#281 なぜIT企業がプロ野球の球団を買収するのか?
楽天、ソフトバンク、DeNAと言えば、何が思い浮かぶだろうか。
「プロ野球」
を思い浮かべたあなた。
まさに企業の思惑通りの回答である。
もちろん私もそのひとりだ。
楽天、ソフトバンク、DeNAは企業名にすぎない。
でも、今では多くの人が、
「楽天」→「イーグルス」
「ソフトバンク」→「ホークス」
「DeNA」→「ベイスターズ」
を連想することができる。
これこそが企業の戦略である。
プロ野球チームの買収には数十億円~百億以上、運営には毎年数十億円がかかると言われている。
企業にとってプロ野球チームを買収・運営するというのは並大抵のことではない。
しかし、プロ野球チームの運営には、巨額の資金を投資するメリットがある。
もちろん、グッズ販売による利益や地域への経済効果、社会貢献といった意味合いもあるが、企業にとって一番大きなメリットは、知名度の向上である。
楽天、ソフトバンク、DeNAが球団の親会社になったのは次の年だ。
楽天=2004年
ソフトバンク=2005年
DeNA=2012年
とくに、近鉄バファローズの解散とともにプロ野球再編が叫ばれる中で楽天が新球団を設立した一連の出来事は、30代以上のプロ野球ファンにとっては鮮明に記憶に残っている大事件だ。
それぞれの企業が球団を設立・買収した時期は決して偶然ではない。
楽天は1997年に設立し、楽天市場と楽天カードの両輪を武器としてネット上での商圏を拡大していた。
2002年に楽天ポイントのサービスを開始し、今で言う「楽天経済圏」が始まろうとしていた時に、イーグルスが設立された。
ソフトバンクは、球団設立の前年である2004年に日本テレコムを子会社化し、現在では国民のインフラともなっているソフトバンクのキャリアがまさに始まろうとしていた時にホークスを買収した。
DeNAは「mobage」や「Pococha」の運営会社だ。2006年にサービスがスタートした「モバゲータウン(後のmobage)」と聞けば、20代30代にとっては「なつかしい」と感じる人は多いと思う。
2012年は、スマートフォンの普及とともにネットゲームもどんどん普及していった時期。モバゲーのことは知っていても、DeNAを知ったのはベイスターズという人も多いのではないだろうか。
楽天、ソフトバンク、DeNAの共通点は、球団の設立・買収時期が、基盤となる事業の拡大時期と重なるという点だ。
携帯やネットを使った事業は、おのずと若者層から普及がスタートする。
しかし、サービスの普及が中高年にまで広がるハードルは高い。
中高年にはいつの時代も新しいものに対する距離感を持つ人が多いからである。
そこで、事業拡大を狙う企業がプロ野球チームを持ち、チーム名に企業名を冠することで、企業に対する信頼度・知名度の向上を狙ったのである。
冒頭で述べたように、企業名=球団名が思い浮かぶ現状を考えれば、企業の戦略は成功したと言っていいだろう。
とくに、ソフトバンクホークスの本拠地、福岡ドームは、ソフトバンクによる買収とともに、
福岡 Yahoo! JAPANドーム(2005年~)
福岡 ヤフオク!ドーム(2013年~)
福岡PayPayドーム(2019年~)
と名前を変えてきた。
これらは、ソフトバンクが携帯キャリアやネット回線とともに普及を図ってきた事業の名前である。
プロ野球を通して宣伝を図っているわけだが、それぞれのサービスの普及を考えれば、その宣伝効果は計り知れないことがわかるだろう。
ちなみに、Jリーグではメルカリが鹿島アントラーズを買収したことは記憶に新しい。こちらも、メルカリという新進気鋭のサービスの知名度の向上がおもな目的と言っていいだろう。
プロスポーツチームと企業との関係は、企業の合併と買収について学ぶことができる好例である。
【目次】
【参考】
