「2024年度(令和6年)マサバ太平洋系群の資源評価結果の妥当性について」、水産研究教育機構から回答をいただきました

2025年10月11日のnoteの記事「2024年度(令和6年)マサバ太平洋系群の資源評価結果の妥当性について [1] 」では、水産研究教育機構(水研機構)のマサバ太平洋系群の担当者に対して10項目の質問事項を記載しています。上記の記事を公開後、直ちに水研機構に記事をお送りし、上記質問事項への回答をお願いしたところ、水研機構から2025年11月28日に、回答をお送りいただきました。この記事は、水研機構からいただいた回答に対する私のコメントを記載したものです。なお、水研機構の回答は、水研機構のWebページ「寄せされた質問と回答  技術的な質問 [2] 」に掲載されておりますが、読者の皆様の利便性を考慮して、許可を頂いて本記事の付録としても掲載しました。

1. マサバ太平洋系群にMSY理論は適用できるか?

 上記 [1] の10項目の質問のうち、「鍵となる質問」は、質問⑨と⑩(付録参照)になります。すなわち、「密度効果が認められないマサバ太平洋系群に対してMSY理論は適用できるのか?」という質問です。この質問に対する可能な回答としては、以下の3つしかないと私は思います。

  1.   Yes.   密度効果が認められないマサバ太平洋系群に対してMSY理論は適用できる。

  2.   Yes.   マサバ太平洋系群の場合、密度効果が認められないとは言えないので、MSY理論が適用できないとは言えない。すなわち、マサバ太平洋系群に対してMSY理論の適用は可能である。

  3.   No.   密度効果が認められないマサバ太平洋系群に対してMSY理論は適用できない。

 しかし、さすがに、水産資源学を多少ともご存知の方であれば(1)を回答することはできないだろうと思います。(2)については、水研機構が、令和 6(2024)年度マサバ太平洋系群の管理基準値等に関する研究機関会議資料 [3] の24ページ、補足資料 1 の「1A ルールの検討」において、「本資源では再生産関係における密度効果が明瞭ではなく、・・・」と明記されており、水研機構も「マサバ太平洋系群の再生産関係に対して密度効果が検出できないこと」を認めています。従って、(2)を主張することも不可能ということになります。
 
 そうすると、回答としては(3)しかないことになるのですが、上記の質問に対する水研機構から回答は、「MSY水準を目指した資源管理を行うことが基本とされているため、MSYベースの資源評価を行っており・・・」というものでした。

 この回答は、上記⑨と⑩の質問に答えたものではなく、「MSY水準を目指した資源管理を行うことが基本とされている」ので、「マサバ太平洋系群に対して、MSYベースの資源評価を行った」という実際の経緯を述べているだけで、「マサバ太平洋系群に対して、MSYベースの資源評価を行うことの科学的正当性について、何らかの弁明をしているわけではない」ことは明らかです。
 
 すなわち、この回答は、実質的には「マサバ太平洋系群に対して、MSY理論を適用することはできない、と言うことを認めていることになる」と言ってもいいと思います。

 さらに、記事 [1] の10項目の質問事項の⑨と⑩以外の質問は、主に、「1Aルールから1Bルールに変更したことの妥当性」についての質問が中心的な内容になっています。

 MSY理論に基づいて資源管理を実施する場合には、MSYを達成するための漁獲係数(Fmsy)を推定しなければなりませんが、1Aルールとはその値を再生産関係から求める方法であり、1Bルールとはその値を「%SPR」から求める方法のことです(「%SPR」については、上記の記事 [1] で詳しく説明していますので、適宜ご参照下さい)。

 従って、MSY理論が適用できない資源に対しては、「1Aルールから1Bルールに変更したことの妥当性」などについて議論する必要はない、ということになります。

 すなわち、上記の議論から導かれる結論は、「マサバ太平洋系群に対して、MSY理論に基づく資源管理を適用することはできず、従って、MSY理論に基づいて導き出された資源管理の提案は、科学的に妥当なものではない」ということになります。

