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激浅海外インディーADV語り【飢えた子羊・感想】

最近の海外インディーADVについてのちょっとした感想とついでに飢えた子羊のED周りの自分の感情と解釈を吐き出す感じです。
途中からネタバレゾーンになるので、それ以降は既プレイの方のみ御覧ください。
本当はStaffer CaseとかYog-Sothoth's Yardとか海外のインディーゲーム色々まとめて語るつもりが、1作品だけで伸びすぎた…

なんか海外のインディーADV強いな…
そう思ったのが去年のことでした。遅い

そもそもインディーという縛り無く、ビジュアルノベルやノベルゲーム、テキストアドベンチャーのようなタイプではないADVなら元々超有名な傑作はいくつもあります。
筆頭を挙げるなら「デトロイト ビカム ヒューマン」とか、「ライフイズストレンジ」とか。所謂3Dアドベンチャーですね。
自分は所謂洋ゲーがそこまで好みでは無いというか、言い方を変えるとツボにはまらない事が多いのですが、それはそれとして出来や面白さを認めざるを得ない作品はいくつもあります。

しかしやはり、ゲームとして間違いなく面白くても絵柄やテキストが日本人向けのそれでは無いと感じることは多いです。それはそれで新鮮な面白さもありますが。

そして近年、自分のツボにハマるインディー規模のテキストアドベンチャーがちょくちょく出るようになりました。
この手のゲームは得てして、海外ゲーではあるのですが洋ゲーでは無いことが多いです。アジア圏、特に韓国と中国が強いと感じます。
ソシャゲはあまりやらないので詳しくないのですが、そちらでも韓国や中国のゲームが日本人の観測範囲で幅を利かせるようになったのは流石に知っています。
「原神」とか「スターレイル」とか「ブルーアーカイブ」とか。全部プレイはしていませんが。二次創作イラストでキャラの見た目と名前は知ってる!ってやつですね。

この辺のゲームばっか二次創作流れてきていい加減見飽きたな…とか勝手なことを思っていたのですが、それはそれとしてそのような結果が出ているということはこの辺りの国は日本人のオタクにも刺さるようなゲームを高クオリティで生み出す能力を備えるようになったのは確かなのでしょう。ストーリーが良いよ!とかよく評判も聞きます。

実際それなり以上には良いのでしょうが個人的にあまりソシャゲのシナリオ評価を信用していないのと今更新しいソシャゲに時間を費やしてストーリー読むために頑張る気力が無いため実際内容は殆ど知りません。設定とかはなんとなく知っていますが。


話が逸れますがソシャゲのシナリオ評を信用していないのは単純にプレイヤー層がテキストアドベンチャーに比べてあまりにも広すぎること、それに加えてキャラゲーとしての趣が流石にあまりにも強すぎるためです。別にどちらも全く悪いことでは無いのですが、自分が面白いと感じるポイントとソシャゲプレイヤー層に評価されるポイントの乖離を感じることが割とあるんですね。
逆にテキストアドベンチャーに関してはやはりある程度ニッチな層かつそもそもの作品の本数が少ないためか「とても面白いゲームが界隈で全然話題にならない」みたいなことは中々無い気がします。
そもそもの界隈が小さいため狭い界隈で共有され尽くす、みたいな感じですが。
要するに自分の主観的感覚と界隈の客観的感覚のシンクロ率が比較的高いんですね。

だいぶ話が逸れていますが、中国や韓国のゲームを作っている人たちの感覚が日本人のオタクの感覚にかなり近付いていることは間違いないでしょう。

おかげで、ツボにハマる良作が増えました。

具体的な作品の話

飢えた子羊

既に何度か紹介しているので実質再掲みたいになってしまいますが、自分に「アジアのインディーADVやべぇな…」と思わせた主犯のうちの一つです。ついでに中国の購買力やべぇな…と心で理解させられた作品でもあります。売れ方がおかしい。

