「夜店から」 #シロクマ文芸部
こぜにを
にぎっていた。
ちいさなてのなかで、
あせばんでいた。
よみせのあかりは
ほしよりちかく、
ひとのこえは
かわのながれのようだった。
きんぎょはゆれ、
りんごあめはあかく、
ふうりんは
だれかのなつを
そっとならしていた。
なにをかおうか。
まようじかんが
いちばんしあわせだったことを、
あのころのわたしは
しらなかった。
やがてあかりはきえ、
ひとはかえり、
ゆかたのすそだけが
くらやみにゆれていた。
いまでもなつのよる、
ふとよみせをみると、
あのちいさなてを
さがしてしまう。
あのてには、
こぜにだけではなく、
もうあえないひととのじかんも、
かえらないひびも、
みらいというゆめも、
みんな
にぎられていたのだ。
だからいまも、
なつになると
てのひらをそっとにぎる。
あのひのこぜにが、
まだそこにあるようなきがして。
