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joshnote
夜店から #シロクマ文芸部
夜店から漂うソースの焦げる音道行く浴衣姿の若者らの怒声や嬌声から離れてひと息つくと夜風が心地よく感じられた。昼間の酷暑が嘘のようだ。思えばさんざんな一日だった。駅まで徒歩で30分もかけて歩くうちに足元がふらついて意識が朦朧としてきた。駅ビルのカフェでアイスコーヒーでも飲もうとしたが満席だ。覚悟を決めて行列の最後尾についたがさほど苦にならなかったのは切符売り場が冷えびえとしていたせいだ。
「アツ海までですね?」若い女の子に申込書を見ながら問われた。暑さにやられるにはエアコンが効き過ぎている。
「往復で頼む」
隣の客はおばさん事務員と
「仙台の先のアキボ温泉まで」
「アキウ温泉ですね、失礼致しましたお客様達筆過ぎてオホホ」なんてやり取りが聞こえた。家に帰ったら話のタネにするかな、と暑さに耐えて帰路についた。だが
「熱海はいいとして、日付を間違えてるよ」と家族に指摘される。その地名がどう呼ばれようと自分が行くわけでなかったが酷暑のなか駅まで二往復した。帰り道、家々に灯る提灯が滲んで見えた。道行く人の会話が聞こえた。
「暑い一日でしたな」
「確かに。それにしても健康保険料はなぜあんなに高いんだろう」
「そりゃあんたが稼ぐせいだろ」
この話題が難しいのはわれわれが分断されているからだ。だが現実を見れば夏は誰にとっても暑く保険料は誰にとっても高いのだった。のんびりと涼んでいる誰かがいることは予想できたがその人が幸せなのかわからない。雑談する人々と夜店から離れた。
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