ケアプランデータ連携8.8万件突破:「紙が減った」ではなく、介護現場の競争条件がもう変わった
「紙が減った」ではない。8万件を超えたその日から、介護現場の競争が始まっている
ケアプランデータ連携システムの利用件数が2026年6月1日現在で88,022件を突破した。数字が出るたびに「順調です」と言って終わる人がいる。だが今回は違う。全国1,741市区町村のうち、87.1%にあたる1,516自治体が介護情報基盤の利用開始日を確定させており、その大半が2027年に集中している。これは「システムが普及した話」ではなく、介護現場の情報インフラが構造ごと変わる前夜の数字だ。2027年に何が重なり、どう動けばいいのか。現場目線と制度設計の両方から、丁寧に辿ってみる。

88,022件の「本当の読み方」
ケアプランデータ連携システムの利用状況:国保中央会が提供するデータをもとに、独立行政法人福祉医療機構(WAM)が掲載している都道府県別の利用状況を見ると、東京都7,524件、大阪府7,113件、神奈川県5,519件、愛知県4,635件。大都市圏が上位を占める。
ただ、この数字をそのまま「大都市が進んでいる」と読むのは少し雑だ。
東海・近畿ブロック(26,507件)と関東ブロック(24,484件)だけで全体の約58%を占めるのは、人口規模よりも「ネットワーク効果」の影響が大きい。
居宅介護支援、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与、訪問看護。これらが密集している地域ほど、一つひとつの連携先が増えるため、データで繋がることの実益が早く出やすい。つまり、「使っている事業所が多い地域」ほど、さらに「使わないと損な地域」になっていく。
対照的に、島根県311件、高知県570件、鳥取県687件といった地域は、高齢化率が全国トップクラスでありながら件数が低い。ここには、移動コストの問題よりも、「顔の見える関係」がすでに成立している地域特性があると見るべきだ。隣の事業所の担当者と毎週顔を合わせていれば、わざわざシステムを介する必要を感じない。そのアナログな信頼ネットワークが厚いほど、デジタルへの移行は遅れる。それは「遅れ」というより「必要性の実感の差」だ。
ただ、2027年以降はその話が変わってくる。
WAM「ケアプランデータ連携システム 事業所登録件数(2026年6月1日現在)」

自治体側の「本番スケジュール」を読む
今回、全国1,741市区町村の介護情報基盤対応状況一覧を集計したところ、次のことが明らかになった。
利用開始日が確定している自治体:1,516件(87.1%)
日程調整中:77件(4.4%)
未定:146件(8.4%)
既に利用可能:2件(0.1%)
これは相当に大きい数字だ。今の現場感覚とは、かなりズレている人が多いと思う。
事業者側から見れば、ケアプランデータ連携システムは「うちのエリアでもちょっとずつ広がってきたな」という感覚だろう。だが自治体側は、すでに87%が「いつ動かすか」を決めている段階にある。土台が敷かれる側は、ゆっくり準備が終わっているのに、乗る側がまだ「様子を見ている」という構図だ。
年別で見ると、2026年中に先行稼働する自治体は82件にとどまるが、2027年が一気に1,233件、2028年が201件と続く。さらに月別・四半期別で見ると、2027年の山はなだらかではなく、第1四半期(1〜3月)に328件、第3四半期(7〜9月)に315件、第4四半期(10〜12月)に329件と、年間を通じて高水準で続く構造になっている。
「2027年春に山が来る」という言い方はよく耳にするが、実際は「2027年を通じて、ほぼ毎月、何百という自治体が稼働していく」という流れが正確な見方だ。特定の月だけ対応すれば終わりではない。
一方で、都道府県別に「未定」が多い地域を見ると、富山県47%、石川県26%、神奈川県21%、兵庫県20%、宮城県20%といった地域が浮かぶ。
これらは「遅れている」というより、人口規模が大きく、広域連合や一部事務組合が絡み、既存のシステムベンダーとの調整が複雑なケースが多い。逆に言えば、茨城県・群馬県・岐阜県・香川県・大分県は管轄する全自治体で利用開始日が確定しており、移行の準備が完結している。
厚生労働省「介護情報基盤 各市町村の対応状況(2026年6月4日時点)」
今回概要まとめ図
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