フレイル予防にVRを使うなんて、正直ピンとこなかった話。大塚製薬の新戦略が「目の錯覚」で介護を変える理由とは?
どーも、セオドアアカデミーです。 ※写真はイメージです。
「VRでフレイル予防」と聞いて、「また、新規のテクノロジーの押し売りか!」と思った方、実はこの話、もっと深いんですね。
大塚製薬とジョリーグッドが2025年12月に発表した「フレイル予防支援VR」は、単なる最新技術の活用ではありませんでした。
人間の「視覚」が全身の衰えを引き起こすメカニズムに着目し、脳の予測誤差を利用して行動を変える。そんな緻密な戦略が隠されています。
このNOTEでは、この取り組みを「製薬会社の本気」「視覚とフレイルの意外な関係」「介護現場への実践的示唆」の3つの角度から読み解きます。読み終える頃には、「目が見えにくくなる」ことの本当の怖さと、それを防ぐための新しい選択肢が見えてくるはずです。

「薬を売らない製薬会社」の戦略:なぜ大塚製薬は今、VRなのか
2025年問題の核心は「気づかせること」
2025年、団塊の世代が全員75歳以上になりました。この変化が何を意味するか、数字で見てみましょう。
東京都健康長寿医療センター研究所の2025年9月の調査によれば、日本の65歳以上の高齢者のうち、8.7%がフレイル該当者、40.8%がプレフレイル(フレイル予備軍)という状態です。
つまり、高齢者の約半数が「要介護の入り口」に立っているわけです。
しかも厄介なのは、85歳以上になると30.3%がフレイルに該当するという急激な上昇カーブ。この数字が示すのは、「気づいたときには手遅れ」というパターンが多いという現実です。
従来の自治体の取り組みは、どうだったか。講座やパンフレットでの啓発活動が中心でした。でも、正直なところ、効果は限定的でした。理由は簡単で、「自分はまだ大丈夫」「年だから仕方ない」という心理が働くからです。心理学でいう「正常性バイアス」ですね。
ここに、大塚製薬の狙いがあります。
「入り口」を制する者が市場を制する
大塚製薬は、ポカリスエットやカロリーメイトで知られるニュートラシューティカルズ事業と、医薬品事業の両輪を持つ企業です。今回のVRコンテンツは、一見すると医薬品とも栄養製品とも無関係に見えます。月額3万円からという価格設定を見ても、大きな収益源にはならないでしょう。
じゃあ、なぜやるのか。
答えは「フロントエンド戦略」です。マーケティング用語でいう、顧客接点の最初の入り口を押さえる戦略ですね。
VRで「筋肉が落ちる恐怖」や「飲み込みにくさ」をリアルに体験した人は、その直後に何を求めるか。答えは明白です。「じゃあ、どうすればいいの?」という具体的な解決策です。
そこに、大塚製薬の高タンパク飲料やとろみ調整食品が登場する。体験直後の切実な気持ちに応える形で提示されるソリューションは、通常の広告の何倍も説得力があります。
ポートフォリオマネジメント室の大西弘二氏が「生活者に新たな気づきを与えることが行動変容を促すきっかけになる」と語っているのは、まさにこの構図を指しています。
月額3万円という「絶妙な値付け」
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