2. 上記以外の水研機構からの回答の矛盾点

 上記の議論以外でも、いただいた回答には、論理的な矛盾点が多々ありましたので、以下に指摘しておきたいと思います。

 ②の回答で、「1Aルールのもとで求めたホッケースティック(HS)型再生産曲線に基づき、管理基準値の検討を行いましたが・・・」とありますが、記事 [1] の本文中にも記載したように、「1Aルールのもとで求めたHS型再生産曲線」という表現自体が、「意図的に読み手を誤解させるための不適切な表現になっている」と思います。

図1 再生産関係の推定と1Aルールを用いるか1Bルールを用いるかは無関係

 記事 [1] の図1に示したように、HS型再生産曲線は1Aルール、1Bルールに関係なく求まるはずであり、1Aルールのもとで求めたHS型再生産曲線とか、1Bルールのもとで求めたHS型再生産曲線という表現は誤りであり、正しくありません。

 また、⑤の回答では、「再生産関係に基づいて頑健な管理基準値を求めることができないと判断したため、1Bルールにおいて再生産関係を適用することが適切ではないと考えました。」とありますが、水研機構の資料 [3] の54ぺージの図13に、本記事の図2に示したHSモデルが表示されており、次のような説明がなされています。

図2 水研機構の資料 [3] の54ぺージに掲載されている図13


 「本系群における1Bルールでは、加入量は親魚量によらず、平均的には過去全期間の幾何平均値(青の太線、49.6億尾)とするが、過去最低水準(4.2万トン)以下では、親魚量が0の時に加入量も0となるように直線的に減少する仮定を用いた」

 しかし、これは、上記の「1Bルールにおいては再生産関係は適用しない」という説明と矛盾するのではないでしょうか? まさか「図2の青の太線は再生産関係ではない」などと言うつもりはないとは思いますが・・・。

 また、質問③の回答として、以下のような記述がありました。

 「再生産関係の適用が適当でないと判断した結果、1Bルールにおける将来予測を行うため、再生産関係(すなわち親魚量と加入量との関係が関数で示された関係)を用いない、ということとなるので、将来予測における加入量には、親魚量によらない仮定を適用することとなります。」

 これも、全く意味不明です。「再生産関係(すなわち親魚量と加入量との関係が関数で示された関係)を用いない」と言いながら、図2に示したHSモデルを用いているのは矛盾ではないでしょうか?

 さらに、「将来予測における加入量には、親魚量によらない仮定を適用することとなります」とありますが、「親魚量によらない仮定」とは「加入は一定という仮定」ですから、「加入が一定」という仮定もまた、その妥当性はともかくとして、「親魚量と加入量との関係が関数で示された  " 立派な "  再生産関係である」と思います。

 また、⑨と⑩に以下のような意味不明の説明がありました。

 「順応的管理の考え方でHSモデルを適用することで、MSY水準を目指すことを基本としている資源管理に対応する現実的な目標管理基準値の算定が可能となっていると考えています」

 これは、「順応的管理」という用語が(意図的に?)誤って使用されていると思います。「順応的管理」とは、新しいデータが加わった場合に、それに応じてモデルや推定値を更新していく方法のことをいいます。特に、新しい概念というわけではなく、通常我々が行っていることを表現した用語にすぎません。

 現在は、密度効果を示すデータが得られていないにも関わらず、将来、密度効果を示すデータが得られる可能性を期待してHSモデルを使っておく、などという「屁理屈」を正当化するために「順応的管理」という用語が利用されたのでは、「順応的管理」が " かわいそう "  です。

 現時点で得られているデータに基づいて、現時点では直線モデルを用い、将来、密度効果を示すデータが得られた段階で、HSモデルに更新すると言うのであれば、順応的管理と言ってもいいかも知れませんが・・・。

