「ステラーコード」体験版 -伝奇とSFとミステリーの話-
そう長い体験版でも無いため、わざわざ感想を書く意味もあるのかと言ったところですが…
楽しみで待ちきれないこの気持ちを書き殴ることで発散させようといった次第です。
ついでに、体験版時点での感想を製品版プレイ後に読み返して楽しもうという目論見もあります。
「ステラーコード」とは、Steamにて個人的イチ押し伝奇ボーイミーツガール作品「イハナシの魔女」を販売している同人サークル「Fragaria」様の新作です。
話の過程で前作「イハナシの魔女」や更にその前作「カガミハラ/ジャスティス」にもかる~く触れます。そこまで大したネタバレにはならないと思いますが、ご注意ください。
あと一応「シュタゲ」「ひぐらし」「レイジングループ」「グノーシア」などの内容にもかる~く触れています。
本編について
あらすじ
はじめに
「ステラーコード」は累計販売本数30000本を突破した同人ビジュアルノベル「イハナシの魔女」の制作チームが送る新時代のSFミステリーです。
概要
あなたは”とんでもない謎”を解くことになります。
本作はミステリービジュアルノベルですが、一般的なミステリーとは異なり、犯人当てやトリックの推理は行いません。
解かなければならない謎は宇宙と理論物理に基づく神秘です。
基礎知識がなくても大丈夫です。
謎を解く鍵はストーリーを読み進めることで提供されます。
立ち現れる謎を登場人物と共に問いていくだけでよいのです。
本作はビジュアルノベルです。
ほとんどのパートはストーリーを追うことになります。
プレイヤー自身が謎を解かなければならない場面もあります。
与えられた情報を元に答えを導き出しましょう。
なお、本作におけるインタラクティブな謎解きは、あくまでストーリーをより楽しくするためのギミックという位置付けです。
ストーリーよりも謎解きパズルを重視する方には適していないかもしれません。
ストーリー
佐藤大地は大学で人工衛星の研究をする四年生。
彼には最近新しい妹ができた。義妹だ。
「瞳」はアメリカ人で、ノーベル賞確実と言われる研究成果の持ち主だった。
ひょんなことから日本にやってきた瞳にバカにされてばかりの佐藤。
不満を募らせていたそんなある日、彼は大学の裏山で円筒状物体を見つける。
それは金属でできていた。
そして、暗号を出力していた。
誰が何のために製造した物体なのか?
暗号の意味は何なのか?
興味本位で調査を続ける佐藤と瞳。
そんな彼らのもとに一通のSMSが舞い込んでくる。
『これは警告だ。あなたがボトルを持っているのなら、それは誰にも見せてはならない』
ボトルを付け狙う組織の存在。
身の危険が迫る中、二人は謎を解くことを選択する。
そして、────。
…だそうです。大体書くべきことはここに書いてあるので、これに沿って話してみようと思います。
書いてあるように、この作品のジャンルは「SFミステリー」です。実際にプレイしていてもそれは伝わります。ジャンル詐欺ってことは無いでしょう。
「イハナシの魔女はもっとプレイヤー多くてもよくないか?」とかいう些末な考えはさておき、このジャンルにそこまで詳しいわけでは無いのですが、プレイしていて非常によく似た感覚の面白さを受ける有名作品が存在します。
「STEINS;GATE」ですね。おそらく自分だけでは無い考えだと思いますが。あまり軽率に「あの作品に似ている」とか言うのも微妙なところですが、どういう性質の面白さを持つジャンルなのかという例えとしてわかりやすいため、引用させていただきました。
また、正確に言うと近しいのは「シュタゲの序盤」です。
既プレイ、もといアニメ視聴者の方はご存じかと思いますが、あの作品は途中で雰囲気や話の方向性が一変し、急展開が始まります。
それが来るよりも手前の部分のことですね。
脱落者も割と多い時期の話なのですが、個人的にはとても好みな雰囲気でもある部分です。
さて、「ミステリー」と一言で言っても、ADVにおける「ミステリー」とはかなり大きく2つに分けられると思います。
「読者が実際に推理して進む作品」と、「読者が勝手に推理しながら読む作品」ですね。
わかりやすい例を挙げれば、前者は「逆転裁判」や「ダンガンロンパ」シリーズ。後者は「レイジングループ」が近いと思います。一番有名かつ明確なのは「ひぐらし」ですかね?「パラノマサイト」も基本的にはこっちなのですが、結構前者の要素もハイブリッドしています。
また珍しい例だと、「グノーシア」は前者の要素が強いゲーム部分と後者の要素が強いノベル部分が明確に分離していました。
