6,000億円の衝撃:厚労省が訪問看護に全国一斉調査、ホスピス型住宅の「囲い込みビジネス」が問われる理由:訪問看護ステーション全国調査の真相。ホスピス型住宅「医心館」「PDハウス」が直面する診療報酬の転換点とは?
医療保険6,000億円超の訪問看護に異変:厚労省が初の全国調査、上場企業も対象に含まれる構造的課題とは
どーも、セオドアアカデミーです。
訪問看護の世界で、いま大きな地殻変動が起きています。厚生労働省が2026年1月から、ホスピス型有料老人ホームや精神科訪問看護ステーションを対象に、健康保険法に基づく全国一斉調査を開始しするとの一部報道。
この動きは、年間6,000億円を超える医療保険適用の訪問看護費用が、果たして適切に使われているのかという根本的な問いから生まれたと想定されますま。
今回は、共同通信のスクープから始まったこの問題の事実関係を整理し、名指しされた事業者の現状、そして何が本質的な課題として浮かび上がっているのかを、介護・医療経営の現場視点から掘り下げます。
「高齢社会を支える仕組み」の光と影が、これまでと違う角度から見えてくるはずです。
共同通信スクープと厚労省の動き
2025年12月21日、共同通信が配信した一本のニュースが、介護・医療業界に大きな波紋を広げました。
内容は、厚生労働省が翌年1月から、ホスピス型有料老人ホームの入居者や精神障害者を対象にした訪問看護ステーションに対し、健康保険法に基づく全国一斉調査を実施するというものです。
この報道は、単なる観測記事ではありません。
厚生労働省の関係者取材に基づく事実報道であり、医療機関などに対する全国一斉調査としては、訪問看護分野で初めての試みとなります。
なぜ今、この調査なのか
背景には、2024年度の診療報酬改定があります。この改定で、厚労省は「同一建物居住者への訪問看護」に対する減算措置や、「精神科訪問看護の複数回訪問」の要件厳格化を決定しました。今回の調査は、これらの新ルールが実際に守られているかを確認し、さらに次の改定に向けたデータ収集を行うフェーズに入ったことを意味します。
医療保険適用の訪問看護利用者は約57万人。年間費用は6,000億円を超え、急増を続けています。国民皆保険制度を維持するためには、この膨張する医療費が適切に使われているかの検証が避けられない、というのが厚労省の立場です。
名指しされた企業の現状:ビジネスモデルと直面する課題
報道では、具体的な企業名が挙がっています。それぞれの現状を見ていきましょう。
株式会社アンビスホールディングス(医心館)
「医心館」の名前で知られるホスピス型住宅の最大手です。末期がん患者などが安心して最期の時間を過ごせる住まいとして、全国に展開しています。
このビジネスモデルの特徴は、住居と訪問看護を一体的に提供する点にあります。入居者に対して自社グループの訪問看護ステーションから集中的にケアを提供することで、医療・介護の質を高めつつ、高い収益性も実現してきました。
しかし、まさにこの「自社グループ内での完結型サービス」が、今回の調査のターゲットになっています。
企業URL: 株式会社アンビスホールディングス
株式会社サンウェルズ(PDハウス)
パーキンソン病専門の有料老人ホーム「PDハウス」を展開する企業です。専門性の高いケアを提供する施設として注目されてきましたが、現在は厳しい状況に直面しています。
2024年後半、不適切な診療報酬請求の疑いが浮上し、社内調査委員会を設置。決算発表の延期という異例の事態に陥りました。具体的には「訪問看護の回数水増し」や「実態を伴わない訪問記録」などが指摘されています。
難病患者への専門的ケアという理念と、収益追求のバランスが崩れたとき、何が起きるのか。PDハウスのケースは、業界全体への警鐘となっています。
企業URL: 株式会社サンウェルズ
精神科訪問看護の大手事業者
報道にある「ファーストナース」は、精神科特化の訪問看護ステーションを展開する大手事業者の一つと見られます。精神科訪問看護は、統合失調症や双極性障害などを抱える方々の在宅生活を支える重要なサービスです。
ただし、精神科訪問看護には「1日に複数回訪問しても高い報酬が算定できる」という仕組みがあり、これが一部で悪用されやすいという構造的な問題を抱えています。短時間の訪問を繰り返すことで、過大な報酬を得るケースが問題視されてきました。
参考:業界最大手としては株式会社N・フィールドなどが知られていますが、今回の調査は特定の運営手法をとる事業者全般への牽制を含んでいます。
何が課題なのか?「囲い込み」と制度の隙間
ここからが、この問題の本質です。単なる「不正請求」という言葉では捉えきれない、構造的な課題が横たわっています。
利益相反を生む「囲い込み」構造
訪問看護は本来、利用者が自由に選べるサービスです。ところが、一部のホスピス型住宅では、入居条件として自社グループの訪問看護契約が事実上必須となっているケースがあります。
ある現場の声です。「入居時の説明で、『当施設と提携している訪問看護ステーションをご利用いただくのが基本です』と言われました。他を選ぶという選択肢があることすら、知りませんでした」
施設側の論理も理解できます。医療依存度の高い利用者を受け入れるには、24時間対応できる訪問看護体制が不可欠。自社グループで一体的に提供するほうが、ケアの質も安定します。
しかし、ここに利益相反の構図が生まれます。ケアマネジャーも、主治医も、訪問看護師も、すべて同じグループ内の人間。チェック機能が働きにくくなり、「本当に必要なケアなのか」という問いが埋もれてしまうのです。
医療保険と介護保険の「裁定取引」
さらに複雑なのが、医療保険と介護保険の制度設計の違いです。
介護保険には「区分支給限度基準額」という上限があります。要介護度に応じて、1ヶ月に使えるサービス費用に天井が設けられているのです。
ところが、末期がんや難病(パーキンソン病など)、精神科の利用者は、介護保険ではなく「医療保険」の訪問看護が適用されます。そして、医療保険の訪問看護には、介護保険のような金額の上限が事実上ありません。
この制度の隙間を突くと、何が起きるでしょうか。
医師に「特別指示書」を出してもらい、医療保険適用に切り替える。そして、朝・昼・晩と1日3回訪問したことにする。これにより、1人あたり月額数十万円から100万円近い診療報酬が発生します。
厚生労働省の資料によれば、医療保険適用の訪問看護費用は年々増加しており、2023年度には6,000億円を突破しました。この急増の背景に、制度の隙間を狙った「最適化」があるのではないか、という疑念が広がっているのです。
ケアの質と収益性のジレンマ
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