 勝手に自分たちに都合のいいデータが将来得られるであろうということを期待して、未だそのようなデータが得られていない段階で、都合のいいモデルを恣意的に使用する、というようなことは決して行ってはなりません。

3.おわりに

 以上、いろいろ述べましたが、回答を下さった水研機構の方々に対しては、お忙しい中を、私の質問に対して、丁寧なご回答を作成・送付していただいたにも関わらず、辛口のコメントばかりを申し上げることになってしまい、大変、心苦しく思ております。ただ、これらの質問やコメントは日本の資源管理がよりよくなってほしいという一念によるものであり、他意はございませんので、ご容赦いただきたいと思います。

4.引用文献

(1)2024年度(令和6年度)マサバ太平洋系群の資源評価結果の妥当性について|櫻本和美
(2)「寄せされた質問と回答 技術的な質問」https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assessment_meeting/faq/technical_question.html

(3)水産研究・教育機構 マサバ太平洋系群令和6年度資源評価結果. 第4回資源管理方針に関する検討会(マサバ・ゴマサバ太平洋系群). 2025年2月5日.  PowerPoint プレゼンテーション

5.付録 水研機構からの回答を転載します。

① 生物特性値の将来予測が困難であるという理由から、「1Aルール」から「1Bルール」に変更した、ということですが、生物特性値の将来予測が困難であり、その影響が大きいことは、「1Aルール」でも「1Bルール」でも、同じであると思いますが、それについては、どのようにお考えですか?

(回答)ご指摘のとおり、1Aルールでも1Bルールでも生物特性値の違いは管理基準値や将来予測に影響があります。しかし、1Aルールのもとでは、生物特性値の変化の影響は、目標管理基準値(SBmsy)に対して小さく、漁獲圧(Fmsy)や漁獲量(MSY)に対して大きく、すなわち許容される漁獲量が大きく変化しやすいという問題がありました(FRA-SA2024-BPR02-01[あか1]  補足資料1)。一方、1Bルールのもとでは、生物特性値の変化によって、目標管理基準値(SBmsyの代替値)が柔軟に変化し、漁獲圧(Fmsyの代替値)や漁獲量(MSY)の変化は1Aルールよりは相対的に小さく、許容される漁獲量への影響がより小さいという特徴がありました(FRA-SA2024-BPR02-01 補足資料2)。将来の生物特性の予測が困難であり、目標の基準となる10年後まで生物特性値が一定であるとは考えにくいことから、生物特性値の変化に対してより安定的な漁獲管理が可能となることが期待される1Bルールを採用するのが妥当であると判断しました。

② 「1Aルール」でも「1Bルール」でも、水研機構の資料 [4] の24ぺージの図22に示されているSAMによって推定されたHSモデルを使用すべきであると思いますが、なぜ、「1Bルール」を使用する場合は、上記のHSモデルは使えないのですか? その科学的根拠をお示しください。

(回答)マサバ太平洋系群では、長期にわたる親子関係の情報があるため、再生産関係を求めることは可能です。このため、1Aルールのもとで求めたHS型再生産曲線に基づき、管理基準値の検討を行いましたが、①での回答の通り、将来の生物特性の不確実性が大きく、1Aルールのもとでは頑健な管理基準値の推定、将来予測および漁獲管理規則の設定が困難であると判断しました(FRA-SA2024-BPR02-01[あか2]  補足資料1)。

一方、1Bルールは、「再生産関係に基づいた MSY 管理基準値の精度が低い、または頑健でないと考えられる一方で、他の代替となる生物学的管理基準値が計算可能な場合には、特定の%SPR に準ずる F(F%SPR)をもとにした生物学的管理基準値を Fmsyの代替値として用い,それをもとに目標管理基準値を提案する」というルールです(FRA-SA2024-ABCWG02-01[あか3] )。再生産関係の適用が妥当と判断した資源では、再生産関係から求められる管理基準値を採用しますが(1Aルール)、マサバ太平洋系群では、上述のような判断から、1Aルールの適用が困難と判断し再生産関係に基づかず管理基準値を求める1Bルールを採用しているため、1Aルールで求めたHS型再生産曲線を1Bルールにおける将来予測に適用しませんでした。なお、1Bルールにおける管理を実施しつつ、実際には1Aルールで求めた再生産関係に基づく加入があった場合についても試算をしており、この場合は推奨される漁獲量がやや低くなりました(FRA-SA2024-BRP02-01 補足資料4)。

