりでストレスになりますが、**「やや難しい曲に挑戦して集中しているとき」**がフロー状態になりやすいです。
② スポーツバスケットボールでチームの動きが読めて、パスやシュートが自然に決まっていくとき。
「ゾーンに入った」と表現されるのがフローです。
③ 創作活動(アート・デザイン・ライティング)絵を描いたり小説を書いていて、頭の中に浮かんだイメージがそのまま形になっていくようなとき。
「気がついたら何時間も経っていた」ような集中状態です。
④ プログラミングや問題解決コードを書いていて、ロジックがぴったり合って、次々と課題がクリアされていくとき。
複雑だけれども自分のスキルでギリギリ対処できるタスクが最適です。
⑤ ゲームやパズルクリアできそうでできない絶妙な難易度のゲームに没頭しているとき。
頭をフル回転させて、解けた瞬間の達成感があります。
✅ フローを生み出すための条件(チクセントミハイが挙げた要素)
明確な目標がある
今何をすべきか、何を達成したいかがはっきりしている。
即時のフィードバックがある
進捗や結果がすぐに分かることで、集中が持続します。
自己と行動が一体化している感覚
自分の存在が活動そのものに溶け込んでいる感覚。
時間感覚の変化
時間が早く過ぎる、あるいは止まったように感じる。
自己意識の消失
他人の目や自分の評価を気にせず、ただ活動に集中できる。
ポピュラーな図解は、下記の図表485です。
8つの要素でできています。詳細の説明は割愛しますが、ご興味のある方は、さらにAIに問い合わせくださいなw

話の流れが魅力的なのはY軸「挑戦の難易度」がヴィゴツキーのZPDと重なるところです。しかしなあ、ここから文脈を援用するには要素数が8つあって、やや多いい。なので、より単純化します。
それが図表486

4つの要素で説明しているので、先の図表の50%の情報量(8つ→4つ)で大まかな見取り図を作っています。図の構成も縦横の直線だけなので、扱いやすそうです。
フローゾーンは右上(水色)になります。また、残りの3つが無関心、不安、退屈、になります。
◼️ヴィゴツキーの最近接発達ゾーン(ZPD)に適用する
フローゾーンの二軸を活用して、ZPDを可視化してみます。ビフォー&アフターにすると、図表484(再掲)から、図表487への転換になります。
・ビフォーの図

そして、アフターの図が、下に掲げた図表487になります。 どんなビフォー→アフターの図像の転換をしたかについて、解説します。
まず、AIセカンド・リテラシーを想定してますから、X軸は「他者(生成AI)による助け方」としてみます。あとですね。ZPDって、なんか耳心地が良くないですよね。なので、「フロー・ゾーン」に対峙する身近な言葉にしてみました。それが「ジャンプ・ゾーン」。「一人ではできないけど、助けがあればできるようになる」っていう意味が託されているネーミングです。
もう一つは、AIからの提示は挑戦の難易度が「やや難しい」っていう設定ですが、Y軸をこれ以上分解したくないので(AIに従うなら、難し、やや難しい、やや易しい、易しい、だと4つ)、ここでは少ない方が望ましいので、3つに多く括りしてやってみます。X軸は、逆に「ちょうど良い」助けてくれてありがとうみたいな範囲があると試考して、3つに拡張してます。
これで3X3の9マス目のマトリックスに行き着きます。
・アフターの図

