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ゲームシナリオにおける個人的な「面白い」と「楽しい」の違い

※文中に出てくるゲーム:「ひぐらしのなく頃に」、「シュタインズゲート」、「レイジングループ」、「AI : ソムニウムファイル」、「パラノマサイト」、「グノーシア」、「逆転裁判」、「ダンガンロンパ」、「飢えた子羊」、「都市伝説解体センター」、「CHAOS;CHILD」
内容についての具体的な話はほぼしていませんが一応…


自分の中での勝手な定義の話です。

「面白い」「楽しい」ってまあ両方ポジティブな印象を受ける言葉で、実際近しい意味を持っているとは思うんですが。
共通するA∩B部分は存在するものの、AとBで微妙に別の意味であるとも思います。

実際の言葉の正確な定義はまあ勝手に調べてもらえればいいのですが、作品(主にゲーム)を評価する際に自分はこの2つをある程度意識的に、別基準の評価軸として使い分けています。
大雑把に言えば、

面白い→長期的、客観的な目線の評価
楽しい→短期的、主観的な目線の評価

といった感じです。この主観的、客観的というのは単に、自分の評価基準としてどちらかと言うと短期的な部分での良さを重視しているからというのもあります。

客観的な目線と言ったところで結局自分の主観が混ざっていることには代わりが無いのですが、それでもある程度「客観的であろう」とすることはできると思います。(全くできない人も居るとは思いますが…)

さて、まず「面白い」についてです。
前述したようにこれはどちらかというと長期的な目線での評価基準です。
例えば、シナリオを0から100まで通して見た場合の完成度とかがメインになりやすいですね。「よくできている」とも言えます。

そして「楽しい」は短期的な目線での基準なわけですが、例えばその瞬間瞬間における会話の内容が笑える、とかそういう要素が近いですね。まあ別に笑いである必要は無く、ギャルゲーで美少女と取り留めのないイチャイチャをしているようなパートも人によっては「楽しい」に分類されることになるでしょう。サスペンス・ミステリーで言えば、「1つの謎の答えに迫ったと思ったら新たな謎が出てくる」みたいな真実との追いかけっこは、短期的な楽しさの連発となって非常に強いです。

例えば所謂「伏線回収」はどちらかと言うと「面白い」側のポイントが高いです。とは言えこれは「楽しい」側のポイントも十分稼げる要素なのですが、どちらかと言えば長期的な目線での良さだと考えています。
「回収するための伏線を撒く」パートが純粋に「楽しい」とはならないことが割と多いからですね。逆にここを解決できている作品は強いですが。
例えば「オチまでは退屈だがオチがとても面白い」といったパターンの作品は大体の場合では「長期的な良さ」だと定義されます。オチだけを切り取れば「楽しい」のですが、基本的にオチに至るまでの過程が瞬間的な楽しさを得るための前提として求められるので。

具体例を挙げれば、「ひぐらしのなく頃に」はわかりやすく、部活メンバーとの交流パートが後々の展開のための伏線パートですよね。
ここが「一周回って好き」な人は普通に多いと思いますが、初見でひぐらしを読み進めている間このパートを「面白い」パートや「楽しい」パートとして捉えることはそんなに多くないんじゃないかと思います。
キャラそのものへの愛着が湧くことで、彼らの平和な日常を「楽しい」として捉えることはまああるとは思いますが…とは言えその時点で、そのパートは平和の崩壊への前振りであることを理解しているため、やはり純粋な「楽しい」では無くなると思います。

そしてこの平和の崩壊、または崩壊を乗り越えて平和を取り戻すことが、ひぐらしにおいて「伏線回収」を利用した「面白い」に繋がるパートだと思います。

「山あり谷ありの過程を含めた結果の評価」「面白い」で、「山」「楽しい」というのが近いかもしれません。その「山」の形もシナリオや読み手によってそれぞれですが。

総合的な面白さって、比較的客観的な評価が可能だと思います。大きい目線で評価する必要が出てくるため、構成の出来とかどちらかと言えば論理的な評価基準になるからです。もちろん結局は主観が混ざってくるのは確かですが。そのためか、ビジュアルノベルやノベルゲームにおいて重視されがちなのもどちらかと言えばこっちの方だと思います。
しかし短期的な面白さは本当に好みによってハッキリ分かれるんですよね。
推理パート、ギャグパート恋愛パートバトルパート等々。パート自体のジャンルですら既に好みが分かれるのに、そのジャンルごとに好みが激しく分かれるでしょう。

自分の場合、ギャグパートとバトルパートへの興味が比較的薄いです。勿論例外はありますが。
なんなら恋愛パートも、ボーイミーツガール的な方向性のパートは好きですが、単にカップルがいちゃついているだけのようなギャルゲー的パートはあまり興味が持てません。恋愛漫画で言うと出会ってから付き合うところまでがピーク、みたいな。
より正確に言うと別に付き合ってないのにカップルみたいにいちゃついてるだけ、みたいなパートが虚無を感じます。あくまでプレイヤーの疑似恋愛欲を満たすために存在しているように感じてしまうからでしょうか?