③ 令和6(2024)年度マサバ太平洋系群の管理基準値等に関する研究機関会議資料 [5]の 43ページに、「1Bルールの基本設定である加入量が親魚量によらないという仮定に基づき」と記述されていますが、なぜ、「1Bルールの基本設定」では「加入量が親魚量によらないという仮定が必要」なのでしょうか?その、科学的根拠をお示し下さい。

(回答)②でも回答したとおり、1Bルールは、「再生産関係に基づいた MSY 管理基準値の精度が低い、または頑健でないと考えられる一方で、他の代替となる生物学的管理基準値が計算可能な場合には、特定の%SPR に準ずる F(F%SPR)をもとにした生物学的管理基準値を Fmsyの代替値として用い,それをもとに目標管理基準値を提案する」というルールです(FRA-SA2024-ABCWG02-01[あか4] )。再生産関係の適用が適当でないと判断した結果、1Bルールにおける将来予測を行うため、再生産関係(すなわち親魚量と加入量との関係が関数で示された関係)を用いない、ということとなるので、将来予測における加入量には、親魚量によらない仮定を適用することとなります。

④ 水研機構の資料 [4] の図27の説明には「1Bルールの加入の仮定を過去の親子関係に重ねた場合」という記述がありますが、これは、「MSYやMSY親魚量水準を計算する時に必要となる再生産モデルは、過去の親子関係と乖離していても問題ではない」という意味でしょうか? 本来であれば、過去の親子関係を用いて、MSYやMSY親魚量水準を計算するのが普通であると思いますが、これについて、どのようにお考えですか?

(回答)ご指摘のとおり、1Aルールに基づき、過去の親子関係を用いて、MSYや管理基準値を求めるのが理想的です。しかし、マサバ太平洋系群では、ご質問の②および③でご回答した通り、将来の生物特性値が不明であり、また生物特性値の変化があってもより安定的な管理が期待されることから、1Bルールを採用しました。このため、親子関係は用いていないものの、仮に過去の親子関係に1Bルールにおける加入の仮定を重ねるとどうなるかを示したのが水研機構の資料 [4] の図27(FRA-SA2024-BRP02-01[あか5]  図3)です。直近では親魚量が14.4万トンと低い状況にあり、1Bルールにおける加入の仮定は、過去に観測された同水準の親魚量のときに観察された加入量よりも多い加入を見込んでしまう場合が多いことを表現しました。このため、本ルールに基づく場合は、ある程度控えめな漁獲圧(β=0.7)が推奨されると述べています。

⑤ 過去の親子関係には、明らかな直線関係があるにも関わらず、「1Bルール」を用いるという理由だけで、使用するHSモデルは、「0歳魚尾数が親魚量に関わらず一定」という仮定を置かなければならない理由は何でしょうか? その科学的根拠をお示しください。