要するに、「推理ゲームとしての明確なゲーム性を持つか否か」ですね。自分はどちらも好きなのですが、割とこの2つは面白さの方向性が変わってくると思います。
なぜなら前者は「あくまでプレイヤーが解かなければいけない問題」としての事件であり、後者は「別にプレイヤーが解けなくてもいい問題」としての事件になるからです。
ナルホドくんや苗木くんは我々が操作しますが、圭一やふさゆきさんはたまに選択肢を選ぶ程度のことはあるかもしれませんが、基本的には勝手に話を進めていきます。
まあ前者も究極的には選択肢を選んでいるだけと言えなくもないですが、明らかに頻度やゲーム性が違いますよね。
そしてこのゲームですが、「パラノマサイト」などに近い、前者と後者のハイブリッド型の作品になると思います。
先ほど「似ている」と言った「シュタゲ」ですが、全体としては別にミステリーという雰囲気では無いものの、序盤の面白さの質は後者のミステリーのそれに近かったです。Dメールの謎を追う形だったからですね。
引用文にある通り、ほとんどのパートはストーリーを追うことになりますが、プレイヤー自身が謎を解かないといけない場面もあります。基本的には後者の感覚で読めるのですが、謎解きパートに入ると頻繁に、少し頭を使って自力での謎解きが挟まる形でした。
この謎解きのゲーム性や難易度に関してはどうやら体験版のフィードバックを受けて大幅に改変されそうなのでなんとも言えないところですが、自分のプレイした初期版では基本的にはそこまで難しくは無いものの、選択肢となる候補が多すぎるかなと感じたシーンや、答えはわかっているのにどれを選べばいいのかわからないという逆転裁判系推理作品あるあるなシーンもありました。
特に後者のシーンは、総当たりで時間をかけて大量の選択肢から答えを探し出す羽目になり、しかも見つけ出した後も「それが答えになってるのはおかしくない?」という疑問符が浮かぶ、「作者の脳内当て」のようになってしまっているシーンだと感じました。わからなければヒントをもらえるのですがヒントが答えに繋がらないんですよね。
流石にここは突っ込まれたのか、既に体験版にアプデが入ってかなりマシになったようです。最終的には答えを貰えるような形になっているようなので、恐らくそこまで問題は無いと思われます。
もともとごく一部のそれらのシーンを除けば難易度はちょうどよかったと思うので。
ここまで主に推理ゲーム部分の話をしましたが、「逆転裁判」や「ダンガンロンパ」、小規模なところでいえば「Staffer Case」などの作品ほど、謎解きに力を入れた推理ゲームではありません。あくまでもノベルパートを引き立てるフレーバーとしての趣が強いと思います。必然、そちらが本体に近いゲームでした。
つまり、「SFミステリー」としてどうなんだ、という話なのですが。
ここで少し話は変わりますが、個人的に、「ひぐらし」や「レイジングループ」などのおどろおどろしい「伝奇」と、この作品や「シュタゲ」のような宇宙のロマン溢れる「SF」は、ぱっと見遠いようで、そう離れていないジャンルだと感じています。
特に、「ミステリー」を噛ませるとその読み味はかなり近いものになると思いました。なんなら「伝奇SF」という言葉も存在するようですが…(あまり詳しくない)
割と定義があやふやしている気もしますが、ADVにおける「伝奇」とは概ね、この意味を持った言葉ではないでしょうか。さらに言うと、「舞台は現代」だったり、「地域に根差した伝承」だったりの要素も含むことが多い印象です。
まあ、「現代」と言っても「ひぐらし」のように昭和後期くらいまでは現代カウントされているような気がしますが…
つまるところ、「現実と非現実の間のドキドキ感」が伝奇の魅力のメインではないかな、と個人的に考えています。そこにミステリー要素を加えることで、「どこまでが現実でどこからが非現実なのかが謎となる事件」といったわくわくするものが出来上がるのではないでしょうか。
この「現実と非現実の間のドキドキ感」、これはSF作品でも味わえる要素だと思っています。シュタゲでDメールの謎を追いかけているとき、現代社会の秋葉原に居ながらなにかとんでもないことが起きているという実感。日常に潜む非日常。伝奇要素はホラー要素とも繋がりが強いですが、SFにも「コズミックホラー」という言葉があります。未知のものは怖くてドキドキするんですよね。闇の悪魔的な。
「グノーシア」もSFですが、異星体グノースがなかなか優秀なフレーバーとして機能していたと思います。フレーバーなのに。
