Aussieのランニングコーチと取り組んだ東京マラソン(練習メニュー公開)
こんにちは。シブヤです。
オーストラリアではShibuyaは発話しにくいため、Shibby(シビー)と呼ばれている。自己紹介や経歴は割愛する。昨年販売されたランナーズ2025年7月号を一読していただければ人となりは確認できるので是非。
2024年の4月から仕事の都合でオーストラリアでの生活が始まった。ランニングと飲酒しか趣味がない私。性懲りもなくオーストラリアでも走り続けている。オーストラリアの練習が合っていたのか、2025年の東京マラソンで4年ぶりに自己ベストを5秒短縮し、結果は2時間18分20秒。
(以前のPBは2時間18分25秒。2021年琵琶湖マラソン)
そして、2026年の東京マラソンで2時間16分46秒と自己ベストを更新した。
先程の紹介したランナーズで、私の練習内容をまとめていただいているが、2026年の東京マラソンへのアプローチは変えてみた。
オーストラリアのランニングカルチャーを知りたいという知的好奇心で、Aussieのランニングコーチをつけた。
(知的好奇心は嘘ではないが、更に英語が上達したいと思ってコーチをつけた部分もある。結果は、明々白々。マラソンほど向上していない…)
今回はその練習メニューを公開、私が感じたことを綴りたい。私は文才がない。日本語が苦手だ。最後まで稚拙な文章を堪能していただければと思う。
また、私は胸を張って断言できるが、「英語が得意ではない。」
私なりの和訳や解釈については、精査しないでください…お願い。
本題に入る前に、まず友人に言われた印象的な言葉を紹介したい。
25年の東京マラソンでベストが出た私は、7月のGold Cost marthonに向けて黙々と練習に取り組んだ。そして、結果が出なかった時に友人から言われた言葉。
”Mabye you train too hard at the moment? waht do you think is the reason”
”練習やりすぎだよ。なんでそんなにするの?”
”This is understandable, but you must put aside instant gratification."
”満足感は大事だけど、目先の満足感は脇に置かないとね。”
一定多数のランナーは直面したことのある感情だと思う。
10000mを27分台で走る選手と練習する機会もあるが、私は彼らの練習メニューを完遂できる事が多い。彼らは5 x1000m(2分40秒前後)なども行う時もあるが、稀である。(この練習はもちろん出来ない)
穏やかな国民性からくるのか、科学的なアプローチなのか分からないが、あまりハードトレーニングをやる印象がない。
前段はここまで。
昨年のクリスマス頃より、ランニングコーチをつけた。Dan(コーチ)は13分台の選手も見ている。おそらく、彼がコーチングしているランナーで一番マラソンタイムが速いのは私だったと思う。オーストラリアは日本に比べてマラソンはマイナーだ。
800m、1500m、3000SCなどのトラック競技がメインストリーム。そんな中で、どんなメニューを作るのか興味があった。

右:ランニングコーチ:Dan Breem Kamkog
練習メニュー
練習メニューは以下の通り。(PCで見ることを推奨)
コーチングを受けた期間は約80日程度。本来は90日程度受ける予定だったが、仕事の都合で12月後半から受けることになった。



練習の組み立て
トレーニング期間
・導入期 約14日 白
・鍛錬期 約40日 薄オレンジ
・調整期 約14日 水色
一週間の流れ
月曜日:AM/PM Jog
火曜日:AM Threshold/PM Threshold or Interval
水曜日:AM Jog
木曜日:Threshold ot Farletk
金曜日:Easy Jog
土曜日:Long interval
日曜日:Long Run
※LT1、Thresholdなどの意味を厳密に理解していない。
そこら辺も、言葉が違うなどの指摘は勘弁してほしい。
走行距離サマリー
12月:497km 1月:725km 2月:480km
閾値走を中心とした練習
オーストラリアのランナーは閾値走のトレーニングを特に大切にしている。
閾値走は近年注目されるようになった。理由はJakob Ingebrigtsenが実践して世界に広まったトレーニング、”二重閾値走”がキッカケではないか。
二重閾値走の詳細は昨年販売されたランナーズ2025年8月号にを一読ください。