(回答)ご質問②および③でご回答した通り、再生産関係に基づいて頑健な管理基準値を求めることができないと判断したため、1Bルールにおいて再生産関係を適用することが適切ではないと考えました。ご指摘の通り、本資源の親子関係には一見すると明確な直線関係が見られますが、親魚量や加入量が高い(低い)時期は継続的に起こりますので、独立な点とは見なせません。親魚量から加入量を求める再生産関係を使用した場合と、今回使用した、前年と似たような加入量が期待されるとした場合で、データへの当てはまりや予測力はほとんど差がありませんでした。そのため、見た目ほど親子関係は明らかではないと考えられます。再生産関係を用いないで将来予測を行う際に、某かの加入の仮定が必要となりますが、代表的なものは近年の加入のレベルが継続するとの仮定や、漁業加入がある年齢群以上である資源で、調査船調査等による資源加入前の若齢群の指標から推定される加入量を充てるものがあります。マサバ太平洋系群では、0歳魚、1歳魚の指標値を調査船調査から得ていますが、0歳時点から漁業資源に加入しているため、前述の後者の方法での十分な年数の加入の予測ができません。一方、加入量の推移を見ると、最近5~10年では、長期的に見ても比較的高い加入の年が多かったところ、直近の2024年では加入量が大きく減少していました。このため、将来予測にあたって、近年5~10年程度の平均的な加入を想定すると過大な見積もりになる可能性が高いとの判断から、長期的には全期間の平均的な加入を想定しつつ、短期的には直近と似た加入量になると予測する方がより妥当であると考えました。

⑥ 図2に示したHSモデルの説明で、「全年の0歳魚尾数尾数の幾何平均49.6億尾で一定とする」と記述されていますが、2024年度の評価結果に記載されている0歳魚尾数の全年の幾何平均値は33.3億尾となり、49.6億尾と異なっていますが、これは、どのように理解すればいいのでしょうか?

(回答)推定された0歳魚の資源尾数の幾何平均(約33億尾)と、使用している加入量の49.6億尾がずれる理由は2つあります。

まず、ここで求めている幾何平均は、将来にわたってより長いスパンを考えたときの加入量の長期的な幾何平均に相当するものであり、推定された0歳魚資源尾数(加入尾数)の幾何平均ではありません。長期平均を求める際には、一次の自己相関を考慮しています。つまり、ある年の加入量が高ければ(低ければ)、翌年の加入量も高い(低い)という、隣り合う年の間の相関が考慮されています。このため、すべての年が独立ではなくなるため、単純な幾何平均とは一致しなくなります。特に加入量が低い年は継続して起こっており、「前の年が低かったから翌年も加入量が低い」という扱いになり、長期的な加入量の平均を求める際には、連続して低い加入があった時代のデータの重みが小さくなります。このため、推定された0歳魚資源尾数の単純な幾何平均(約33億尾)より、一次の自己相関を考慮して求めた幾何平均(49.6億尾)の方が大きな値となります。

次に、資源評価モデルとして使用している状態空間資源評価モデル (SAM) では、資源尾数をランダム効果で推定しています。ランダム効果は、実際には、確率分布として求まるものであり、推定された加入量の周りにばらつく変数となっています。そのため、それぞれの年の加入量のばらつき(分散)を考慮した重みづけ平均として、幾何平均を求めています。このプロセスで求めた幾何平均は、年ごとの加入量のばらつきが異なる場合、各年の点推定値から求めた幾何平均とは一致しなくなります。

⑦ 生物情報の参照年を近年(7年間)と全年(54年間)に分けていますが、実際に、MSYやMSY資源水準を推定する場合は、50年間のシミュレーションを実施して決めているので、生物情報の参照年も全年(54年間)を用いた方が妥当ではないかと考えますが、それについてはどのようにお考えですか?