「ステラーコード」は、このSFのドキドキ感をうまく使えている作品だと思いました。というか、そこが書きたいものなのでは無いでしょうか。体験版終盤の流れはとても盛り上げ上手でした。
「そんなわけがない」
「だがデータが明らかに証明している」
「何を?→宇宙人の存在を」
まさに、現実が非現実に侵略されるドキドキ感だと思います。
またこういう話においては、恐怖が非現実的恐怖の一辺倒とは限らないことも肝心です。なんなら、現実的な恐怖の方がメインにすらなり得ます。「シュタゲ」はまさに、現実的な恐怖と非現実的な恐怖の両方をうまく使った作品でしたね。
このゲームの体験版においてのドキドキは基本的には非現実的な恐怖でしたが、明らかに現実側の恐怖となり得る存在の示唆も行われていました。
SFミステリー以外の部分に目を向けると、構成としては「ステラーコード」も、前作や前々作のように(少なくともぱっと見は)平凡な男子と、だいぶ変わった人格をしているメインヒロインの女子が主役となるようです。また前作のアカリちゃんを彷彿とさせるキャラと見た目の子も居ますね。
また負けヒロインが生まれてしまうのでしょうか。そういえば「カガミハラ/ジャスティス」にもそんなポジションっぽい人が居たし、性癖なのでしょうか。
今後の予想
前作がジャンルとしては「恋愛アドベンチャー」を名乗っていたのに対して今回は「SFミステリー」です。実際、「イハナシの魔女」に比べると恋愛的な雰囲気は全く感じません。
しかし、「サスペンスミステリー」を名乗っていた「カガミハラ/ジャスティス」にも「イハナシの魔女」のように話のメインにはならないものの、そういう要素は含まれていました。根底にはやはりボーイミーツガールがある気がします。でも義妹なんだよな…
義妹ちゃんは前作のリルゥの立場であり、シュタゲで言えばかなり牧瀬紅莉栖に近い立場ですので、かなりヒロイン属性は高そうなのですが、ここからどう転ぶかは製品版を楽しみに待つしかありません。
話の規模はかなり大きくなりそうですが、そこまでメインキャラの数は多くは無さそうです。主人公のキャラは現状割とぼんやりとした、強烈なヒロインに流されて動く感じがします。前作か前々作かで言うとどちらかと言えば前々作に近い感じでしょうか。しかしヒロインの属性としては前作の方が近そうです。
個人的に、イハナシの魔女のボーイミーツガール描写はとても好みだったので、こっちもいい感じにあると嬉しいですね。あるとしてもあっちほど話のメインになることは無いと思いますが。
推理ゲーム部分以外のミステリーとしてのこの先を予想すると、まあまず宇宙人は存在するのでしょう。体験版時点で明らかに存在してますし。そして恐らくはボトル?を探していた一派に目をつけられて襲われるような展開はあると思うのですが…これだと別にミステリーにならないんですよね。話の主軸が意外と予想できません。
体験版時点で既に宇宙人との接触に成功してしまいましたが、だからって何ができるのでしょうか。そして逆に何をできてしまうのでしょうか。
前作では究極的には主人公とヒロインが幸せに過ごせればそれでよくて、それを阻まれる物語だったのでそこが話の中心でありそのためにはなんでも問題になり得たわけですが、こっちはヒロインが人類の未来を担うような天才少女なわけですから宇宙人との出会いががっつり世界を変え得ますよね。
お前のセカイ系で世界がやばい。
とんでもない謎を解くと言ってるのだから素直に考えればまあ謎解きが始まるのでしょうが…「宇宙人」が案外単なる宇宙人ではなく、その正体に迫るような形になるのかもしれませんね。
単なる宇宙人というのも変な話ですが。
ボリューム感も気になるところですが、やはり「イハナシの魔女」と同じく10時間前後でしょうか?「カガミハラ/ジャスティス」はこの比ではなく、普通に30時間以上はかかりそうな量のシナリオでしたが、流石にそこまで話を膨らませるのは難しい気がします。個人的には面白ければいくら膨らんでもバッチこいですが。
そういえば、「イハナシの魔女」にはキャラクターボイスが付いていましたが今回は無いのでしょうか。
個人的にはリルゥのCVがかなり没入感に寄与してくれていたと思ったので、今回もできれば欲しいところですが…
インディーズのADVだと売れたら後からボイスが付くみたいなのも割と見るので、そのパターンかもしれません。
総評
かなり好みのジャンルで、現状の出来もよさげなので、とても期待しています。
発売されて、クリアした後にこの記事を振り返って楽しめるような作品になっていると嬉しいです。