イラスト、シナリオ、CV、どれをとっても良い意味で値段に見合わないクオリティです。日本のゲームまで含めてもセール無しの定価1200円でこのレベルのテキストアドベンチャーはちょっと中々思いつきません。
唯一ボリュームだけは値段相応だと思いますが、別に10時間未満で終わることに関しては弱みとも言い切れないんですよね…
個人的にPCで遊べるコスパ最強テキストアドベンチャーというと「シュタインズ・ゲート」、「レイジングループ」、「パラノマサイト」、「グノーシア」、「逆転裁判123 成歩堂セレクション」、「ダンガンロンパ1&スーパーダンガンロンパ2」(V3は値段が結構上がる)辺りになるのですが、これらはどれも2000~3000円の価格帯です。
無論全ての作品がそれ相応にボリュームも上がるためコスパそのもので言うと飢えた子羊にも全く劣らないのですが、1000円前後で買えて数時間で終わるくらいの小規模の名作と言うと割とこれくらいしか思いつかないかも。

ある程度有名で小規模でとても安い作品としては「シロナガス島への帰還」などがありますが、これに関しては個人的な評価は値段相応の出来かなぁと言ったところでした。
名作群と比べればというだけで全体から見たら十分上澄みだとは思いますが。つまらなくはないです。
ただ安さだけを売りにするならSteam以外に目を向ければ0円で遊べる良作があったりするので…

余談ですが「AI : ソムニウムファイル」シリーズはテキストアドベンチャーとしてはかなり贅沢(というか1/3くらいは3Dアドベンチャー)なので順当に価格がこれらのゲームと比べるとかなり高いのですが、Steamのセールでの値引き率が80%~90%と異常に高く、1作目など最安ワンコインで買えてしまうため、セール時のコスパはこれらと余裕で並ぶか超えます。


なんだかあまりにも話が作品から逸れてしまっていますが、飢えた子羊の強みは前述したとおり値段に見合わぬビジュアル、シナリオのクオリティであり、CVも豪華です。CVは売れたことによってより豪華になった、という感じですが。
値段相応なのがボリュームで、しかしこれは弱みとも言い切れない。
中国ってこんなレベルの作品普通に出せるんだぁ…と思いましたが、どうやら異常な売れ行きを見る感じ多分中国ゲーの中でもかなりの外れ値だと思われます。そりゃそうだ。
2024年で2番目に売れた中国ゲーらしいです。100万本ギリ届かないくらいなので1位の黒神話は桁が2つ違いますが。

このゲームはがっつり中国ゲーなわけですが、今ソシャゲで流行っているタイプの中国、韓国ゲーとは比較的ノリが違う…ように見えます。大して詳しくないのに言うのもあれですが。
中国産でありながら日本人オタクの好む方向性にも合わせたシナリオという感じではなく、完全に中国史実をテーマ、モチーフとした話です。だからこその売れ方なのでしょう。

つまり、日本人は恐らくメインターゲットではありません。設定自体は。
しかし、キャラ部分はきっちり日本人の好みに合う出来です。インディーの中韓ゲーはここが特に強いと感じることが多いですね。主にイラストですが。
ここはソシャゲ系でもそう思いますが本当に平均値が高いです。

CVは後付けですがばっちり日本人向けにもなっています。中国ボイスしか無かったころでも全然楽しめましたが。
そして前述したそこまで日本人に向けてるわけではないシナリオ面ですが、その上で出来がいいので面白いと言わざるを得ません。
雑に言えばおにロリ復讐譚(グロもあるよ!)なので、別に一切日本人に刺さる要素が無いとかそういうわけでも無いですしね。
重めの話がどうしても無理とかじゃなければとりあえずやってみるべき名作だと思いました。

ーーーーーー以下ネタバレゾーンーーーーーー








シナリオのボリューム自体は相応なのですが、主要キャラクターをほぼほぼ主人公の良とヒロインの穂に絞って二人の分岐EDを沢山用意したおかげで、この二人のキャラとしての深み、関係性の良さ良い意味で全く値段相応では無いレベルに達していると思います。リソース配分が本当にうっまい。
シナリオのボリュームは相応でも、シナリオのボリュームに対する満足感の高さは非常に高いです。