(回答)マサバ太平洋系群ではレジームが検出されず(FRA-SA2024-BRP02-01[あか6]  補足資料1)、再生産関係における自己相関(良い(又は悪い)再生産の翌年には良い(又は悪い)再生産が起きやすい関係)は低い値でした。また、マイワシやカタクチイワシのように、PDOやNPIに代表される気候インデックスで代表されるレジームシフトに伴った加入動向の変化が明瞭ではありませんでした。これらのことから、再生産関係を求める際に、近年10数年間など、特定の期間を区切って求める科学的な根拠がないと考えました。一方、生物特性値(成長・成熟)については長期的に明瞭な変化が見られ、レジーム的な変化も見られています(FRA-SA2024-BRP02-01 図3)。長期的には資源量と生物特性の間に相関関係があるものの、近年の急激なSPR0*1の低下は、過去の資源量との関係から逸脱した変化となっていました(第4回資源管理方針に関する検討会(マサバ太平洋系群、ゴマサバ太平洋系群)の資料3-1、p59 補足図3)。つまり、近年において、環境、もしくは生息域の変化などが起きて、マサバ親魚の生産性が低下している(=漁獲を減らし資源を残しても、翌年の資源の増加が以前ほどには期待できない)状態になっていることが明らかとなりました。このような状況にある生物特性が、次年度以降、急速に過去全期間(54年間)の平均的な状態に戻るとは考えづらく、将来予測においてはSPR0の解析でシフトが観測された近年(7年間)の平均を適用する方が、近い将来の資源状態をより的確に表せると考えました。もし今後、急激な体重の増加が観測されれば、将来予測に適用すべき生物特性値の考え方も改めることになると考えています。

*1 SPR0: 漁獲がない場合に期待される加入1尾あたり親魚量。第4回資源管理方針に関する検討会(マサバ太平洋系群、ゴマサバ太平洋系群)の資料3-1[あか7] 、p57 参照。

⑧ 目標管理基準値案もMSYも、全年(1Aルール) >近年(1Aルール) >全年(1Bルール)>近年(1Bルール)、となっており、「1Bルール」を用いた場合の方が、「1Aルール」を用いた場合より、推定値は小さく、また、生物情報の参照年も近年を用いた場合の方が、全年を用いた場合より、推定値は小さくなっています。従って、2024年の資源評価で最終的に採用された組み合わせ、近年(1Bルール) は、いずれも、「MSYやMSY資源水準の低い推定値を採用するための、意図的な組み合わせなのではないかと疑われますが、それについてはどのようにお考えですか?

(回答)1Aルールを適用するのが適切でないと判断し、1Bルールを適用したことについては②および③でのご回答の通りです。

1Bルールの中でも、将来予測における生物特性値に全年平均値を与えると、資源の増加速度は上がり、10年後に目標管理基準値まで50%以上の確率で回復する漁獲圧を推奨する場合に導き出される漁獲量は、現状(2023年)並となります(FRA-SA2024-BRP02-01[あか8]  補足資料2)。ここで、近い将来の生物特性値が急激に全年平均並に回復すると考えることが妥当かどうか、という点が問題になります。研究機関としては、⑦で回答したように、SPR0で表現される親魚の生産性(FRA-SA2024-BRP02-01 図3)の推移、および、資源が減少してきた近年においてもSPR0が低いままであることは、環境による影響が大きいと考えました。このため、急激に全年平均並に成長が回復する将来よりも、現状程度の成長が当面継続する将来の方が尤もらしいと判断し、近年平均の生物特性値を将来予測に採用しました。目標管理基準値の大小の関係はご指摘のとおりですが、「近年(1Bルール))」を採用することとしたプロセスはこのようなものであり、目標管理基準値の大小を比べて決定したというものではありません。

⑨ 「本資源は再生産関係における密度依存効果が明瞭ではなく」、「べバートン・ホルト型やリッカー型を用いると、MSY親魚量が歴史的な値よりも大幅に高くなってしまう」という理由で、HSモデルを用いると述べられていますが、これは「実際のデータがどのような変動をしているか」ということよりも、「とにかく、MSY理論を使うこと」を重視しているように思われます。この考え方は「本末転倒」以外の何者でもないと思いますが、それについては、どのようにお考えですか?

(回答)MSY水準を目指した資源管理を行うことが基本とされているため、MSYベースの資源評価を行っており、本ページ[あか9] の質問4や質問42で類似の回答をしていますように、加入のバラツキや自己相関を組み込んだシミュレーションに基づき、順応的管理の考え方でHSモデルを適用することで、実際のデータの変動を考慮した、現実的な管理基準値が得られていると考えています。

⑩ マサバ太平洋系群については、どう見ても、現在得られている親魚量の範囲に限ると、「0歳魚尾数は親魚量の増大とともに、直線的に増大している」としか考えられず、「密度効果を検出することは不可能である」ことは、明らかだと思われます。従って、MSY親魚量水準は存在せず、この資源にMSY理論をべースとした資源管理手法を適用することは不可能だと思われますが、それについては、どのようにお考えですか?

