「水たまり」 #シロクマ文芸部
水たまりの分類学的考察
――都市型水系微小生態の基礎的研究に向けて――
要旨
本稿は、日常的に出現する「水たまり」について、形態と寿命を体系的に分類することを目的とする。先行研究はほぼ皆無であり、本稿は基礎的マッピングの試みである。
はじめに
水たまりは降雨後に路面の凹部へ一時的に形成される水域である。しかし体系的な分類は、筆者の知る限り存在しない。本稿では通勤路の定点観察に基づき、四類型に分類する。
分類
2.1 円形安定型
浅い窪地にでき、輪郭が円形を保つ個体群。表面張力が優勢で、風による変化が少ない。観察対象の約四十パーセントがこの型で、性質は温和、初心者にも踏破しやすい。
2.2 分岐拡張型
複数の窪地が連結し、川の支流のような形状を呈する個体群。視覚的に把握しやすいため、実際の被害は比較的少ないと推察される。
2.3 偽装深度型
外見上は浅く見えるが、実際には想定を上回る深度を持つ危険個体群。縁部が不規則な場合に多く、被験者の右足は複数回にわたり浸水被害を報告している。
2.4 一夜性儚型
夜間の降雨で形成され、翌朝の日照で急速に消失する個体群。観察機会そのものが希少であり、発見は早起きという行動変数に強く依存する。
消失過程
いずれの型も縁部からの漸進的乾燥が多いが、風や日照、路面材質によって速度に差が見られた。アスファルト上の個体は特に消失が速い傾向がある(統計的検定は未実施)。
議論
本研究の限界として、観察者が単独であり、観察意欲が天候と本人の機嫌に依存する点が挙げられる。また被験者自身が踏み込むことで生態系に干渉している可能性も否定できない。今後は複数観察者による再現性の検証、および長靴という防御装備下での接触実験が望まれる。
結論
水たまりは、われわれの日常空間において最も無視されている水系である。その分類と観察は、実利をほぼ生まないものの、雨上がりの通勤路を歩く時間を、いくらか豊かなものに変える可能性を有している。本稿がその一助となれば幸いである。
利益相反:著者は本研究において、右足の靴下を犠牲にしている。