他のロリ達が割と早々に退場してその後ほぼ出てこないという所はやはりボリュームに見合った部分という感想を抱きますが、序盤中盤のシナリオに華を添えたり、話を回す役割としてしっかり機能していたと思います。

このゲーム、サブキャラ自体は色々出てきますが、シナリオ自体は本当にどこまで行っても主人公とヒロインの話なんですよね。ヒロインが主人公に復讐を果たすまでの話ですし。
しかし、主人公とヒロインの話であるという大前提の上で、がっつり中国史実モチーフである所が非常によく機能しています。

自分は特に海外好きなわけでもない日本人なので別に中国の事情に全く詳しくも無いわけですが、その上で「この作品は中国史実をモチーフにしたことでより面白くなっている」と断言できます。
ミクロ視点では本当にラスト(真エンド)まで二人の話でしか無いものの、ラストまで辿り着くことで一気にマクロ視点になり、普遍的なテーマが見えてくるからです。

ネタバレ感想まで読んでいる、つまり最後までプレイした人は皆さんわかっていると思いますが、「乱世、飢餓の時代を生きた人々への哀悼」「飢餓への反抗」ですね。「飢餓」の一言で纏められなくもありませんが、個人的には2つに分けた方がわかりやすいと思います。「反抗」というのは自分でもちょっとしっくりこない言い回しなので、なんか他にあるかなと言う気もするのですが…語彙力が足りず思いつきませんでした。

そしてそういう話になってくると、「史実」というモチーフは強いです。空想の話でありながら、現実味実在性を付与できるためです。擬人化や歴史モノもこういうとこはありますね。

これらのテーマはあくまで真EDに辿りつくことで明示的になるものであり、それまでのEDではもっと個人的な、復讐譚としての趣が強い話になります。
そしてこれらのEDだけでも十分出来がいいんですよね。
後述しますが「見えず」EDとか、何なら真EDよりぶっ刺さる人も居るのでは無いでしょうか。二人の関係で閉じた世界の中での、好感度による分岐を描いています。

この物語は基本的に復讐譚ですが、ヒロインの復讐相手が主人公と言う中々ヘヴィな、「すっきりした結末」を迎えるのが難しい関係です。まず前提として二人をかなりしっかり掘り下げる必要がありますし、その上でどう綺麗なオチを付けるかも難しいところです。

そして、「すっきりしない結末」の中で描ける最大の関係性が「見えず」EDでしょう。穂は旅の過程で好きになってしまった良を殺すことも、殺させることも、良が死ぬかどうかを運に任せることもできず、どうしようもなくなってしまった末に自分のみが死すことで、良への復讐を遂げるわけです。
お互いの脳が(精神的に)破壊されたであろうEND。
ここで穂が良への復讐も意図した自死だったのか、それとも意図せず復讐を果たすことになってしまったのかは個人の解釈に任せますが、自分としては前者の方が話の筋は通るかなと思います。しかし筋が通らない行動だからこその美しさもあるので、後者の解釈も捨てがたいですね。


さて、ここから真EDに向けての話ですが。
真EDを迎える前に、これまで触れてきた穂の過去についての完全な掘り下げが行われ、この物語の復讐譚以外のテーマがより見えてきます。

そして「真の敵」をシナリオ上に見出すことができるんですね。
いや、豚妖は元々穂の建前上のラスボスとして設定されていたキャラでもあるわけですが、それだけではなく。

真の仇敵は飢餓を生み出す世界だということがシナリオ上で明言されます。(まあ正確にはこの話以前のEDにも悪いのは飢餓の生まれる今の世界だという話はありますが、真EDの手前でより掘り下げられることになるのは確かです)

こうして視点がマクロ的になることで、大義を得た二人は婉曲的な形での和解を迎えます。安易に和解という言葉を選ばずに言うならば、利害の一致とか、敵の敵は味方、とか。しかしここまで来た二人の関係性を踏まえれば、どちらかと言えばあえて和解と呼ぶ方が適した表現だと思います。
お互いにありえない、特に穂が認めるわけにはいかない和解を行うための建前として利害の一致、大義が存在したと捉えるのが一番しっくり来ました。好感度で分岐する以上、どう考えてもお互いがお互いに絆されてしまった結果の流れですからね。
まあ建前と言っても、二人とも(少なくとも言い出した良は)本気でその大義を信じたからこその展開だと思いますが。

