5日間で、自分だけの一冊を完成させる
― シェリフうえまさ絵本制作教室 ―
夏休み、川南町で、小学4年生から6年生を対象とした
**「シェリフうえまさ絵本制作教室」**を開催しました。
今回参加したのは8名。
5日間をかけて、一人ひとりが自分だけの絵本制作に取り組みました。
この教室で大切にしたのは、ただ絵を描くことでも、絵本の作り方だけを教えることでもありません。
一つの目標に向かって、
自分で考える。
自分の進み具合を確認する。
必要なら修正する。
締め切りを意識する。
そして、一つの作品を最後まで完成させる。
絵本制作を通して、そんな**「一つのミッションを最後までやり遂げる経験」**をしてもらうことを、大きな軸にした教室です。
夏休みの「世界に一つだけの絵本づくり」からスタート
当初、この教室は川南町の「夏休み宿題応援教室」の一つとして募集されました。
募集チラシには、
「夏休みの自由研究第1弾 世界に一つだけの絵本を作ります!」
として掲載され、7月20日、22日、24日、27日、30日の5日間、午前9時から12時までの教室として募集されていました。対象は小学4年生から6年生、募集定員は10名でした。
また、募集時点から「どんなものを描きたいか、おおまかでいいので考えてきましょう」と案内されていました。

「あなたは、小学生絵本作家です」
実際の教室では、子どもたちを単なる「受講生」としてではなく、
一人の小学生絵本作家
として迎えました。
実際の会場は生涯学習センターでしたが、教室の中ではそこを
「アトリエ シェリフうえまさ」
として設定しました。
募集チラシ上の実会場は、生涯学習センター1階大会議室となっています。
その場所を、5日間だけの「絵本作家のアトリエ」にする。
そして子どもたちには、
自分のデビュー作を、締め切りまでに完成させる
というミッションに挑戦してもらいました。

絵本を作ることは、一つのプロジェクトを進めること
一冊の絵本は、一度絵を描けば完成するものではありません。
物語を考える。
どんな流れにするか考える。
絵を描く。
文章を考える。
見直す。
必要なら描き直す。
そして、一つの作品として仕上げる。
5日間という期限がある中では、
「今日はどこまで進んだのか」
「あと何をしなければならないのか」
「残りの時間で、どう完成させるのか」
ということも考えなければなりません。
私は、この経験そのものに大きな意味があると考えています。
締め切りを見据え、自分の進み具合を管理しながら、少しでも良いものに仕上げ、最後までミッションを遂行する。
これは、絵本作家になるためだけの経験ではありません。
これから学校生活の中でも、そして将来仕事をするときにも、一つの目標に向かって何かを完成させる場面はあります。
この教室は、絵本制作という創作活動を通して、そうした一連の流れを実際に経験するプログラムでもあります。

5日間の流れは、あらかじめ設計しました
この教室は、その日の様子を見ながら行き当たりばったりに進めたものではありません。
5日間の中で、
考える
↓
制作する
↓
見直す
↓
仕上げる
↓
完成する
↓
発表する
↓
ほかの作品を鑑賞する
という大きな流れをあらかじめ組み立てました。

8名だからできた、一人ひとりに合わせた制作
今回、実際に参加したのは8名でした。
私は、この人数だったことにも意味があったと感じています。
子どもたちは、全員同じ速度では進みません。
どんどん自分で描いていく子もいます。
絵の描き方で手が止まる子もいます。
物語のつながりで迷う子もいます。
そんなときには、一人ひとりの作品を見ながら、その子が何を描きたいのか、どんな話にしたいのかを聞きます。
その上で、
「こういう描き方もできるよ」
「ここにこんなものを加えてみたらどうだろう」
「この話なら、こんなつなげ方もできるよ」
と、その子自身の作品をできるだけ生かす形で提案しました。
逆に、自分の方法で順調に進んでいる子には、必要以上に声をかけません。
困っていれば一緒に考える。
質問されたら丁寧に答える。
自分で進められるなら任せる。
全員に同じことを教えるのではなく、一人ひとりに合わせて関わり方を変える。
これは、少人数だからこそできた、この教室の大きな特徴です。








絵本作家・イラスト制作者だからこそ伝えられること
私自身も、絵本やイラストを制作しています。
教室では、完成した作品だけではなく、自分が制作している途中の原稿なども見せながら、絵の表現方法や描き方について伝えました。
作品は、最初から完成した形で生まれるものではありません。
描いてみる。
考える。
直してみる。
また描く。
そうした過程を繰り返しながら、少しずつ形になっていきます。
私自身の制作途中のものも見てもらいながら、
「作家も最初から完成形を描いているわけではない」
という創作の過程も、子どもたちに見てもらいました。


