黒字業界で、なぜ4割が赤字なのか:デイサービス倒産「上半期過去最多」が示す、地域介護インフラの静かな崩壊
なぜ4割が赤字なのか:デイサービス倒産「上半期過去最多」の構造
東京商工リサーチ調べによると、2026年1〜5月、デイサービスの倒産件数が27件に達し、6月分を待たずに上半期の過去最多を更新しました。数字だけ見ると「倒産が増えた」という話ですが、このNOTEではその裏側にある構造を、厚生労働省のオープンデータ(全国2万4千件超の通所介護事業所データ)と制度改正の動向を重ねながら掘り下げています。なぜ零細デイサービスだけがここまで追い詰められているのか。他方、訪問介護の倒産が減ったのは本当に「良くなった」からなのか。そして、今後も地域の昼間の介護インフラが守られていくのか。現場の手触りと、制度・統計の両面から辿っていきます。

27件という数字の重さ
東京商工リサーチが2026年6月12日に公表したデータによると、今年1月から5月のデイサービス事業者の倒産は27件に達しました。前年同期の16件から68.7%増、しかも6月分を計上する前の段階で、すでに上半期(1〜6月)の過去最多記録(25件)を更新しています。
原因を見ると、売上不振が18件、赤字累積など「既往のシワ寄せ」が5件で、業績悪化に起因するケースが全体の8割超を占めています。
さらに職員数別では、10人未満の零細事業者が25件と9割超。
大手が倒れたわけではありません。各地域の片隅で細々と運営してきた、小さなデイサービスがひとつ、またひとつと限界を迎えている。
それが今回のデータの中身です。
一方で、これまで倒産件数の増加が続いていた訪問介護については、1〜5月の倒産が31件と、前年同期比18.4%減、5年ぶりに減少しました。
この対比をどう読むかは、後で触れます。
デイサービスという事業モデルの重さ
なぜデイサービスがこれほど追い詰められているのか。その前に、デイサービスという事業がどれほどコスト構造の重い仕事なのかを整理しておく必要があります。
訪問介護は、ヘルパーが利用者の自宅へ出向くシンプルなモデルです。対してデイサービスは、利用者を迎えに行き(送迎)、施設内で入浴・食事・機能訓練・レクリエーションを提供し、夕方には送り届ける。このプロセスに、送迎車両と燃料費、入浴設備と水道光熱費、厨房設備と食材費、職員の人件費、施設の家賃と修繕費がすべて乗っかります。
固定費が重く、売上は利用者の稼働率に依存する。少し稼働率が落ちただけで、赤字に転落しやすい構造です。
厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査によると、通所介護の収支差率は令和6年度決算で6.2%。数字だけ見ると黒字です。ところが同じ資料の中に、見落とされがちな数字があります。令和6年度決算における赤字事業所の割合が、通所介護で37.4%、地域密着型通所介護で37.2%。平均は黒字でも、4割近い事業所が赤字圏にある。これが現実の分布です。
平均値は、上位の事業所が引き上げている数字です。加算をフル取得し、送迎ルートを最適化し、ICTで事務を効率化した体力ある事業所がスコアを押し上げる一方、そうした体制を持てない零細事業者は赤字で沈む。「6.2%黒字の業界」ではなく、「勝てる事業所は黒字、弱い事業所は赤字という二極化業界」。その認識がないと、今起きていることの意味が掴めません。
2万4千事業所という密度
厚生労働省の介護サービス情報公表システムが提供する2025年12月末時点のオープンデータ(通所介護)を集計すると、全国の通所介護事業所は24,758件に上ります。地域密着型通所介護は含まない「通所介護」単体の数字ですから、一般に「デイサービス」と呼ばれる市場全体はさらに大きい。
都道府県別では、大阪府1,563件、東京都1,546件、福岡県1,406件、愛知県1,387件、埼玉県1,235件が上位を占めています。
兵庫県は883件。人口規模をある程度反映した分布ですが、それ以上に目を引くのは、この数字が地域ごとにどれほど競合密度を生んでいるかです。
デイサービスは「通ってきてもらう」サービスです。送迎可能な範囲が商圏になるため、商圏は狭い。その狭い商圏の中で、複数の事業所が利用者とケアマネジャーの紹介をめぐって競合しています。ケアマネジャーからの新規紹介が細ると、稼働率は一気に落ちる。もともと利益率が数パーセントの世界ですから、そこから赤字転落までの距離は短い。
この2万4千件超という密度が、競争の地盤となっています。
今回概要まとめ図
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