さて、大義を得た二人はすっきりする結末に向かっていくことができるようになります。単なる復讐譚よりは勧善懲悪を含む話の方がすっきりするのは当然の話ですからね。
正確に言えば復讐譚だってミクロ視点での勧善懲悪ではあるのですが、この話の場合の復讐はシンプルな勧善懲悪とは言えないので…
大義を得て侠客となることで復讐者と復讐対象の和解が成立し、マクロ視点での勧善懲悪に向かうことで、すっきりする結末が見えてきました。

このゲームの良いところは、ここから更に分岐したことですね。
ここまでの分岐は「穂が選んだ結果」ですが、これ以降の分岐は「良が選んだ結果」となります。

「ともに生きる」END「ともに死す」END、双方が真EDとして扱われます。そしてこれらがどちらも真EDとして甲乙付けがたい出来で成立しています。
雑に切り分けるならば「ともに生きる」がハッピーエンド、「ともに死す」がビターエンドでしょう。どちらのEDでも豚妖は死にますし、「ともに生きる」の方がより大義に沿った活動をしています。そして何より両方生きて話の終わりを迎えられますからね。
しかし「ともに死す」もまた非常に美しい終わりです。二人で死を覚悟しながら豚妖の始末に向かい、力を合わせてそれを成し遂げ、そして共に死します。

この2つの違いは、真EDを迎える前までメインだった「復讐譚」としての要素をどれだけ残しているかで考えるのがわかりやすいです。

「ともに生きる」も「ともに死す」も、どちらも建前上は「良への復讐を兼ねた、大義名分」によって成立する話です。

そして、「ともに死す」ルートの方が展開としては視点の飛躍が小さく、比較的自然であると言えます。
分岐直前までの、穂の基本的な思考は「復讐以外に生きる理由がない」と、「良を殺すことができなくなった」であり、この2つの矛盾によって真ENDに到達しない場合は自死という手段を選ぶ結果になるわけです。
そして良も、穂の真意を知ることで現状を受け入れ、穂に自分を殺させて罪を償おうとしますが、前述のように穂にはどうしてもそれをすることができませんでした。

この時点での良の基本的な思考は「穂に対して罪を償いたい」と、「できれば穂に生きていてほしい」「生きるのが嫌になった」です。
そのため、「穂に自分を殺してほしい」という結論に至りますが、穂はそれができません。しないのではなく、できないと断言しています。

そして良は罪滅ぼしのために自分の命を使おうと考えます。そのために良が提示した、「直接的な仇である良が、より諸悪の根源に近い豚妖を殺しに行く」という理屈を、穂は受け入れます。
これによって、穂の抱えていた矛盾が一見解消します。良を殺さずとも、より上位の仇敵である豚妖に復讐できるからです。

しかしこの理屈を受け入れるということは、結局良が死ぬことになるのはほぼ間違いありません。自分の手で殺さなければよいということでは無いのは、真ED以外では間接的に良を殺していることから判断できます。

しかし元の矛盾を抱えたままであるよりは、こうあるべきだと考えたのだと思われます。
お互い死ぬことになるだろうとは思っていましたが、それでも一応死なずに逃げ切る方法を相談した上でそれは難しいという結論を出していたことからも伺えます。
そして、良の方も穂に死んでほしくないために一人で決着をつけようとしたがっていたにも関わらず、結局穂に説得されて押し切られ、共犯で行うことになりました。

つまりこのルートは、お互いに自分の満たしたい要件妥協しています。
言い換えれば、多少は現実的な折衷案を選びました。
お互いに「相手が死んでほしくない」とは思っているものの、それは現状のお互いの復讐、飢餓に関する感情のもつれを捻じ曲げてまで優先するほどのものではなかったのです。
ここに、

復讐/罪滅ぼし > 相手が死なないこと

という優先度が存在することが伺えます。
結果このルートでは、優先度の高い前者の目標を果たし、そして後者の目標は果たせなかったものの、二人は満足して、一緒に死んでゆきます。

