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小象と神様と仏様のお話

小象と神様と仏様のお話
2003年

昔、「ちびこぞう」と呼ばれる、とってもちびのぞうさんがいました。
かあさんも、とうさんもとても大きいのに、生まれたときから小さくてなかなか大きくなりません。
小さいからすばしっこくってチョコチョコします。けんかは弱くて時々泣かされます。そんなときは、ちびこぞうはありんこにやつあたりしてしまいます。ふだんは小さい同士で仲がよいのですが。

とうさんたちが言っているのを聞いたことがあります。「ありは、ちいさいくせに、おなかに上ってきて、おなかの柔らかい皮をかむから困る。これから赤ん坊が一杯生まれる時期だから、ありに赤ん坊のお腹をかまれないようにありを退治しとかないといけない」

ちびこぞうは、小さいのでみんなから、とてもかわいがられるんだけど、本人は不満です。「どうして僕ってこんなに小さいんだろう。神さま、僕を大きくしてください」と毎日祈ります。ぞうの神さまは、体が大きいのでめんどくさがりやです。めんどくせえなあとは思ったのですが、あんまりこぞうが熱心に頼むので答えました。
「お前、ぞうにしては小さいが、ありんこより大きいからいいではないか」
「いやです。他のぞうより小さくて恥ずかしいです」
「お前、小さいけれど、それでかわいがられるし、すばやく動けてがんばりやで、結構良いじゃないか。そのまんまでいいんでねえかい」と少しめんどくさいせいもあって、神さまらしくない言葉で答えます。
「神さま、それでも僕は大きくなりたいです。ほかのぞうと同じように大きくなりたいです。大きくなくてはぞうらしくありません」

「ぞうらしくなければ、[そう]と言ってもらったらどうだ」とつまらない冗談を言います。
「神さま、冗談はよしてください。そうさんなんていやです。どうか大きくしてください」

「そうか、そんなに言うのなら大きくしてやろう。毎日、朝、昼、晩、ご飯を食べる前に、大きくなれ、大きくなれ、大きくなれと三度となえなさい。ただしくれぐれも注意しとくが、三度より多くとなえてはならない。わかったか」

「わかりました。必ず守ります」
それから、おちびこぞうは毎日三回ご飯の前に、大きくなれを三度となえました。そうして、めでたく大きなぞうさんになりました。めでたしめでたし。


と思いきや、もっと大きくなりたいと思ったので、ある日大きくなれを四度となえてしまいました。するとどうでしょう。みるみる小さくなって、ありと同じくらいになってしまいました。ちびこぞうでなくて、ありんこぞうです。あわてて、神さまに謝ります。

「神さま、ごめんなさい。つい欲を出して、四度となえてしまいました。もう二度としませんから、もとに戻してください。お願いします」
「めんどっちょいなあ。わしゃいやじゃ」
「そんなこと言わずにお願いします。このまんまでは、ぞうに踏みつぶされてしまいます」
「お前が悪いのだから、ふみつぶされても仕方ない」
「そんなせっしょうな。ぞうの神さまじゃないですか」
「仕方ないなあ。ぞうの神さまと言われちゃ、捨てておけないか。それでは大きくしてやるが、元に戻すだけだぞ。おちびこぞうに戻してやろう。それでよいか」
「それで良いです。お願いします」

「そうか。それとこれからはありんこを踏みつぶさないことを約束しなさい。お前たちがありんこを踏みつぶすので、ありんこの神さまから、わしゃ怒られておったのじゃ。とうさんたちにもそう伝えなさい」

「判りました。よく伝えます」

「それでは、ええいい」


めでたく、ありんこぞうはおちびこぞうに戻りました。
それからは、神さまに頼らないでご飯を一杯食べて、少し大きくなりました。
もちろん、神さまから言われたことを、とうさんたちに伝えて、ありんことも仲良くなりましたとさ。


小象のお話の続き

「ちびこぞう」は、その後元気にすごしていましたが、残念ながら、あまり体が大きくなりません。一杯、ご飯を食べるし、おかずは特にとんかつが好きで栄養も充分なのですが。もちろん学校の給食も好ききらいせず残さず食べます。それでも大きくならないで、学校でも飛び抜けてちびなのです。それで、我慢できずにまたお願いすることにしました。「ぞうの神さま」はこの前失敗しているので、今度は「ぞうの仏さま」にお願いすることにしました。

「仏さま、僕を大きくしてください。毎日ご飯やとんかつを一杯食べてるし、給食も残さず食べてるのに大きくなりません。どうか大きくしてください」
ぞうの仏さまはぞうの神さまのいとこなのですが、神さまより、もっと体が大きくてめんどくさがりです。