(回答)観測値の範囲内では親魚量の増加に伴い加入量も増加するデータしか得られていないような資源についてはMSYの算定が困難な場合がありますが、本ページ[あか10] の質問4や質問42で類似の回答をしていますように、順応的管理の考え方でHSモデルを適用することで、MSY水準を目指すことを基本としている資源管理に対応する現実的な目標管理基準値の算定が可能となっていると考えています。

 [あか1]令和 6(2024)年度マサバ太平洋系群の 管理基準値等に関する研究機関会議資料https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assesment_meeting/2024/files/sa2024-sc16/fra-sa2024-brp02-01.pdf

(令和6年度 マサバ・ゴマサバ太平洋系群 研究機関会議https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assesment_meeting/2024/sa2024-sc16.html

 [あか2]令和 6(2024)年度マサバ太平洋系群の 管理基準値等に関する研究機関会議資料https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assesment_meeting/2024/files/sa2024-sc16/fra-sa2024-brp02-01.pdf

(令和6年度 マサバ・ゴマサバ太平洋系群 研究機関会議https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assesment_meeting/2024/sa2024-sc16.html

 [あか3]令和 6(2024)年度 漁獲管理規則および ABC 算定のための基本指針https://abchan.fra.go.jp/references_list/FRA-SA2024-ABCWG02-01.pdf

(水産資源評価のための基礎資料 令和6(2024年度)

https://abchan.fra.go.jp/about/references_list/

 [あか4]令和 6(2024)年度 漁獲管理規則および ABC 算定のための基本指針https://abchan.fra.go.jp/references_list/FRA-SA2024-ABCWG02-01.pdf

(水産資源評価のための基礎資料 令和6(2024年度)

https://abchan.fra.go.jp/about/references_list/

 [あか5]令和 6(2024)年度マサバ太平洋系群の 管理基準値等に関する研究機関会議資料https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assesment_meeting/2024/files/sa2024-sc16/fra-sa2024-brp02-01.pdf

(令和6年度 マサバ・ゴマサバ太平洋系群 研究機関会議https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assesment_meeting/2024/sa2024-sc16.html

 [あか6]令和 6(2024)年度マサバ太平洋系群の 管理基準値等に関する研究機関会議資料https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assesment_meeting/2024/files/sa2024-sc16/fra-sa2024-brp02-01.pdf

(令和6年度 マサバ・ゴマサバ太平洋系群 研究機関会議https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assesment_meeting/2024/sa2024-sc16.html

 [あか7]水産庁 資源管理の部屋 資源管理方針に関する検討会 サバ類 マサバ太平洋系群、ゴマサバ太平洋系群 第4回

資料3-1:マサバ太平洋系群令和6年度資源評価結果https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/attach/pdf/231027_3-93.pdf

https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/attach/pdf/231027_3-93.pdf

https://www.jfa.maff.go.jp/j/study/kanri/231027_3.html

 [あか8]令和 6(2024)年度マサバ太平洋系群の 管理基準値等に関する研究機関会議資料https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assesment_meeting/2024/files/sa2024-sc16/fra-sa2024-brp02-01.pdf

(令和6年度 マサバ・ゴマサバ太平洋系群 研究機関会議https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assesment_meeting/2024/sa2024-sc16.html

 [あか9]「寄せされた質問と回答 技術的な質問」https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assessment_meeting/faq/technical_question.html

 [あか10]「寄せされた質問と回答 技術的な質問」https://www.fra.go.jp/shigen/fisheries_resources/meeting/stock_assessment_meeting/faq/technical_question.html

 


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