妥協の結果のルートではありますが、お互いを心の底では想い合いながらも完全に破綻している関係性だった二人が、お互いに志を共にすることで、死を覚悟して復讐を果たすまでの間のみ嘘偽り無く心を通わせ、そしてともに死すことには100点の結果ではないからこその美しさがありました。

妥協の上での選択肢だったり、死を覚悟してヤケになっているような節があったりと、完璧な終わりではないことが逆に良さにも繋がっています。
そして暗殺準備の時点であまり隠している感じもありませんでしたが、穂が完全に良のことを愛してしまっていた事もよく伝わる終わり方でした。


そして「ともに生きる」ルートの場合、「良への復讐」部分が本当にほぼ建前と化しています。このルート、名前通りに別れても同じ大義を持って志はともに生きた話であり、再開してその先の人生をともに生きる話です。
途中で置いていったロリ達との再会も示唆され、よく言えば完璧なハッピーエンドであり、悪く言えば少々都合の良いエンドでしょう。
いや、建前としては一応ハッピーエンドとは言い切れません。結んだ約束は「大義を果たしたら良を殺してやる」ですからね、一応。
そのままこれを素直に受け取れば真ED後にじゃあ約束ね、で穂が良を殺すはずです。実際にそこまで行く前に話は幕を閉じますが。

いや建前過ぎる。

改めて流れを確かめてみると、このルートでは真の敵は飢餓を生む世界であるという認識は変わらないうえで、ただ豚妖を殺しても根本的な解決にはならない、といきなり「ともに死す」ルートの否定かのような思考に飛びます。
確かにそれは事実であり、ここで「ともに死す」ルートは一応マクロな視点を得たりはしたものの、やはり二人の関係性の方が主題の、ミクロな視点の方に偏った話だったことが改めてわかります。
豚妖の始末よりも更に大きな大義を得た良の提案は、「ただ豚妖を殺しに行くのではなく反乱軍に入ってもっと大きく世界を変える」というものであり、この提案は良と穂の生きる理由となり、二人の死は先送りになります。
ここで改めて言うと、

復讐/罪滅ぼし > 相手が死なないこと

この思考自体は特に変わってはいないと考えられます。
しかしこのルートでの良の提案は、前者も後者も条件を満たしています。
ただし、かなり話が飛躍しており少し現実味に欠けています。
ここでの現実味が欠けているというのは作品としての話というより作中での話です。

大義を果たしたら再開しましょう。
5年後に豚妖を倒して再開しましょう。
それまではここでお別れしましょう。
指切りで約束しましょう。


復讐対象であるはずの良に対して、完全に性善説を前提とした約束です。
父親を殺した、復讐すべき悪人である良が善人であることが前提の約束なのです。
確かに良は本気でそう思っているわけですが。

しかも仮に良が約束を破るつもりが無かったとしても、実際に約束を果たせる確率は非常に低いはずです。
そもそも生き抜くのも難しい飢餓の世であり、14歳の女一人と反乱軍に入った男が何年も経った末に再開などそうそうできるものでしょうか?
しかし二人は特に悩むこと無く約束を交わします。

それが実際に出来るか出来ないかよりも、この約束が二人の生きる意味になっていることが大事なわけです。

約束を交わしたそばから「5年で達成できなかったらどうしよう?」などと言い出した良の質問に対する穂の答えが以下です。

  • 5年で足りなかったら10年、15年かけてもよいとする

  • 5年ごとに洛陽に来てお互いの無事を確認する

  • 良を殺すのは自分だからそれまで絶対に死んじゃダメ

もはや良に生きてほしいという感情を隠す気が有りません。
良は気付いていませんが。クソボケが!

ついでに良が立ち去った時に泣いています。
別れが悲しいのでしょう。
良は気付いていませんが。クソボケが!

