国が「令和8年度に調べること」、120テーマを読み解くと、2027年介護報酬改定の答えとその先が見えてくる:老人保健健康増進等事業の採択事業一覧(当初協議分)
ケアマネジャー、福祉用具、DX:なぜ国は今年、この3つを同時に解剖しようとしているのか
厚生労働省が令和8年(2026年)度の老人保健健康増進等事業の採択事業一覧(当初協議分)を公開しました。介護・医療・障害の現場で働くプロにとって、これは単なるお知らせではありません。採択されたテーマを読めば、国が「次の制度改正に向けて何を証明したいか」が透けて見えます。
DX・ケアマネジメント・福祉用具・訪問介護・有料老人ホームの5領域を中心に、2027年度改定が現場にどう着地するかを、介護・医療・障害を面的に見るプロの目線から読み解きます。

「採択事業一覧」は、国の「本音の棚卸し表」である
老人保健健康増進等事業とは、厚生労働省が毎年度、民間シンクタンクや研究機関に委託して行う政策研究事業群です。令和8年度の当初協議分として、120を超えるテーマが採択されました。
なぜこれが重要か。答えはシンプルです。
調査研究は、報告書になります。
報告書は、社会保障審議会介護給付費分科会の資料になります。
審議会資料は、介護報酬改定の論点になります。
つまり、今年度に「調べる」と決めたことが、2027年度の報酬改定の「答え」になる可能性が高い。採択一覧は、改定の「予告編」なのです。
現場の人が「聞いてない」と言うとき、その多くは、予告編を見ていなかっただけのことが多い。
厚生労働省「令和8年度老人保健健康増進等事業採択事業一覧(当初協議分)」(2026年)
ケアマネジャー:「紙を書く人」から「根拠を問われる人」へ
今回の採択一覧の中で、ケアマネジメント領域は質と量の両面で際立っています。

テーマ19「ホワイトボックス型AIを活用したケアプランの社会実装に係る調査研究」(国際社会経済研究所)。
この事業名には「社会実装」という言葉が入っています。実験ではなく、実装です。AIを「使ってみる」フェーズは終わり、「どう制度に組み込むか」を検討する段階に入ったということです。
テーマ18では「ケアプラン点検の効果的な実施方法」(NTTデータ経営研究所)、テーマ108では「介護情報基盤におけるケアプランデータ連携機能」が採択されています。AIとケアプラン点検、データ連携が同時に動いている。この3つがつながったとき、何が起きるか。
「なぜこのサービスを入れたのか」「なぜこの頻度なのか」「モニタリングで何を確認したか」。これまで経験と勘で処理してきた判断が、データと照合される時代が来ます。AIが「この利用者のパターンと類似したプランはこうだ」と示したとき、それと大きく異なるプランを組んだケアマネジャーは、その理由を説明できなければなりません。
これは、ケアマネジャーの仕事が楽になるという話ではありません。根拠なきプランが、通りにくくなるという話です。
テーマ21「住宅型有料老人ホームにおけるケアマネジメントの在り方」(三菱総合研究所)も、その文脈で読む必要があります。
同一法人の系列サービスを限度額ギリギリまで組み込むプランを「囲い込み」と呼びますが、国はこの構造に長年メスを入れようとしながら、なかなか決定的な規制を打てずにきました。その理由のひとつは、エビデンスが不足していたからです。今年度の調査でエビデンスを取りに行くということは、次の改定での規制強化に向けた「根拠集め」が始まったと見るべきです。
特定事業所集中減算の閾値引き下げ(例えば80%から70%へ)、または系列・業務提携先を含めた集中割合規制の拡大。こうした措置の下地が、今年度の調査で静かに積み上げられていきます。
テーマ22「災害時のケアマネジメント」(日本介護支援専門員協会)も見逃せません。能登半島地震、そして各地での豪雨災害。避難先でのケアプラン継続、福祉避難所での多職種連携、ライフラインが途絶えた地域での安否確認。これらをケアマネジャーが単独で担うことの限界は、すでに現場が証明しています。この調査が、今後の法定研修や業務基準に反映される可能性は高い。
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