そのせいなのか、ADVはそこそこやっているものの、名作が多いとされているエロゲー側の作品にハマるまで行くことがとても少ないです。一応ある程度プレイはしているのですが。
「シナリオが良い」と評されているゲームで、実際にプレイしていて「全体的なシナリオの構成は良くできている」と感じるのに、日常パートを「楽しい」と感じられず、総合的に「あまり盛り上がれなかった」というパターンが多いです。「日常パートが退屈」という、なんなら別に一般ゲーでも起き得る問題が、ギャルゲー的要素を強く含んでいることが多いエロゲーにおいてはかなりの高確率で発生します。
でも当然ですよね。付き合う流れにもデートにもキスシーンにもエロシーンにも大して盛り上がりを感じられないのだからハマるわけがありません。
R-18作品としてのギャルゲー要素が自分にとっては基本的にマイナス側に働くことが多いわけです。

微妙に話が逸れている気もしますが、この「面白い」と「楽しい」を、個々人の基準による比重をかけて合計した結果が総合的なそのシナリオの「良さ」の評価になると思います。

だがこのゲームには必勝法がある。

極論、ずっと「楽しい」なら総合的に見ても「面白い」としか評価できないんですよね。「山」を面白いパート、「谷」を溜めのパートとした場合に山あり谷ありの過程で90%以上を山で埋めてしまうというような。

と言ってもシナリオにおいて最低限の布石も無く最初からずっと楽しいというのも中々無理があるため、「序盤を谷のパートに使う」という構成が、ある程度長尺を確保したノベルゲームには非常に多いと思います。

個人的に「傑作だ」と感じる作品の多くは、例えるならば飛び立つための最低限の助走を最初に確保して、飛び立った後は飛行中に燃料を継ぎ足しながらずっと飛び続けるといった感じのシナリオ構成が多いです。王道。最終的に着地失敗するパターンも無くはないですが…
こういう例での傑作が「シュタインズゲート」や「レイジングループ」だと思っています。「ソムニウムファイル」もまあ割と当てはまるかな。1作目の方です。
前述しましたが、「1つの問題を解決したと思ったら新たな問題が出てくる」みたいな構成が強いと思います。

少し違う例では、最初から燃料全開で飛ばして、だんだん高度が落ちてくるタイミングで新しい燃料を追加するタイプの作品もあります。「パラノマサイト」や「グノーシア」はこれが比較的近いと思います。ある程度のゲーム性を持っている作品はこれがやりやすいでしょうね。ゲーム部分が強すぎますが「逆転裁判」「ダンガンロンパ」も定義するなら恐らくここでしょう。根本的な設計が面白く、そのテンプレを使ったいくつかの事件に分かれているタイプ。「ダンガンロンパ」の場合、ゲーム性の部分を抜きにしても結構本筋のメインシナリオ部分でもちゃんと興味を惹くのが上手い印象です。
あと単純に、○話単位でシナリオを区切るタイプのゲームに多いかと。

個人的にはあまり自信を持って「傑作だ」とまでは言えないことが多いのですが、ラスト近くまでは低空飛行を維持してラストで一気に急上昇するみたいな構成も結構ありますよね。オチに特化したタイプ。小規模なシナリオでも大きな印象を与えやすいため、現代向けな感じかも。最近は特に多いと思います。
「飢えた子羊」や「都市伝説解体センター」が比較的近いでしょうか?この2つを並べるにもだいぶバランスは違う気はしますが…
これは小規模なシナリオにはかなり向いていますが、長大なシナリオでこれをやるとプレイヤーのストレス限界許容値を超えやすいと思います。

すこし批判的な意見になってしまいますが、個人的には「CHAOS;CHILD」がまさにそれで、物語としてはよく出来ているもののここまでに与えられた苦痛を上回るほどの面白さを得られなかった、と感じました。端的に言うとエンタメ性不足でしょうか。シュタゲとは対照的に感じました。
このゲームが「隠れた名作」的扱いを受けているのはなかなかプレイヤー側の許容値が凄いなと感じます。プレイヤーへのストレステストでもやってんのか?って思うくらいでしたが、普通にそれを乗り越えてちゃんと「面白い」と捉えられた人が結構沢山居たのでしょう。
いやまあ、自分もなんだかんだその釈然としなさを原動力に完走した上でファンディスクまで購入してプレイしたので、確かに凄まじいゲームであることは事実なのでしょうが…

裏技的なのですが、「会話」を描くのが上手い作品はそれだけでかなり強いです。極論言うと一切シナリオ上の前提が必要なく「楽しい」を生み出せるからですね。理論上は0から100まで「楽しい」作品を作り得ます。
まあこれに関しては本当に好みがはっきりと分かれる問題ではあるのですが、それでも会話の「テンポ」「話に定期的にオチを付ける能力」みたいなものは割と明確にステータス化できそうな要素だと思います。
別に創作者でも無い自分が何を偉そうにと言ったところですが。

最初にも述べましたが自分はどちらかと言えば短期的な楽しさが大切だと思っています。短期的な部分で退屈だとなかなか作品にハマれず長期的な面白さも受け取りにくくなってしまうからですね。
しかしそれは長期的な面白さを蔑ろにして良いというわけではありません。というか一般的にはむしろそっちの方が重要でしょう。
結局のところ、短期的に見ても長期的に見ても面白い作品が最強なわけですが。
正確に自分の感情を定義するならば、そもそも根本的にノベルゲームにおいては長期的な面白さ、もといオチの方を重視されがちな中で、「短期的な楽しさも大事なのでは?」という意識が自分の中で働いているのだと思います。

つまり自分にとっての理想のシナリオとは
取り留めのない日常会話すら愉快盛り上がる展開最初から定期的に入れ続け、そしてラストがこれまでのシナリオの集大成となる文句なしのオチである話
ですね。

そんなもんあるのか?

自分はおそらく出会ったことがありません。限りなく近しいところまで迫った作品はありますが。
自分にとっての理想のシナリオになるような話に出会えた人は幸せですね。

なにはともあれ、「短期的な楽しさを軽視しない」、むしろそこに本気で取り組むシナリオが増えてくれると個人的には嬉しいです。


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