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人類が生み出した窒素とその問題~メキシコ海外協力隊活動記録Vol.20

新卒で環境コンサルタントとして7年勤務したのち、JICA海外協力隊(2023-4次隊)の「環境教育」隊員として、2024年5月7日からメキシコで活動しています。

また協力隊と並行して総合研究大学院大学の総合地球環境学コースに所属して、協力隊活動をなんとか研究活動に繋がらないかと模索する日々を送っています。今回は授業にて「人類が生み出した窒素とその問題」について考えてみました。


1.窒素とは

窒素は、タンパク質やDNAなどの基本構成要素であり、生命活動にとって不可欠な元素である。地球大気の78%を占めるN₂(窒素分子)は化学的に安定であるが、多くの生物はこれを直接利用できない。そのため、反応性窒素(Nr)と呼ばれる化合物、特にアンモニア(NH₃)や硝酸(NO₃⁻)などを通じて生物は窒素を取り入れている。

2.窒素の恩恵

人類は、農業の発展とともに窒素肥料の重要性を認識し、20世紀初頭にはハーバー・ボッシュ法によって大気中の窒素を人工的に固定し、大量生産が可能となった。この技術革新は、人口増加と食糧生産を支える基盤となり、農業生産の躍進「緑の革命」とも結びついた。

3.窒素利用の副作用

しかしその一方で、窒素が環境中に過剰に放出されることで、温室効果ガスの一種であるN₂O(亜酸化窒素)の増加、成層圏オゾンの破壊、大気・水質汚染、生態系の富栄養化、生物多様性の喪失など、深刻な副作用をもたらしている。
特に、化学肥料として利用された窒素のうち、実際に作物に取り込まれるのは全体の約半分程度であり、さらにその一部しか人間の体に取り込まれないという点である。家畜を経由した場合にはその効率はさらに下がり、食肉消費の増加が窒素の損失を増幅させているという現実を知り、私たちの食習慣が窒素問題と強く関係している。加えて、過剰な窒素の無駄遣いが直接どんな悪影響を及ぼしているのか見えにくいという点も非常に興味深い。

4.見えにくい影響

国をまたいだ窒素収支に関する解説では、日本は食料・飼料の自給率が低く、輸入に大きく依存しているが、その輸入の裏には輸出国で発生する窒素汚染が存在する。つまり、日本の消費行動が海外の環境負荷を引き起こしているという「見えにくい影響」があることが示された。

5.メキシコで感じる窒素の影響

現在私の活動するメキシコ領カリブ海の国立公園では、海藻サルガッサム(ホンダワラ類)の大量漂着による砂浜や水質の汚染や魚の死等が問題となっている。サルガッサムの原因は、米国ミシシッピ川と南米アマゾン川からの栄養分の供給過多といわれており、カリブ海東部の海流溜まり(サルガッソー海)にて大量繁殖し、そのサルガッサムが漂流することに起因し、カリブ海の島々やユカタン半島東部に大きな被害を与えている。現地では行政や海軍、また地域住民が一体となって除去活動を行っているが、終わりの見えない作業である。これもまた窒素の過剰供給による「見えにくい影響」の一例だと思う。しかし、被影響者と加害者が単純につながらないという点は、地球温暖化問題にも似ているものの、影響が局所的になりやすいため、「平均気温上昇+1.5℃目標」のような共通な目標を共有し難いと感じた。

写真 サルガッサムの漂着と魚の大量死(2025年5月)

6.窒素管理に向けた世界の動向

国際的な窒素管理に向けた取り組みとして、UNEP(国連環境計画)を中心とした多国間協力の必要性が説かれている。しかし、貧困対策等とのバランスを考えると取り組みへの各国の理解や舵取りが困難だろうと感じる。
総合地球環境学研究所では「Sustai-N-ableプロジェクト」において、個人の行動変容と市民の環境リテラシーの向上に取り組んでいる。

7.終わりに

窒素問題は単なる環境問題ではなく、気候変動、生物多様性、食料安全保障、人間の健康といった多分野にまたがる複雑な課題であるため、科学・政策・市民社会が連携した包括的な対応が必要である。
私もサルガッサム問題をはじめ、地元の人が理解できるテーマから窒素の問題を取り上げるで、将来の窒素の国際的な管理にむけた市民理解の促進の一助になりたい。

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