制作する前に、まず「場を整える」
この教室では、絵を描くことだけではなく、制作に向かう姿勢も大切にしました。
教室を始める前には、場を整える。
始まりには、きちんと挨拶をする。
そして制作するときには、自分の作品に向き合う。
少し古い考え方に見えるかもしれません。
しかし私は、一つのことに集中するためには、まず自分たちが使う場所を整え、気持ちを切り替えることも大切だと考えています。
一方で、子どもたちを厳しく管理して、自由に動けないようにしたわけではありません。
トイレや水分補給などは、自分の判断で行います。
また、集中する時間だけでなく、休む時間も必要です。
教室では「チャージタイム」を設け、休憩したり、栄養を補給したりしながら制作を進めました。
集中するときは集中する。
休むときは休む。
自分でできることは、自分で判断する。
一つの仕事を最後まで続けるための時間の使い方も、教室全体の中に組み込んでいます。


安心して制作できる教室をつくる
5日間の教室を開催するにあたっては、担当者とも事前に協議を重ねました。
制作内容だけではなく、
子どもたちがどのように過ごすのか。
どのような流れで進めるのか。
集中できる環境をどう作るのか。
そして、安全面をどう考えるのか。
そうしたことも含めて教室を組み立てています。
私自身がこれまで仕事の中で身につけてきた、時間の管理、仕事の進め方、安全に対する考え方。
そして現在、個人事業として自分で仕事を組み立て、実行している経験。
そうしたものも、この絵本制作教室の運営に生かしています。
約15時間、一つの作品に向き合う
5日間。
1日約3時間。
合計すると、約15時間です。
その時間、子どもたちはスマートフォンやタブレットなどに頼るのではなく、自分の頭で考え、自分の手を動かしながら作品づくりに向き合いました。
もちろん、ずっと同じ集中力が続くわけではありません。
休んだり、考えたり、迷ったりする時間もあります。
それも含めて、一つの作品を数日間かけて作り続ける経験です。
私は、この「一つのものに長く向き合う時間」そのものにも意味があると思っています。
途中で休んだ子も含めて、全員が完成
5日間の中では、休んだ子もいました。
それぞれの進み具合にも違いがありました。
それでも最終的には、
参加した8名全員が、自分の絵本を完成させました。
これは、この教室の大きな成果です。
途中で予定どおり進まなくても、そこから自分なりに考え、必要なところを進め、最後まで完成させる。
最初は何もなかったところから、自分だけの一冊が出来上がる。
「自分で一つのものを完成させた」
というところまで、全員がたどり着きました。
作って終わりではなく、自分の作品を伝える
最終日には、ほとんどの子どもたちが、自分の作った絵本を読み聞かせる形で発表することができました。
自分の頭の中にあった物語を考え、
絵にして、
文章にして、
一冊の作品にして、
最後には自分の声で人に伝える。
そこまでが、今回の絵本制作です。

全員で、全員の作品を見る
発表だけではありません。
最後には、全員がほかの子どもたちの作品を鑑賞しました。
同じ場所で、同じ5日間を過ごしていても、出来上がる作品はまったく違います。
物語も違います。
絵も違います。
色も違います。
表現の仕方も違います。
自分の作品を完成させるだけでなく、
ほかの人が一生懸命作った作品を見る。
そこまで含めて、今回の絵本制作教室を終えました。

最後は「絵本作家」として修了
5日間の最後には、一人ひとりに修了証を渡しました。
これは単なる参加証ではありません。
自分で考え、
自分の作品に向き合い、
最後まで一つの絵本を完成させた。
その経験を形として残すための修了証です。


この教室で一番経験してほしいこと
この5日間で、何かの能力が必ず身につく、と言い切るつもりはありません。
しかし、この教室には、
自分で考える。
予定を確認する。
自分の進み具合を見る。
うまくいかなければ考え直す。
必要なときには人に聞く。
自分でできるところは自分で進める。
より良いものにするために見直す。
そして、締め切りまでに最後までやり遂げる。
そうした経験が組み込まれています。
私は、この教室で一番大切にしたいものを、
「一つのミッションを、自分で管理しながら最後まで遂行する経験」
だと考えています。
絵本は、その経験をするためのとても面白い題材です。
最後には、自分が考え、自分が描いたものが、目に見える「一冊の作品」として残ります。
そして今回、途中で休んだ子を含め、8名全員がそのゴールまで到達しました。
シェリフうえまさ絵本制作教室
主催・依頼元
川南町教育委員会 生涯学習係
開催地
川南町
会場を「アトリエ シェリフうえまさ」として設定
対象
小学4年生・5年生・6年生
参加人数
8名
実施期間
5日間
教室の内容
一人ひとりがオリジナルの絵本制作に取り組み、完成、発表、作品鑑賞までを経験する少人数制の絵本制作プログラム。