最も重要なトレーニングは、閾値走だよ。僕はこれが1500Mからマラソンの全ての距離において最も効率な練習だと考えている。
大切なのはVO2MAXではなく、スピードの速さでもない。どれだけトレーニングキャパシティを構築できるかだ。
キャパシティは2つに別けられる。筋肉と有酸素能力の2つ。
筋能力は強度の高いトレーニングを行わなくても強くできる。
ハードセッション、イージセッションで筋肉の張りを調整し、練習を続けていくことが重要だ。
有酸素能力を鍛えるとは、より効率的に動きを求めることが重要だ。体をガソリンタンクに例えると、閾値トレーニングをしないとタンクの50%しか使えない、効率で安全な閾値を行うと75-80%と使えるようになる。
「お、なるほど!」と思って噛み砕いたが、あんまり言っている意味は分かっていなかった。英語で説明を受けた時は「OK, make sense」とか言ってその場をやり過ごした。
彼の本当に言いたかったことを、何%理解できたのか分からない。
12月30日PM:20×400mのセッション中、10本目を終えたタイミングで乳酸テストが行われた。指先から採血され、「3」と言われた。
正直、この数値が何を意味しているのかはまったく分かっていない(笑)。ただ、「13分台ランナーと同じくらい良い数値だ」と言われ、「Thank you」と返して、そのままインターバルに戻った。
この乳酸テストの結果をもとに、その後のトレーニングメニューの設定タイムが決められていった。
土曜日から火曜日にかけて高負荷のトレーニングが続くため、いわゆるノルウェー式のような「週2回の二重閾値走」は実施しなかった。練習カルチャーの違いとして感じたのは、「距離」ではなく「時間」で区切られることが多い点だ。また、距離で区切る際も、毎回正確な距離を測ることは難しく、ペースや距離はGPSウォッチを参考にした。
正直、私は最初これがあまり好きではなかった。腕時計ごとに誤差があって、「数秒ズレるやん
」と思いながら走っていたし、実際だいたいズレる。でも、いつの間にか「まあそんなもんでいいか」と思えるようになっていた。
地味に心身を消耗する二重閾値走
鍛錬期は、常に疲労感があった。二重閾値走で大変だったのは、当たり前のことだが、1日に2回、練習時間を確保することだった。1回の練習には、だいたい80〜90分ほど必要だった。WU/CDは15分や20分などと指示されていたが、時間がない時は、もちろん無視していた。(ごめん、Dan)
Danからは、LT1やThresholdの練習では「スーパーシューズ(厚底)は使うな」と言われていた。私は、ジャンケンで勝って(負けて)購入したAdidas EVO SLを使用していた。練習メニューを見て、「設定タイムがそんなに速くないな」と感じた人も多いと思う。私も最初は「余裕だろうな」と思いながら、練習メニューを眺めていた。
母なる大陸オーストラリア。世界で6番目に大きい国であり、東西の長さは月の直径よりも大きい。
月の直径:約3450km
オーストラリアの東西:約4000km
話を戻すと、そんな広大で自然豊かなオーストラリアの練習環境は基本”芝/クロカン”で行われる。至る所に公園が存在し、走る場所に事欠をかかない。
また、日本のように簡単に使える陸上競技場が少ない
ロードに関して言うと、シドニーはまさに「坂、坂、坂」。一つ越えても、また次の坂が現れる。イメージとしては、代々木公園の西門からの上り坂が何度も続く感じだ。さらに信号も多い。そのため、公園をぐるぐる回っている方が練習しやすい。結果的に、芝の上を走ることが多くなる。
厚底使用不可、芝、そして寝起きという条件での3×10分(3:25〜3:20)は、こなせないことはないが、決して楽なメニューではなかった。正直、この環境がパフォーマンスの向上につながったと思っている。

1月20日PM:10 x 600m(78s)+10 x 400m(76-74s) R45s and 30s sanding
これだけ見るとそこまで大変そうには思えない。実際も極端にきついわけでもなかった(とはいえ気温は35℃ほどあったが…)。
従来、二重閾値走の狙いはケガを避けながらトレーニング量を確保することにある。火曜日は基本的に30km近い練習をこなし、さらに翌朝の水曜日には仕事前に70〜80分のジョグを入れる必要があった。
メニューを見れば分かる通り、鍛錬期は休みが一日もなかった。
Danが鬼に見えた。
私の知っている頑張りすぎないオーストラリアのメニューはどこへ?