中央に「ジャンプゾーン(ZPD)」を配置すると、残りのボックスは8つです。右上から反時計回りに解説します。
・意味不明:難しいところに生成AIの漠とした助けがあっても、何が起きてるかピンとこない。難しいままで、高高度な空中戦を見上げて眺めるだけの領域
・無知:生成AIからの、利用者にあった説明は無知な自分への気づきになります。「ああ、よーわからんな」が、感情的には受け入れられる領域。
・混乱:生成AIの説明がザッパなので、利用者がどうしていいか途方にくれる感じの領域。
・不安:課題に対して、AIの解説が良いかどうかがいまいち腑に落ちない。これで良いのか的な不安が残る
・退屈:そりゃそうだ、しか思い浮かばないので、「生成AI使うまでもないこと」と感じてしまう領域
・再発見:自分で扱える課題だと思っていたら、全くことなる見え方があることにやや驚く。知らなくても平気だが、生成AIのお陰で見える再発見がある
・冗長:生成AIからの過剰な情報が、感情的に萎えさせてしまう領域。「私はわかっているから」という気持ちが先行してしまう
・お任せ:生成AIの助け方が凄さを簡易させる。「なんか、もうお任せします」な思考停止になってしまう領域
以上、ジャンプ・ゾーンの周囲を言葉にしてみました。ちなみに、今回の生活思創は、図の中央下にある「再発見の領域」にいたのかもしれないな。最近接発達領域(ZPD)は、散々聞いて知ってるから、挑戦の難易度は低いと思ってたけど。フロー理論を強引に組み合わせることで再発見が起きて、そこからジャンプ・ゾーンに移動したケースではなかろうか。
ここで、大切な追記をします。
他者からの助けって、感情面の影響がこちらの振る舞いに影響するな、っていう感触がある。AIセカンド・リテラシーって、知的行動への感情面の揺らぎをどう起こすか、どう起きるか、どう対処するか、っていうのが寝ている概念なのだろう。気持ち大切。
昨今は、生成AIへの態度が人によって違うのが、よく話題に上ります。この蜜月な関係だったり、疎遠で終わったりは、それぞれの感情に起因していることが試考できます。面白がって使う必要があるなら、理屈で使わせるのはそもそも無理筋かもな。
では、フロー理論からの眺めは一旦終了。
もう一回、ボス型、ブカ型の能力・スキルであるAIファースト・リテラシーと、パル型のAIセカンド・リテラシーでの能力やスキルを比較し直してみました。 図表489
かなり視界が広がって、言葉が足されました。解像度が上がったってことですな。

せっかくなので、もう少し押し込んでみましょう。
◼️AIセカンド・リテラシーを可視化してみる
AIセカンド・リテラシーには、おおきく2つの段階への能力がありそうです。
一つ目は、ジャンプゾーンに当たりをつけていく能力です。「生成AIをこうやって使っていくと、ジャンプゾーンに行けるだろうという道筋を自らつけていく能力です。「一人ではできないけど、生成AIとならできそうで、一旦できるようになったら、さらに先に一人で進むことができる状況にする」ってことです。
ここで、知的なアハ体験や「まてよ?」という深めの疑問が湧いたなら、ジャンプ・ゾーンの中にいる可能性が高いと言えます

さらに言えば、もう一つの能力は拡張能力です。パル型の良さは、ピントハズレもお愛嬌であり、何度も試行錯誤してもヘタレない関係があります。つまり、当初はジャンプゾーンから外れている領域にいる自分を、生成AIを使いながら、面白がったり、負けないぞ的なゲーム感覚でジャンプゾーンを広げることができる能力ということになります。

図表490は、ジャンプ拡張のイメージ図です。上下の矢印は、生成AIを使って、課題のレベルを調整していく方向。左右の矢印は、生成AIと自分で考える役割分担をチューニングしていく方向。そんなイメージです。
先ほど掲載した図表489でいくと、まさに右下にある発動条件を自分でいじれる人が、ジャンプ・ゾーンを拡張するためのAIセカンド・リテラシーを活用できる人ってことになるのだろう。

AIセカンド・リテラシーの話はここまでです。これもまた、何度か生活思創して こねていきます。例の「深化の螺旋」っていうやつね。そんなこんなで、そこそこお役に立てる可視化したツールらしきものになっていくのではないかと。あくまでも願望だがw
◼️<参考>生活思創が提唱するディープな能力
ここまで書いてみて気がつくのは、話のとっかかりとして先行して試考した「フロー・ゾーン」も拡張能力ってあるよな、ってことでした。

例えば、生成AIを使いながらフロー・ゾーンを体感したとする。でも、それは遅かれ早かれどこかで途絶えるわけだけど、①混乱によってフローからずれたなら、混乱からの再起を図ってみる、②退屈でフローが途絶えるなら、好奇心を発動させる工夫をする、なーんていうのが自発的にできると、フローゾーン自体が広がることになるわけです。そのときにも、何らかのAIとの新たなやり取りがあるなら、これはこれで、もう一つのAIセカンド・リテラシーって言えそうだね。
これがおまけの話。このフロー・ゾーンの加筆版って、自説に当て嵌めさせてもらうなら、マトリックスの中の再発見(ジャンプ・ゾーンの下向きの矢印)ってことだね。AIセカンド・リテラシーの拡張を試みてるわけですな。
父「なんか、だんだんAIの扱いも必須能力になってきてますね」
娘「また勉強しなきゃいけないことがふえるってこと?」
父「まあまあ、そこまでイキリ立たなくてもいいでしょう。既に君たちは暗記ものの勉強からは解放されつつあるじゃん。トーチャンなんかは暗記イコール勉強だったからね」
娘「そうだけどさ。だけど、AIの使い方って勉強して身につけるって感じより、どうやって仲良しになるかって感覚だよ」
父「で、パルってことなんだ」
Go with the flow.
