DJI Power 140W GaN充電器レビュー|ドローンの会社が壁のコンセントまで来た
DJIが充電器を出した。ドローンでもカメラでもポータブル電源でもなく、壁のコンセントに挿すただの充電器である。
正直に言うと、140W級のGaN充電器なんて今どき珍しくもない。AnkerもCIOもUGREENも、とっくにこの土俵で殴り合っている。そこにドローンの会社が今さら参入して何になるのか——と思いながら、気づいたらコンボを注文していた。私はこういう人間である。
先に結論を書いてしまうと、この充電器は万人におすすめではない。ただ、DJI機器を持っている人間にとっては話が変わってくる。ということで今回は、画面付きケーブルを2本(DJI純正とCIO)並べて公称の「動的電力配分」を数字で確かめ、「DJI機器優先給電」の正体は公式FAQの底まで掘った。DJI製品持ちの充電環境整理の参考にしてほしい。
買ったもの
DJI Power 140W GaN充電器 コンボ(7A USB-Cデジタルディスプレイケーブル1m付属)─ 税込9,900円
充電器単体なら税込8,910円。ケーブル単体は1mが1,650円、1.8mが1,980円
なおDJIオンラインストアで購入すると18ヶ月保証が付く



スペックはこうだ。
出力: USB-C×2、USB-A×1の3ポート
USB-C単ポート使用時は最大140W(PD 3.1対応)
USB-Aは最大33W
サイズ: 68.3×32.2×64mm、重量245g(手元の実測では237gだった)
折りたたみ式プラグ

USB-C×2、USB-A×1
ひとつ細かい注意を。公式の脚注によると、最大140Wが出るのは周囲温度が0〜25℃のときで、フル負荷で温度が閾値に達すると保護機能が自動で出力を絞る。真夏の現場や車内では公称の数字が出ない可能性があるということだ。
数字だけ見れば普通である。普通なのだ。この製品の本体は、スペック表の外側にある。
いま何ワット出ているかが、見える
コンボに付属する7Aケーブルには小さな画面がついていて、いま何ワット流れているかがリアルタイムで表示される。
これが思いのほか効く。充電というのは普段、繋いで放置するだけのブラックボックスである。速いのか遅いのか、そもそもちゃんと流れているのか。それが数字で見えるだけで、充電まわりの「なんとなく不安」がひとつ消える。そしてこの画面が、この後の検証の計測器にもなる。


接続するとDJIのロゴが表示される



DJIロゴがさりげなく刻印されている
本体側にも仕掛けがある。前面のDJIロゴがインジケーターになっていて、状態によって光り方が変わる。
低輝度で点灯 ─ 電源オンで待機中
高輝度で点灯 ─ デバイスを充電中
短い高速点滅 ─ デバイスの接続または取り外し
連続する高速点滅 ─ 状態異常
消灯 ─ スリープモード
充電器のロゴが光る必要があるのかと問われれば、異常検知以外には特にない。ないのだが、考えてみてほしい。私の記憶にある限り、DJIのロゴそのものが光る製品はこれまで思い当たらない。機体にもプロポにもステータスLEDは付いているが、ロゴは光らなかった。かつてのMacBookは天板のリンゴマークが光っていて、あれは機能ではなく信仰の装置だった。2010年代半ばのモデルチェンジで廃止されて以来、あの手の感動とは縁がなかったが、近いものがこの8,910円の充電器にある。DJIのロゴが光っているというただそれだけのことで所有欲が満たされる人種が一定数いて、私はそれである。

画面2つで電力配分を丸裸にする
私はDJIの7Aケーブルとは別に、CIOの画面付きケーブルも持っている。つまり両方のUSB-Cポートの出力を同時に、1枚の写真で見られる。合計140Wがどう割られるのか、答え合わせができてしまうわけだ。

下:DJI 7A USB-Cデジタルディスプレイケーブル1m
答え合わせの相手として、公式が公表している配分パターンを先に載せておく(140Wフル負荷時)。
単ポート ─ USB-C1またはC2: 最大140W / USB-A: 最大33W
USB-C×2 ─ 100W+35W / 35W+100W / 65W+65W
USB-C+USB-A ─ 100W+33W
3ポート ─ 80W+35W+22W / 35W+80W+22W / 65W+50W+22W(合計は140Wを超えない)
つまり公称上、配分は無段階ではなくいくつかの型にはまる。実測の数字がこの型通りに出るのかを見る。
まず単ポートから。M3 MacBook Proを繋ぐと表示は約85W。140Wは出ないが、これはMac側が85Wまでしか要求しないためである。手元には単ポートで140Wをフルに引き出せる機器がない。そこで発想を変えた。DJI Power 1000miniのAC出力にこの充電器を挿せば、1000miniの画面が即席のワットチェッカーになる。Mac、Avata 2の2WAY充電ハブ、iPhoneの3台をぶら下げたところ、1000mini側の表示は138W。入力側の数字なので充電器自身の変換ロス込みだが、140W級の地力は本物とみていい。

