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スカイツリーの地下には

スカイツリーの本体は地下部分にある。地上六百三十四メートルのツリーの地下には、樹の高さと同じ深さの入り組んだ太い根がある。東京の地面に打ち込まれた深い根は複雑に枝分かれしており、地中にはその根に抱かれるようなかたちで一匹の巨大な蝉の幼虫がいる。幼虫は今はまだ、大型トラックサイズだけれど、将来的にはもっともっと大きくなるだろう。湿って暗い土の中で、幼虫はツリーの養分を日夜吸っている。
スカイツリーはその名の通り空に向かって聳え立つ一本の樹だ。通常の樹は、たくさんの葉を茂らせ、陽の光を浴びて栄養を作り出す。スカイツリーには葉はない。光合成などとっくにやめた進化した種なのだ。それではどうやって栄養を作り出すかというと、他の生物から栄養を奪い取るのである。そう、ハエトリグサ等の食虫植物と同じように。
蝿を呼ぶ、蠱惑的な香りの蜜の代わりに、眺望とお土産物を用意してスカイツリーは待っている。ソラマチ限定のパンダバウムや、ソラカラちゃん等可愛らしいマスコットキャラはチョウチンアンコウの擬似餌に等しい。
楽しげな雰囲気に惹きつけられて、のこのこと訪れた観光客はあろうことか入場料まで払って中に入るのだ。自分が養分にされることもしらないで。
スカイツリーは狡猾なので、さすがに入場者全員を捕食はしていない。そんなことしたら目的を果たす前に伐採されてしまうから。ただ、年間の入場者数と、無事スカイツリーから出た人の数は、ずれているはずだ。トイレに向かう客や、買い物に疲れて、人気のないベンチで一息つく客、人が一人になる一瞬の隙を狙って、スカイツリーは人間を体内に取り込んでしまう。神隠しのように。
展望台に登って、
うわー、遠くまでよく見えるね! もしかするとうちも見えちゃうかなー
とか、
さすが東京一の高さだなー
とか、
パパ、違うよ、タワーとしては世界一なんだよー
とか呑気なことを言ってる場合ではない。展望台で目を細めるとき、あなたはすでに捕食者の体内にいる。

スカイツリーはこうして無辜な市民から栄養を取り、せっせと養分を蝉の幼虫に送り続けている。スカイツリーは蝉のために存在し、蝉もまた、スカイツリーに操られている。そんな共生が成立するのは、おそらく両者の目的が同じだから。
スカイツリーと蝉は、おそらく東京を変えようとしている。東京タワーから東京の電波塔という地位ばかりか、ランドマークとしての立ち位置を奪ったスカイツリーは、それだけでは満足していない。大都会に根ざす食人植物、スカイツリーは本能的に欲深い。何もかも壊して、スカイツリーだけの東京を作り上げようと目論んでいるのかもしれない。
蝉というのは通常、長い年月を地中で過ごす。日本の蝉は通常七年だが、世界にはもっと長い期間地中に暮らす蝉がいる。スカイツリーができてから十四年。蝉の幼虫はまだ成長途中だ。
あと、何年、何十年後かに幼虫は地上に出る。夏の夜、巨大な蝉の幼虫は明かりの消えたスカイツリーに登り、月明かりの元で羽化をするだろう。一晩かけ、ふにゃりとした真っ白な身体をかため、茶色くなった蝉が飛び立つ朝。朝日に照らされた首都、東京に、巨大な蝉の影が落ちたとき。
そのとき東京は、どうなってしまうのだろう。


……おはようございます! ついにミロクンミンギア、ご乱心? と思った方々!
安心して? 乱心なんて最初からしてるから。むしろそっちが自然体だわ。
スカイツリーって、邪悪な感じがしない? スカイツリーが建った当時、私はよく知り合いにそう言っていた。そして誰からも共感されなかった。
スカイツリーは悪の巣窟、という感じがしてかっこいい。ショッカーの本部とか、東京に作るとしたらあんな感じかもね。特に夜、紫や赤にライトアップしてるとそう思う。あそこには邪悪な何かが潜んでいる。
ちなみにまだ登ったことはない。養分にされたら困るから。けして、人混みが嫌いだからとか、予約するのが面倒なわけじゃないのよ。
なんでいきなりこんなことを書き出したかというと、しりとりエッセイのお題が、す、だったの。

いつも面白いエッセイを書かれているはにわ寺様からバトンをいただききました。私の憧れの方。いつもエネルギーに満ち溢れてて、眩しいの。はにわ寺様の記事のタイトルが、す、で終わってるので、邪悪の塔、スカイツリーについて書くことができた。

三人まで誰かに繋げるとのことだけど、誰にお願いしたものかなって思った。エッセイを書いていただきたい方はたくさんいるのだけれど、根っからのぼっちマインド故に距離の詰め方がわからないの。

はにわ寺様、どうもありがとうございます!
書けて楽しかった!




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