設定が曖昧なLong interval
週末は「Bay Run」と呼ばれる、1周7〜10kmほどのコースでインターバルやLong runを行った。距離がしっかり取れる、比較的フラットなロードコースだ。オーストラリアでは、日本のように20〜30kmを一定ペースで走り続ける練習は、一度も見たことがない。ほとんどが分割されたインターバル形式だ。おそらくこれは国民性によるもので、単調なペースで走り続けると飽きてしまうのだと思う。実際、変化走やインターバルは“On”と“Off”を作れるため、集中力を保ちやすい。
土曜日は、4×4kmや4×7kmといった、長めのインターバルが中心だった。シドニーには、代々木公園や駒沢公園、長居公園、大濠公園のような完全にフラットなコースは存在しない。日本から来た友人に「フラットなコースだよ」と説明して30km走ったが、ワークアウト後には「全然平坦じゃないし、コースもクネクネしすぎ」と酷評された(笑)。
そんなコースで、友人と一緒に練習したり、コーチがバイクでペースメイクをしながらトレーニングを行った。特徴的だったのは、レースより速いペースで練習することがほとんどなかった点だ。前述の通り、距離の計測はGPS参考にしている。友人と一緒に走った際、同じ7km地点でも、私と友人の記録で10秒ほどのズレがあった。どちらのペースが正しいのか分からないし、そもそも自分がどのペースで走っていたのかも曖昧だった。
登りでは自然とペースが落ち、下りでは上がる。そんな感覚に任せながら、なんとなく走っていた。(もう、日本でペーサーはできない。)
大きな声では言えないが、あたかもすべての練習をやり切ったかのようにここまで綴っているが、実際には3×7kmも4×7kmも、どちらもコンプリートできていない。日本にいた頃は、3分15秒ペースであれば分割せずに走れていた。そう考えると、1回の練習における出力は、当時よりも落ちていたように思う。それでも、不思議と「まあ、こんなものだろう」という満足感があった。そして、周りの友人たちは皆、なぜか揃って自信に満ちていた。
ここで3分15秒で走れれば、東京は3分10秒くらいだろ!

