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自分の落としたスマホより先に感謝を伝えた女子高生

先日、車を運転していたときのことだ。

信号のない横断歩道に、自転車を押した女子高生が立っていた。 僕は一時停止し、彼女が渡るのを待った。

ところが、渡り始めた彼女は途中で足を止め、来た道を引き返した。

「どうしたんだろう。忘れ物でもしたのかな」

そう思って見ていると、道路の真ん中にスマホが落ちていた。 どうやら、渡る途中で落としてしまったらしい。

もし僕なら、かなり焦ると思う。 画面は割れていないか、ちゃんと動くのか。 頭の中は、きっとスマホのことでいっぱいになる。

気の毒だなと思いながら見ていると、彼女はスマホを拾い上げた。

そして、そのまま立ち去るのかと思った次の瞬間だった。

彼女はこちらに向き直ると、いったん足を止め、深くお辞儀をした。 待っていた僕への感謝だったのだろう。

その姿に、僕は少し心を動かされた。

スマホを道路に落とした直後なら、自分のことで精いっぱいになっても不思議ではない。 僕自身、「壊れていないだろうか」という焦りが先に立ち、周りを見る余裕などなくなっていたかもしれない。

でも、彼女は違った。

自分が困っているときでさえ、待っている相手の存在を忘れなかった。 ほんの数秒の出来事だったが、そのお辞儀には彼女の人柄が表れているように感じた。

僕は彼女の名前を知らない。 もう二度と会うこともないかもしれない。

それでも、あの日の小さなお辞儀は、今も心に残っている。