とは言えど、果たすべき復讐/罪滅ぼしの部分に関してはきっちり果たしてもらおうとしているはずですが…

復讐/罪滅ぼし > 相手が死なないこと

この条件の優先度自体は逆転していないかもしれませんが、両方の条件を満たした場合に発露する感情は完全に後者の方が大きくなるわけですね。
実際、ともに死すルートでも暗殺準備パートからは好意を隠そうともしていませんでした。

結局5年後に会うという約束を果たせなかった良はしかし、9年後に目標を達成します。なんのかんのあって23歳の美女となった穂との再開が果たされるわけですが、ファーストコンタクトが笑顔での「良様。」という呼びかけです。
殺す気ないですよね?

二言目には「雨よ。風邪ひかないで。」です。殺す気ないですよね?

~以下満穂ちゃん(23)の再開トーク~

  • 私と良様は本当に縁がある。すれ違わなかったのは天意のおかげかも。

  • あなたと会うためにいつも洛陽城のことを聞き回ってた。

  • 私のこと綺麗だと思う?

  • 良様は戦い続け随分変わったが、私の思い出の中とはあまり変わらない。

  • (良:結婚したのか?)まだよ。良様は?


殺す気ないですよね?
いいえ、そんなことはありません。

良が「俺を殺しに来たのか?」と問うと「そう」と答えました。ほな殺す気かぁ…


~以下満穂ちゃん(23)の再開トーク~

  • でも9年も殺さなかったのだから今更急ぐ必要はない。

  • また良様に猶予を与えて、やりたいことをやって願いを叶えてから死ぬのはどう?

  • 一緒に揚州に行って未練がなくなったその時良様を殺す。


殺す気ないですよね?


~極めつけ~

  • 「穂」ではなく本名の「満穂」を知ってるのは良様だけ。

  • 「満穂」と「穂」どっちの方が好き?

  • (良:「満穂」が好きだ。)ああ……


言わせとる!!!!!!!!!
好きじゃん!!!!!!!!!!!!


どう考えてもラブラブハッピーエンドです。本当にありがとうございました。


とまあ、ハッピーエンドというか、ともすればベストエンドという言い回しが相応しいような終わり方を迎えます。
ベストエンドすぎて微妙にここまでの悲哀がどっか行っちゃった感すらありますが。

生きる理由を失っていたはずの二人ですが、二人でともに生きるだけで満たされるのでしょう。

しかしあまりにも全方面に都合の良いハッピーエンドなため、ここまでヘヴィな世界観を描いてきた作品としては似合わないという意見も理解できます。
とは言えどむしろ、ここまで辛い思いをしたのだから目一杯幸せになってほしいという考えも自然でしょう。

だからこそ、「ともに死す」「ともに生きる」の双方を真EDとして用意したのが素晴らしいと思いました。
続編では恐らく「ともに生きる」のその後が描かれるようですが、だからといって「ともに死す」の扱いが薄れるということは無いでしょう。

というかむしろ逆に続編に出るのがちょっと怖いんですが二人はちゃんとその後幸せになれるんでしょうか?「ともに死す」の終わり方自体は納得行くし好きですが「ともに生きる」のその後を悲しい終わり方にされると脳が破壊されそうです。

個人的には、やはりどちらかと言えば完全無欠なハッピーエンドの方が好きです。
ビターエンドも描き方次第では全く嫌いじゃないんですけどね。
それこそ「ともに死す」かなり好きな部類のビターエンドです。
当人らが満足しているかは重要。

しかし主人公らキャラに強く感情移入できるような優れた作品は、やはり多少のシナリオの完全性を崩してでも幸せな結末が見たいのです。

そこで完全性の方を高めたビターエンドと、完全性を落としてでも二人の幸せなその後を思わせてくれるハッピーエンドの双方を等しく描いてくれたのはとても嬉しかったです。

クリアした後もその世界のその後を想って浸ることができるような作品はそれだけで名作であると考えます。
この作品はまさにそのような作品でした。

このゲームプレイしたの一年近く前なのにちょっと軽く終盤読み直したらスラスラ言葉が出てきましたからね。
よっぽど印象に残っていたのだと思います。


もうちょいレビュー的に書きたかったんですが途中から気持ちが乗って読書感想文未満のなにかみたいになっちゃいましたね。ごめんなさい。

「彼女は生きている、俺もだ。これが、もう最高の結末じゃないか。」

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