次に2台同時。MacとAvata 2の充電ハブを繋ぐと、Macが45〜47W、Avata2充電ハブが59Wで合計約105W。ポートを入れ替えるとMacが60W、Avataが57Wで合計約117W。数字だけ見ると、100W+35Wという型とも65W+65Wという型とも一致していないように見える。
ただしここは読み方に注意が要る。ケーブルの画面に出るのは「ポートに割り当てられた予算」ではなく「機器が実際に引いている電力」である。単独なら85W要求するMacが2台接続で60Wに絞られたのは、65W+65W型の壁にぶつかった数字とみるのが自然だ。65Wとの数Wのずれが変換ロスなのかケーブル表示の誤差なのか、そこまではこの装備では切り分けられない。いずれにせよ型は配分の上限として生きていて、画面の数字はその予算の内側で機器がいま引いている量。予算の壁に当たった瞬間にだけ、型がうっすら顔を出す。
この解釈を裏付けるのが、フル負荷時の内訳である。入力138Wの回は、Macが78W、Avata2充電ハブが37W(iPhoneはUSB-Aで実測不能)。公称の3ポート型「80W+35W+22W」とほぼ重なる。単独なら59Wを引くAvata充電ハブが37Wに抑えられ、85W要求のMacは78Wで頭打ち。全員の要求が予算を超えたとき、型がくっきり顔を出したのである。
さらに面白いことに、同じ3台構成でもう一度測ると、今度はAvata充電ハブが60W、Macが45Wで入力は130W。こちらは公称の別の型「65W+50W+22W」に近い。つまりこの充電器は、公称の型メニューの中からその場の交渉でひとつを選んでいて、どの型になるかは毎回同じではない。型は実在する。ただしどの型が選ばれるかは、繋いでみるまで分からない。
だから公称の配分表を見て「うちのPCには100W来るはず」と電卓を叩いても、その通りの数字が画面に出るとは限らない。機器の要求量、バッテリー残量、誤差、その場のPD交渉で数字は動き続ける。スペック表より、画面を見たほうが早い。
抜き差しの挙動も見た。Avata充電ハブ60W+Mac 30Wの状態でUSB-AにiPhoneを追加する実験を2回やったところ、1回目は両者とも変化なし、2回目はなぜかMacが30Wから45Wに増えた。同じ操作でも結果は毎回同じにならない。ただし重要なのは、2回とも稼働中のポートが下に振れなかったことだ。「後から機器を足すと既存の充電が遅くなる」という現象は、今回の実測では一度も起きなかった。公式FAQには「PPS対応機器では再ハンドシェイク時に一時的な切断が起こり得る」という但し書きがあるが、これも私の環境では起きなかった。
ついでにケーブルの疑いも潰しておいた。Macを同じポートに固定してDJIケーブルとCIOケーブルを差し替えたところ、57Wと60Wでほぼ同じ。ケーブルで配分が変わることはなく、メーカーの違う2本の表示値が数W差で揃ったことで、計測器としての信頼性もお互いに裏付けられた。
「DJI機器優先給電」の対象を掘ったら、身も蓋もなかった
この充電器の唯一の独自機能が「DJI機器への優先給電」である。発表時の記事はどれも対象を「ドローンや充電ハブなど」とぼかしていて、海外メディアには「未検証」と書かれている始末だった。ところが公式FAQを掘ると、対象リストがきっちり載っていた。