東京マラソン2026 2時間15分03秒
3000m 7分55秒
3000SC 8分30秒
800m 1分49秒
少し話は逸れるが、このトラックではよくインターバルを行っていた。ここで12×1kmなどのメニューを、Jamesと一緒にこなした。トラックには、筋骨隆々の若者たちが上裸で現れ、とんでもないスピードで走っている。800mを1分47〜49秒ほどで走る選手も何人かいた気がする。さすがだ……。
気温40℃。灼熱の150min long run
Long run=距離走と解釈すると少し意味合いが異なる。日本で言う距離走は、比較的速いペースで走ることが多い。しかし、Long runはゾーン3レベルで行い、平均4分20-10秒程度で実施した。
4分40-50秒程度から始まり、ラストは4分1桁程度までペースアップする。
このトレーニングが一番嫌いだった。150分。フルマラソンよりも長い。しかも、オーストラリアは真夏だ。暑い日は40℃を超えることも珍しくない。世界一、皮膚がんの発症率が高い国といえば――オーストラリア。男性もスキンケアをしない時代は、大政奉還と共に終焉となった。
(すでに十分黒いが)それでも日焼けを避けたい私は、ロングタイツにロングスリーブで必ず走っていた。Aussieたちからは、完全に頭のおかしいやつだと思われていたはずだ。
練習中も「Hot, warm」と連呼していたし、私の格好は“Thermal Style(サーマルスタイル)”と呼ばれていた。しかも、周りの友人たちは長くても2時間ほどで切り上げてしまう。残りの30分は、暑さと退屈に耐えながら、ほぼ発狂状態で走っていた。

しかし、この150分ジョグは想像以上に効果があったと感じている。今回、27km地点で集団から離れてしまったが、その後も大きくペースを落とすことなく、35kmまで粘ることができたのは、この練習のおかげだと思う。筋肉や代謝が「150分動き続けること」に適応してきたことで、レース後半でも粘り続けることができた。
感想と今後
オーストラリアのトレーニングは「腹八分目」と思っていたが、今回コーチングを受けてみて、その印象は大きく変わった。正直に言えば、普通にきつかった。オールアウトするような練習こそなかったものの、鍛錬期は常に体が重く、眠気と戦っていた。
日本と練習を比較して、時間で区切る。クロカンが多い。ハードトレーニングが少ない。などあるが、大きな差とは言えないかもしれない。
ただ、私にはフィットしていたように思う。今では時間で区切る練習は、一人でも行うし、トレッドミル使用時には使いやすい。
オーストラリアに引っ越してから、日本のハイレベルな市民ランナー以上の実力を持つランナーと、一緒に練習する機会が増えた。シドニーの人口は約600万人。東京の半分にも満たない。さらに、日本のような実業団制度はなく、いわゆるプロランナーの数も非常に限られている。おそらく、オーストラリア全体でも30人に満たないのではないかと思う(根拠はないが)。
その結果、本来であれば実業団レベルにいるような選手たちも、市民ランナーとして日常的に走っている。仕事終わりに速いランナーたちが集まり、自然と高いレベルの練習が行われ、切磋琢磨する環境ができている。私自身も、大会や練習会を通じてそうしたランナーたちと知り合い。今は定期的に一緒に練習を行っている。特別な参加資格があるわけでもなく、遅いからといって非難されることもない。この環境は純粋に楽しいし、非常に刺激的だ。そして何より、彼らが取り組んでいる練習が、私にも実践できる内容であることが、さらに興味深い。
2月中旬に5000mを走った。結果は14分28秒。このタイムで走れたのがいつ以来なのか、自分でも覚えていない。ラップは、3:00 – 2:48 – 2:58 – 3:00 – 2:44。いかにも海外レースらしい展開だ。5000mの練習はほとんどしていなかったにもかかわらず、このレベルで走れたことには正直驚いた。直前に行った6×1000m(変化走)も、実にユニークな内容だった。
オーストラリアは南半球のため、これからマラソンシーズンに入る。次はシドニーマラソン。その前に、酔った勢いでエントリーしてしまったUTA100kmが待っている。100kmはもちろん未経験で、トレイルも初めてだ。正直、走り切れるのかかなり不安である。
Danには「何を目指しているんだ?」と言われたが、人生を楽しめればそれでいい、という気持ちで走っている。
ちなみに、同大会では160kmのカテゴリーもあり、エントリー費はAUD1,000(日本円で11万円超)。距離も金額も、正気の沙汰とは思えない。実際にコースの一部を走ったが、二度と走りたくない。いや、歩きたくもない。ほとんど登山だ。
6月からは、再びシドニーマラソンに向けてコーチングを受ける予定だ。シドニーマラソンが終われば、次はトラックシーズンに入る。その内容も、いずれどこかで書いてみたい。需要があれば。
次回は「UTAを走ってみた」になるかもしれない。
ありがとうございました。
