SF読みの舌がん生活 放射線治療の開始と入院生活中に読んだ本(入院編その1)
前回(準備編)はこちらから。
リンパ節転移後の追加治療(放射線と抗がん剤の併用治療)の様子を、入院中に読んだ本とともに紹介します。
入院生活スタート
放射線治療と抗がん剤(シスプラチン)の治療が2ヶ月の計画で始まリました。
入院初日
前回作成した網状のお面を付け、放射線科でリハーサルをしたり、口の中の掃除を口腔外科でしました。
入院二日目
本格的に治療がスタートしました。朝から放射線科に呼び出され、朝食とバッティングしたりしたものの治療自体は5分程度で終わり、痛いこともなく治療後に朝食を食べる元気もありました。
抗がん剤の点滴も始まり、担当のDrでは点滴が入らないハプニングはあったものの、看護師さんに交代して無事、生理食塩水や吐き気止めの投与も始まりました。点滴は3日間行うスケジュールで進んでいきます。
吐き気より眠気がひどい
抗がん剤は吐き気がひどい印象でしたが、私の場合は吐き気止めの点滴をされている効果なのか出なかったです。ただ眠気が酷かったです。
入院3日目でした。吐き気を抑える薬の副作用か、翌朝は少し座っているだけで気づくと「あ、寝てた」となるくらいに眠気が強く出ました。また立ちくらみが出て、シャワー浴後に動けなくなり、病室まで車椅子で行くくらいだるさはありました。しかし翌日にはケロッと回復。結局、抗がん剤の副作用なのか、吐き気止めの副作用だったのかよく分からずでした。
自分でやらないといけないこと
意外だったのが「治療中に色々と自分でしなければならないことがある」ということです。私の場合は1、傷の保湿、2、うがい、3、尿測、4、食事量と体重の記録でした。
1、傷の保湿
放射線を当てると首のリンパを切除した傷跡が突っ張っきました。なるべく保湿した方が、後々が楽になると聞いて、照射直前以外はこまめに保湿するように気をつけています。
2、うがい
放射線の副作用で口が乾燥します。また乾燥すると口内炎や炎症も出やすくなります。毎回丁寧に歯磨きをして、うがい薬で保湿するようになりました。うがい薬は独特な味で慣れませんが、サボると口の中が荒れて食べづらくなると聞いているので頑張ってます。
3、尿測
抗がん剤をなるべく早く体から薬を出すため、1〜1.5リットルくらいの生理食塩水を3日間、何時間もかけて点滴されます。体内に入った水分がきちんと出ているかトイレの度に紙コップに測って記録が必要で、最初は戸惑いました。
4、食事量と体重の記録
食事量や毎朝体重を測って記録する必要があります。他に体温や排便回数なども記録するように言われました。
入院中の読書記録
一部、感想にネタバレを含むのでご注意ください。
伴名練『全てのアイドルが老いない世界』(小説すばる Digital Book)
SFです。短命のイメージがあるアイドルに、相手の精気を奪う長命種の要素を繋げて魅せるアイディアが面白いと感じました。時代を超えて共に生きてきた二人が國府田恵と愛星理咲が解散し、主人公の理沙がソロ活動に入っていくという筋書きで、アイドルをモチーフにしつつも、時代が急に飛んで過去の話を出すあたりなどが大変面白く感じた部分です。
伴名練は他の作品でも永続性を保っていた関係がずれていく姿を描くのがうまいなと思っていたのですが、この作品でも上手く感情を描いていると感じました。新作ホラーが7月に出る(「学校の怪談じゃ、ものたりない? 君に綴る5つの恐怖」角川文庫)ようなので楽しみです。
田中啓文『警視庁地下割烹 取調室のカツ丼』(角川文庫)
警視庁の地下には謎の料理店「警視兆」があり、不幸に配属になった花菱朝彦は調理師免許を取得し、刑事兼料理人として事件解決を図る脱力系(笑)警察小説、シリーズ2作目の短編集です。
今回は前作より料理が美味しそうで、美味しそうで、特にカツ丼の種類について語り合うシーンなどはよだれが出そうになるほどでした。そしてそのカツ丼専門店のネーミングセンスがまた素晴らしい(笑)
2作目「張り込みにはアンパンを」は「タンパンジー」(このネーミングセンスが好き)という絵本作家の自宅で起きた事件の解決に花菱が専属料理人として潜入捜査をするもので、これまた今の朝ドラを意識しているのかしていないのか、なんとも面白い仕上がりでした。
だんだんとキャラクターもツボになってきたので、もう一作くらい出して欲しいなと期待しているシリーズです。
今村翔吾『茜歌 上』(ハルキ文庫)
珍しく歴史時代ものにチャレンジしました。今村さんの短編は以前に読んだことがあり、時代物でも読みやすいなという印象でした。
平家物語の語りから始まる本作は、四男の知盛を主人公に置いて平家が滅亡していくまでの過程を描いています。
上巻は時間軸が行ったり来たりしたし、さっき死んだと言われた人のエピソードが再度入ったりするので作風に読み慣れるまで違和感はありましたが、何度も描かれることで全体像が把握しやすい一面もあると思いました。
個人的には清盛が将来謀反を起こすであろう頼朝を見逃したのか、知盛が父の深い考えを察したところが好きでした。(大胆な発想だと思いましたが)
下巻を今読んでいるのですが、この作品は平家物語りを伝承するというメタ的構造になっているところがSF読みとしても面白く感じるところでした。
下巻を読んだらまた感想を載せようと思います。
人間六度『烙印の名はヒト』(早川書房)
SFです。前半は<介護肢>としてケアの形の犯罪を犯したアンドロイド型の「ウエイツ」のラブが一人の人間になっていく過程が描かれ、ウエイツたちの人権の獲得の象徴とされ、巻き込まれていきながら、自分の中にある人間らしさについて自問自答しつつ、友人のマーシーとのすれ違いと和解が描かれ、後半は宇宙に飛び出して人工知能のケアをする話になる壮大なスケールのお話でした。
正直、色々な勢力や思惑が入り乱れ一読で全容を把握しきれなかった部分があることと、序盤から中盤は読み進めるのに苦労しました。サイバーパンク系の話は好きなのですが、『ニューロマンサー』も読み進めるのに苦労したのでそれと同じ感覚でした。
あとは後半のラブが「蔑ろにする」と相手に対していう台詞がどうしても引っ掛ってしまって、消化するのに時間がかかりました。私の中にある「ケア」のイメージと著者が描く「ケア」がだいぶ違うからだと思いますし、小説としてエンターテイメントとして読めば、意味は理解できるのでそれでもいいのかもしれませんが、ケアに従事していた経験もあるため、単純にエンタメとして読めなかったんですよね。
そもそもケアと対照的な言葉を出すことである種のケアの本質を見せようとしたのだろうか……と真面目に考えてみたりもしましたが、ちょっとうまく言語化できていないです。(すみません)
バリバリのサイバーパンクがお好きな方はぜひ一読してみてください。
というわけで、5月に読んだ本で一番よかったものは田中啓文『警視庁地下割烹 取調室のカツ丼』(角川文庫)です。軽く読めて楽しめ、カツ丼のレパートリーが本当に美味しそうで、これを機にご飯もの小説が読みたくなりました。
お読みいただきありがとうございました。
6月はずーっと入院生活なので治療の様子や読書感想をまた記事にしたいと思います。
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