「ちびこぞう、わしは今昼寝じゃ。お願いがあったら明日にしてくれ」と言います。

「仏さま、朝になりました。僕の体を大きくしてください」

「ちびこぞう、忘れておったが今日は歯医者に行かなくてはならない。お願いは明日にせい」

「仏さま、また朝がきました。今日こそはお願いします」

「ちびこぞう、今日は風邪気味で具合が悪い、明日にしてくれ」

「仏さま、言い訳ばかりで、僕を大きくしてくれないのですか。仏さまじゃないですか」

「むむむ。見破られたか。ほんとは、めんどくせえから、いやなんじゃ、わしは」

「仏さまは、めんどくせえじゃ困ります」

「そ、そりゃ、そうだが。だいたいお前のお願いは、ほんとに困ったお願いとも思えんから、わしゃ気合が入らんのじゃ」

「そんなこと言わずにお願いします。ぼくの場合は、ちびとはいっても飛びっきりのちびなので、なんとかもう少し大きくなりたいのです。お願いします」

「仕方ねえなあ。そんなに言うなら、大きくしてやろう。毎日、朝、昼、夜、三回、ご飯を食べ終わったら、家の便所掃除をしなさい。その時、十回「大きくなれ」と言いなさい。それを一週間続けるように。ただし、くれぐれも注意しておくが、掃除を一回でもさぼっては行けない。また十回より多く大きくなれを言ってもいけない。わかったか」

「わかりました。必ず守ります」

ちびこぞうは、毎日便所掃除を始めました。くさいし、汚いし、いやなのですが、毎日がんばります。五日目の朝は特に寒くて、雑巾を絞るときは手が痛いほどで、やめたくなりましたが、がんばりました。七日目の夜、最後の便所掃除です。自分ながらよくやったと思いながら、大きくなれを数えます。十回目まで数えた時、ふと考えました。

「待てよ。せっかくがんばったのだから、少しでも多く大きくなれるように、もう少し大きくなれをお願いしたいしてもいいかな。だけど、この前みたいによけいにお願いすると小さくなっちゃうかもしれない。どうしよう。でも、こんどは一週間もがんばったのだから、よけいにお願いしても仏さまは意地悪しないだろう。この前は一回多くお願いしたのがいけなかったのかもしれない。こんどは二回、いや念のため三回多くお願いしちゃえ」と、三回多く大きくなれをお願いしました。
するとどうでしょう、体が大きくなり始めました。ずんずんずんと大きくなって、普通の子供のぞうさんと同じくらいの大きさになりました。めでたし、めでたし。

と思ったのですが、まだまだ、ずんずんずんと体は大きくなり続けます。まず、かあさんと同じ大きさになってしまいました。母さんは言います。
「あらやだ、ちびが私と同じくらいの大きさになってしまった」
次ににとうさんとも同じ大きさになり、それからとうさんよりも大きくなりました。まだまだ大きくなるのは止まりません。そのうち東京タワーより背が高くなり、東京ドームにも入りきれないくらいの大きさになり、ついに富士山より大きくなってしまったのです。


ちびこぞうは、最初とまどいましたが、それでも大きくなって遠くまで見えるので、気持ちが良いです。それと、これまでいじめっ子だった、ぞうの子供たちが、下のほうで小さく見上げて、おどろいた顔をしているので気分が良いです。いじめっ子たちに言います。
「君たち、今まで、僕をよくもいじめてくれたな。こんどは僕が君たちをいじめちゃうぞ」とおどかしました。
子供のぞうたちはこわくなって、みんな家に逃げ帰ります。
ちびこぞうはのっしのっしと歩き回ります。なにしろ、世界中で一番大きいのですから、怖いもの知らずです。ライオンもトラもみんな、ちびこぞうにはかなわないので、ちびこぞうが通ると道を譲ります。のっしのっしのっし。気分がいいです。世界で一番です。

ちびこぞうは、そうやってえばって歩いた後、少しお腹がへって家に帰りました。ところが困ったことに体が大きすぎて家に入れません。下のほうに小さく見える家に向かって叫びました。

「かあさあん。家に入れないよう。どうしよう」
かあさんが家から出てきて、ちびこぞうを見上げます。

「あら、ちび。こんなに大きくなってしまって、しょうがないわね。ごはんを持ってきてあげるから、外でお食べ」

かあさんはごはんを持って外に出てきました。なんとちっぽけで、少ないごはんでしょう。

「母さん。こんなに少なくちゃいやだ」

「あら、なに言ってるの。今までの大きさなら充分な量よ。あなたが大きくなりすぎたのよ」と言います。
しかたがないので足りない分は、水とそこらの木の葉っぱで我慢しました。