優先給電には条件が2つある。まずUSB-C1またはC2に7Aデジタルディスプレイケーブルが接続されていること。つまり充電器単体ではこの機能は使えず、コンボかケーブル別買いが実質必須になる。そして対象は以下のデバイスに限られる。
DJI Mavic 4 Pro 機体 / バッテリー充電ハブ
DJI Air 3 機体
DJI Mini 5 Pro 2WAY充電ハブ
Osmo Pocket 4 / Osmo Pocket 3
Osmo 多機能バッテリーケース3
お気づきだろうか。並んでいるのは直近世代の主力機ばかりで、少し前の機種はまるごと抱え落とされている。私のAvata 2ももちろんいない。優先給電に淡い期待を抱いてコンボを買った私の手元には、対象デバイスがひとつもない。買うメリット、無かったね。
一応整理しておくと、優先給電は充電を速くする魔法ではなく、電力の取り合いが起きたときの順位の話である。Avata 2の2WAY充電ハブは実測で60W程度を引くので、Macと同時に充電すれば取り合いは普通に起きる。つまり対象でさえあれば恩恵のある場面は実在した。それだけに、「対象だが恩恵が薄い」ではなく「そもそも対象ですらない」という現実は、財布の納得感に響く。
なお実測では、非対象のAvata 2の充電ハブとMacを同時に繋いだときの配分も見た。2台接続ではAvataケースが50〜60Wを確保し、譲る側に回るのはいつもMacだった。優先給電の対象ではないのに、なかなか強気に電力を取っていく。おそらく優先給電ではなくPD交渉の性質(Avataケースは20V固定で要求し、Macは柔軟に譲れる)によるものだろう。ただし3台フル負荷では37Wまで抑えられる回もあったので、対象外でも常に勝てるわけではない。優先給電が効くのは、まさにこういう場面なのだろう。対象外の身としては想像するしかないが。
現場セットはこれ1台で済む——ただし、Ankerでも済んでいた
Avata 2の現場で充電が要るのは、機体バッテリー、プロポ、FPVゴーグルの3つである。3ポートあるので、この充電器1台で全部同時に賄える。
ただ白状すると、この3つを同時に繋いでも合計100Wもいかない。だから長らく愛用しているAnker Prime Wall Charger(100W)で事足りていたし、実際足りていた。あれは名機である。
では何が変わるのか。純正の安心感である。充電中のバッテリーやゴーグルはそれなりに熱を持つ。プロトコルの相性だの出力の上限だのを考えず、「DJI製品をDJI製品で充電している」というだけで、現場で気にする項目がひとつ減る。安心感は数値化できないが、こういうところでは確実に効く。
現用のPrime Wall Chargerが退役するのかと言えば、いずれ置き換わると思う。重さは実測でDJIが237g、Ankerが174g。63gの差ではっきりAnkerが軽い。ただしワット当たりの重さで見るとDJIが1.69g/W、Ankerが1.74g/Wでほぼ互角である。つまりDJIが重いのではなく、140W分の実装が乗っているだけだ。そして形はまた話が別で、DJIは全体の体積こそ大きいものの幅が狭いので、ガジェットポーチへの収まりはむしろ良くなった。重さのAnker、収まりのDJI。というわけで今のところ、ガジェットポーチの中で2台が共存している。どちらかが淘汰されるのか、役割分担に落ち着くのか。数ヶ月使ったあとの答え合わせにしたい。


