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フアヒンの夜風

The fear of the ride fades, but the wind, the scent, and the thrill of being alive remain.
乗車の恐怖は消えるけれど、風と匂い、そして生きているという実感は残る。

バンコクからバスで4時間かけてフアヒンまで移動した。着いたころには外はすっかり暗くなっていた。道中は、窓から見える景色や地元の人々の暮らしぶりに夢中で気がつかなかったけれど、バスを降りた途端にこれまでの旅でたまっていた疲れをどっと感じた。

はじめての旅先に到着する時間帯は、その街の第一印象にけっこうな影響を与えるように思う。早朝に着けばその凛とした空気や朝特有の光によってキラキラした印象になるし、着くのが夜になると、視界から入る情報量が少なくなることもあって、不安感が強まる。少なくとも僕にはそんな傾向がある。

フアヒンに到着し、とりあえず空腹を屋台のトムヤムヌードルで紛らわしたあと、配車アプリGrabで呼んだバイクに乗ってホテルへ向かった。

全般的に、タイの運転(特にバイク)は荒い。道が渋滞していればその隙間を縫って進もうとするし、空いていればスピードをぐんぐん上げる。もちろん、車と車の間スレスレをすり抜けていく怖さもなかなかのものだ。けれど、空いた道を高速でかっ飛ばす、そのバイクの後ろに乗る怖さはそれ以上だ。タイは東南アジアで最もバイク事故の死亡率が高いという話を思い出し、運転手の肩を掴む手に自然と力が入る。背中をツーッと伝う汗も、暑さだけが原因じゃなかったはずだ。

結局、なんとか無事にホテルに着いた。

乗車中はそれはそれは生きた心地がせず、バイタクに乗るのはこれで最後にしようと誓った。けれどしばらくして思い出すと、バイク特有の風を感じる気持ちよさ、町の匂い、今を生きているという実感は、旅の記憶との相乗効果で美しく、儚く、そしてなぜか切ない思い出として心に強く残る。

日本で夜に散歩していると、ふとあの感覚が蘇りそうになる瞬間がある。目を瞑る。あの風、あの匂い、あの生きているという実感。それらすべてを全身で思い出そうとしながら、この瞬間の多幸感は他の何にも代えられないと感じる。

The fear of the ride fades, but the wind, the scent, and the thrill of being alive remain.
乗車の恐怖は消えるけれど、風と匂い、そして生きているという実感は残る。

✏️文法ひと言解説

✅ The fear of the ride fades

  • The fear of the ride

    1.  👉 the + 名詞 + of ~ の形で「~の〇〇」を表す所有の構文です。

  • fades は「消える」「薄れていく」という意味の動詞 fade の三人称単数現在形です。

    1.  主語が単数(the fear)なので -s が付きます。

✅ but the wind, the scent, and the thrill of being alive remain

  • but は逆接の接続詞。「〜だが、しかし」と対比を導いています。

  • the wind, the scent, and the thrill of being alive
    👉 the thrill of being alive は「生きていることのスリル/実感」という意味で、of being alive が thrill を説明しています。

  • remain は「残る」「とどまる」という意味の動詞。
    ここでは主語が 複数(wind, scent, thrill)なので、三単現の -s は付きません。

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