それでもようやくお腹が一杯になったので、なにかして遊ぼうと思いました。ところが、今までの友達はちびこぞうをこわがって、一緒に遊んでくれません。前のちびこぞうの時は友達が遊んでくれない時は、ありんこと遊んだのを思い出しました。けれど、今のちびこぞうは大きくなりすぎたので、ありんこが見えません。特別大きなむしめがねで探したら、ようやくありんこが見つかりました。

「おーい。ありんこ君。僕と遊んでくれない」

「どひゃあ。ちびこぞうくん、ずいぶん大きくなっちゃったなあ。僕らありんこから見たら、見えないくらい大きいなあ。遊ぶのはいいけど、そんなに大きな君となにして遊んだらいいかな。一緒におにごっこや野球はできないし、困ったな。よい遊び方思いついたらまたおいで」と言われてしまいました。

そりゃそうです。富士山より大きなぞうさんとありんこが一緒に遊べるはずがありません。
こうして、ちびこぞうは、お腹が一杯になるほどごはんが食べられず、遊んでくれる友達もいなくて、毎日がつまらないことになってしまいましたと。
そこで、ちびこぞうは困って仏さまにお願いしました。

「仏さま。ずうずうしいお願いですが。元に戻して下さい」

「ほんとにずうずうしいやっちゃな。前に神さまにもお願いして、戻してもらって。こんどもお願いして、また戻してか。お前、恥ずかしくないか。もうあきらめて、そのまま大きいぞうでいろ」

「ほんとに、恥ずかしいですが、なんとか元に戻してください」

「お前が悪いんだから、あきらめな」

「そんな、せっしょうな。ぞうの仏さまでしょ」

「せっしょうな、と仏さまには弱いんだ。仕方ねえなあ。よし、戻してやるか。だけど、戻してやるのはお前が頼むからではないぞ。他の仏さまで、ちびこぞうを元に戻してやってくれと熱心に頼むやつがいるので、きいてやりたいのでお願いしますと言ってる仏さまがいるからじゃ。ぞうを大きくしたり、元に戻したりするのはぞうの神さまか仏さましかできないので、その仏さまはわしにお願いにきたのじゃ。よおし、ええいのえいのどっこいしょ。ちび元に戻れってえの。どんどんどん」

すると、どうでしょう。ちびこぞうは元の大きさに戻りましたと。
ちびこぞうは、もとの大きさになったので、ありんことも仲良く遊べるようになりました。ありんこと遊んでいるとき、ふと思いました。仏さまに元に戻すようお願いしてくれたのは、ありんこさんじゃないか。それで聞きました。

「ありんこさん。僕を元に戻してくれるよう頼んでくれた人がいるって仏さまがおっしゃってたんだけど、ありんこさんが頼んでくれたんですか。そうだとしたら、本当に有難う」

「頼んでくれたのは人ではなくって、ありんこでえす。だけど、お前のためじゃなくって、おれが一緒に遊びたいから、元に戻してって頼んだんだぜ。これからも仲良く遊ぼうぜ」

ありんこは、そんなふうに言いましたが、ちびこぞうには、ありんこがほんとうに、ちびこぞうのことを心配して仏さまにお願いしてくれたのが、よくわかります。なぜなら、ただ一緒に遊びたいせいだけで、めんどくさがりの仏さまが願いを聞いてくれるはずがありません。

「ありんこさん、ほんとうにありがとう」とちびこぞうは思うのでした。
それからは、ちびこぞうは、ありんこさんと一層仲良くなりましたとさ。
もちろん、ちびこぞうは、前に神さまから言われた、ありんこさんが踏み潰されないよう、助けるのをいつまでも忘れませんでした。

【Noteの構成について】
私のnoteは発信量が大変に多いのでマガジン別に整理してます。
50歳から70歳にかけて書き綴ったエッセイ集全10巻と、この航海の開始にあたって新たに書き始めた第11巻を、それぞれマガジン別に掲載しています。
また、道に迷われる方のために、特別抜粋版のマガジンを三つ用意しました。
「無還共生」https://note.com/shibata_2040/m/mdbb614a995f7:私の感覚・考え方を直接説明したものです。硬いです。眠くなります。子守歌代わりにお勧めです。
「無還共感」https://note.com/shibata_2040/m/ma45d0c73adae:私の考え方を感覚的に訴えたものです。易しくて、私はこちらの方が好きです。
「拙詩・川柳」https://note.com/shibata_2040/m/mec2c49567bab:拙いものですが、私の心の呟きです。
巻別マガジンは、自分でもうんざりするほど多量で多様です。まさに玉石混交、ほとんどが「石」ばかりかもしれませんが、お時間のある時に流し読み、飛ばし読みをしていただければ幸いです。

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