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夜桜と ②
夜桜とは短い夢。晴れた春の夜に桜の名所をそぞろ歩くと
「桜はいいな」15歳の馨がつぶやいている。「ただ咲くだけで称賛され、散るだけで惜しまれるのだもの」たぶん佐倉さんのことを言っているのね。クラスメイトの佐倉さんは何パーセントか異国人で、長い脚と白い肌と彫りの深い顔立ちに茶色い瞳をめぐらせて衆目を集めたのちに、繰り返すテキスト音読・単語帳暗記・ラジオ講座録音も虚しいしどろもどろのカタカナ発音で冷や汗タラタラのあたしを尻目に、鼻歌まじりに自然なフレーズを口ずさむのだ何の努力もなしに。勝てるはずがない。この理不尽さをどうしたものか? それでも諦めずにテキストにかじりつきダイエットして化粧してスクールに通ったものか?
昼の光が散った花弁とゴミに容赦ない。やがて馨は小さな女の子を引き取ることになる。サクラと名づけ英語を習わせた。見た目の可愛い子だったから、すぐに相手が見つかり夫と二人で海外に転勤になった。
「とにかく大変なの。助けてよママ」
サクラは慣れない土地で苦労しているようだ。「急いで結婚することなかったわ。あの人見た目に騙されて何もできない女を選んだと後悔しているわ。ママに言ってもわからないよね、可愛い女の苦労なんて」
516字
シロクマ文芸部に加え近ごろタイムラインで散見する「嫉妬」と「15歳の私へ」もまじえたフィクションです。