幅が狭いぶん、収まりはむしろDJIのほうが良い
ちなみにこのガジェットポーチはエレコムのストレージタイプである。値段の割に色々入るし中も広く使えて汎用性が高い。ただし幅があってかさばるので、私はここに全部を集約しておき、持ち歩くときは必要なものだけを小さいポーチにピックアップする運用にしている。ポーチの中身は、いずれ別の記事にまとめたい。
競合と並べると、立ち位置がはっきりする
140Wクラスの主要どころと比較する。価格は2026年7月時点の実売目安である。
DJI Power 140W ─ 8,910円(コンボ9,900円)。C×2+A×1。独自機能はDJI優先給電とディスプレイケーブル連携
Anker Charger (140W, 4 Ports) ─ セール時8,990円前後。4ポートでケーブル付属、しかも本体にタッチ式ディスプレイ付き。「見える充電」はDJIの専売特許ではない
CIO NovaPort TRIO II 140W ─ 定価12,980円、実売9,800円前後。C×3、瞬断抑制あり
UGREEN 160W 5口充電器 カラーディスプレイ搭載 ─ 実売1.2〜1.5万円前後。合計160W
定価ではDJIが最安級だが、AnkerもCIOもセールで9千円前後まで落ちるので、実売は横並びと考えていい。
汎用充電器として見れば、ポート数のAnker、コンパクトさと瞬断抑制のCIOに対して、DJIが明確に勝っている点は特にない。率直に言って、DJI機器を持っていない人がこれを選ぶ理由は薄い。逆に、ドローンバッグにDJI機器が詰まっている人間にとっては、充電器までDJIで揃える意味が(たぶん)ある。そういう製品である。
DJIの充電器は、これが初めてではない
実はDJIの充電器自体は以前から存在する。ただしどれも「ドローンの純正充電器」という立ち位置で、単体で選んで買うものではなかった。
DJI 100W USB-C電源アダプター(税込7,260円) ─ Matrice 4Eなどの産業機やMavicシリーズに付属。USB-Cが2口あり、機体バッテリーとプロポを同時に充電できる。現場の実用品だが、あくまで付属品の顔をしている
DJI 240W電源アダプター(税込22,000円) ─ DJI独自のSDC端子とUSB-Cを備えた産業用。Matrice 4Dのバッテリーを30分で15%から90%まで叩き込む。Matrice 4シリーズ等の産業機を持っている人以外には無用の長物である
DJI 65Wポータブル充電器 ─ これは買うメリットが見当たらない。USB-Cケーブルが本体固定の一体型で、断線したら充電器ごと終わる。強いて言えば純正という一点だろうか
他にもあるが、全部挙げたところで意味はない。要するにDJIの充電器とは「機体を買ったら箱に入っているもの」であり、家電量販店の充電器コーナーでAnkerと隣り合う製品ではなかった。
余談だが、SDC端子は私のDJI Power 1000miniにも付いている。対応機器を持っていないので、今のところただの飾りである。そして先ほどの優先給電リストの筆頭もMavic 4 Proだった。1000miniのSDCも、この充電器の優先給電も、Mavic 4 Proを迎えて初めて意味を持つ。私の充電環境はとっくにDJIの掌の上で、あの機体を買う日を待っているらしい。
そういう会社が今回、満を持して——なのかどうかは知らないが——初めて「充電器単体で売る気のあるスペック」の汎用品を出してきた。
ちなみに製品ページには「満を持して登場、急速充電を再定義する」とあり、「高出力急速充電のパイオニア」「15年にわたるバッテリーのノウハウ」という文句が並ぶ。ドローンバッテリーの急速充電ならたしかに先駆者だろう。ただし壁挿し充電器の世界では、GaNの高出力充電器はAnkerが2018年頃から市場に投入していて、140W級も2021〜22年には出揃っていた。パイオニアどころか、ざっと5年遅れの後発である。
「15年のノウハウ」のほうはもっと味わい深い。Ankerの創業は2011年、ノートPCの交換バッテリー屋として始まって今年でちょうど15年目である。奇遇にも同い年だ。さらに「DJI初のGaN充電器」という触れ込みも、公式の製品ページを見ると先代の65Wポータブル充電器もGaN採用と書いてある。初めてなのはGaNでもパイオニアでもなく、「汎用充電器として単体で勝負しに来たこと」のほうだ。マーケティングとはそういうものである。
DJIは戦略を語らない。製品だけが並んでいく
ここ数年のDJIを眺めていると、ポータブル電源、ロボット掃除機、そして今回の壁挿し充電器と、ドローン以外の製品が明らかに増えている。
DJIは非上場で、経営方針をほとんど語らない会社である。「脱ドローン」も「電源メーカー化」も、外野が勝手に言っているだけだ。ただ、ポータブル電源から車載充電器、そして壁のコンセントまで「DJI Power」の名前で埋まりつつあるのを見ると、この会社が電源というインフラを面で取りに来ているようには見える。
真意はわからない。わからないが、製品ラインナップは雄弁である。
まとめ: 買うべき人、買わなくていい人
買うべき人はこうだ。
DJIのドローンやOsmoを複数持っていて、現場や旅先の充電器を1台に集約したい人。特に優先給電対象機器(Mavic 4 Pro、Air 3、Osmo Pocket系)の持ち主
充電トラブルの原因切り分けに画面付きケーブルが欲しい人(コンボが割安)
DJIのロゴが付いた製品を見境なく買ってしまう人。もう理屈ではない。安心してほしい、この充電器のロゴは光る
買わなくていい人。
DJI機器を持っていない人。AnkerかCIOのセールを待つほうが合理的である
私はというと、ガジェットポーチの中ではまだAnkerとの2台体制が続いている。優先給電の恩恵も、たぶん日常では感じない。それでも、現場で「いま何ワット出ているか」が見えて、ロゴが光っている。充電まわりの不安がひとつ減って、所有欲がすこし満たされる。8,910円の安心料としては、悪くない。
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