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【ハーブ天然ものがたり】マジョラム/オレガノ|混沌の海を鎮める女神アシュタルトの翼と系譜

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【ハーブ天然ものがたり】マジョラム/オレガノ|山の喜び|海神の恵み|大女神から聖母マリアへの系譜



誰とも似て非なる「山の喜び」(マジョラムとオレガノの植物学)


精油として流通市場にのったマジョラムは、
学名 Origanum majorana オリガナム・マヨラナ、
シソ科ハナハッカ属に分類されるハーブのひとつです。
ハナハッカ属には有用で香り良いハーブが数種あるので、マジョラムは
スイート・マジョラム、ノーテッド・マジョラムと呼び区別されています。

ノーテッド(knotted marjoram)の呼び名は、花序が結び目のように見えることからついた愛称です。
小さな白い花がこんもりした結び目のようにみえるマジョラムで花冠をつくり、新婚カップルの頭を飾る風習は、ギリシャを中心に長いあいだ伝承されてきました。その一方で、ワイルド・マジョラム(オレガノ)を含めたハナハッカ属のハーブは、弔いのため墓地に植えられ、亡くなった人の魂に平安があるように、祈りとともに捧げられるハーブでもあります。

オレガノはブーケガルニやトマトソースの香りづけでおなじみですが、マジョラムより辛味の効いた香りがします。
和名でハナハッカ、別名ワイルド・マジョラム、またはコモン・マジョラムと呼ばれ、キッチンハーブとして世界中でポピュラーになりました。

もともとオレガノはイタリア料理の定番香味素材ですが、メキシコ料理のチリソースにも使われますし、お茶として飲用したり、ポプリやドライフラワーに多用されています。

オレガノの花


ほかにポット・マジョラムと呼ばれる種は、
別名フランス・マヨナラ、若葉のころの金色がかった緑の葉が特徴的です。
成長した葉も金色がかっているのはゴールデン・マジョラム、
寒さに強い半耐寒性のウインター・マジョラム、
小さな葉が巻きつくようにこんもり繁るクリンクルリーフ、
濃いピンクの花をつけ刺激の強い辛味をもつコンパクトピンクなど、
ヨーロッパ、地中海沿岸、トルコから広がったオリガナム(ハナハッカ)属は多様性を保持したまま世界中で栽培されています。

園芸種でよく見かけるようになったイタリアン・マジョラムは、スイート・マジョラムとオレガノの交配種で、立ち姿はマジョラムに似ています。

学名のオリガナムは「山の喜び・オロスガノス」を意味するギリシャ語です。オリガナム(ハナハッカ)属が山の斜面をおおい、空気が香りに満ちている様子を表現したものといわれています。

タイム、ミント、セージ、ローズマリーを合わせて、さらにほんのりと甘さを足したようなマジョラムの香りは、よく知っているようで、誰とも何とも似て非なる、唯一無二の芳香です。

山を御神体とする思想は、古い時代から世界共通の認識ですが、斜面をおおうハナハッカ属は大気を神聖な芳香で満たし、山神をヴェールで包みこんで花のノーテッド(結び目)をちりばめ、大地をお守りする役目を担っているとくべつなハーブなのでは、と想像しています。

地表に生きるすべての生命種を生み育てるために、滋養となる食物を生み出す豊穣神にお仕えする、誠実で真摯な小天使たちなのではなかろうか、と。


海から生まれた泡と、美の女神のヴェール


山の喜びと称されるマジョラムですが、そのハーブの特別な芳香は、海から生まれた女神アフロディテによってつくられたと伝承されてきました。

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海の星から聖母へ、女神たちがつないだ「豊穣のバトン」

マジョラムの比類なき香りを生みだした女神アフロディテには、さらに古い歴史の地層が眠っています。

起源を辿れば、古代オリエントの地母神であり、金星の象徴でもあるイシュタルやアシュタルトへと系譜をたどることができます。

面白いことに、中世の聖歌で聖母マリアを称える「マリス・ステラ(海の星)」という言葉は、「金星」を指すという説があります。

イシュタル ➔ アシュタルト(金星・地母神) ➔ アフロディテ(海の泡から誕生) ➔ 聖母マリア(海の星)

時代とともに名前や姿を変えながらも、彼女たちは一貫して「生命を生み出す豊かな力」を地上に届け続けてきました。
マジョラムのどこか温かく甘い香りは、この長い女神たちの母性的なリレーが、今も私たちの足元に届いている証なのかもしれません。

大女神のイシュタル(イナンナ)から聖母マリアへ。
総合的な女神力を光と影に分離して、圧倒的な光と、徹底的な影をつくりあげてきた歴史があったんだなぁと、あらためて窺い知ることができます。

古い系譜の女神イシュタルは人類史最古の物語といわれるギルガメシュ叙事詩に登場する大女神です。(イシュタルはアッカド語、シュメール語ではイナンナ)

BC1800年頃の「バーニーの浮彫」はイシュタルを示すと考えられており、翼と鉤爪をもち、ライオンとフクロウを従える姿はリリスやエレシュキガルともいわれます。

 「夜の女王」バーニーのレリーフ
「エレシュキガル(メソポタミア神話・冥府の女神)
またはイシュタルのいずれかの可能性のある彫刻」と説明文にあります。


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魔術から化粧品、厨房から医薬まで。所感まじりに綴る、ハーブ今昔物語。【ハーブ天然ものがたり】は有料テキストとして購入頂きましたことを受けて…

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