プロンプト集を何冊も買って分かった「写経では仕事が変わらない」理由
机の隅に、プロンプト集の本が何冊も積まれています。
noteやPDFで買ったものも合わせると、正直、何冊買ったのか自分でも覚えていません。
一時期の自分は、これを「コピペ」していました。
誰かが公開している「よく効くプロンプト」を、そのまま自分のChatGPTに使う。
うまくいった型を集めて、コピペして、また新しいのを集める。
プロンプトの精度さえ上げれば、仕事が変わると本気で信じていました。
研究に溶かした時間は、たぶん100時間を超えています。
プロンプトの解説がついた情報商材にも、15万払いました。
それで仕事がどう変わったかというと・・・正直に言えば、何も変わりませんでした。
長い間、その理由が分かりませんでした。
まだ良いプロンプトに出会えていないだけだ、と思っていた時期もあります。
でも今なら、少しだけ言えます。
コピペで仕事が変わらなかったのは、プロンプトが下手だったからではなく、そもそも磨いていた場所が違っていたからでした。
今日はその話をします。
ツールの設定は出てきません。
出てくるのは、「なぜプロンプトを真似しても業務が変わらないのか」という、考え方だけです。
そもそも、コピペで手に入るものは何だったか
プロンプトのコピペで自分が手に入れていたものを、あとから振り返ると、けっこうはっきりしています。
良い「1問1答」です。
ChatGPTに1つ質問を投げて、返ってくる答えの質。
プロンプト集で集めていたのは、これを上げる型でした。実際、良いプロンプトを使うと、返ってくる文章はちゃんと良くなります。そこは嘘じゃないんです。
でも、仕事は1問1答でできていません。
自分の1日を思い返すと、ChatGPTに何かを聞いている時間って、業務全体のほんの一部なんです。その前に、材料をどこかからコピーしてくる時間がある。聞いたあとに、返ってきた答えをまた別の場所に貼り付ける時間がある。それを次の人に渡す時間がある。
プロンプトのコピペで改善するのは、この長い流れの、たった1ヶ所だけでした。真ん中の受け答えは磨けても、その前と後ろにある手作業は、プロンプトをどれだけ磨いても1秒も減らない。
ここに気づくまでが、自分はずいぶん長かったです。
プロンプトの精度は、思ったより早く頭打ちになる
コピペを続けて、もう1つ分かったことがあります。プロンプトの精度って、ある程度のところで、ぴたっと頭打ちになるんです。
自分がいろんな型を試して、最後まで残ったのは3つだけでした。
役割をはっきり書く(何の専門家として答えてほしいか)
出力の形を指定する(箇条書きで、表で、何文字で、など)
やってほしくないことを書く(これは含めないで、など)
この3つを押さえると、返ってくる答えの安定感が一気に上がります。逆に言うと、大事なところは、ここでだいたい済んでしまう。
問題はその先でした。
この3つを超えて、さらに凝ったプロンプトに作り込んでいっても、答えの質はもうそんなに伸びない。
80点を100点にするために10倍の労力をかける、みたいな感覚になってきます。
集めた大量の型の多くは、この「もう伸びない領域」を、少しずつ言い換えていただけでした。
自分はここに、長く時間を使いました。頭打ちだと気づかずに、まだ磨けば伸びるはずだと思って、もっと良い型を探し続けた。
プロンプト集を何冊も買い足したのは、たぶんこの時期です。
伸びない場所を、伸びると思って掘り続けていた。

磨いても、前後の手作業は残ったまま
プロンプトの写経に夢中だった頃の作業を、もう少し細かく見てみます。
たとえば、届いたメールの添付資料の内容をChatGPTで要約して、チームに共有する。よくある作業です。この中でChatGPTを使うのは、要約のところだけ。
その前に、自分でメールを開いて、本文をコピーして、ChatGPTに貼り付けている。
要約が出てきたら、それをまたコピーして、Slackなり別の場所なりに貼り付けて、送っている。
つまり、ChatGPTの前後に、手でコピペする往復がぶら下がっているんです。しかも毎日、何件も。
プロンプトを磨くと、真ん中の要約はきれいになります。でも、その前後のコピペは1回も減らない。むしろ要約の質が上がって満足すると、「前後は手作業のままでいいや」と、その往復のほうが固定されてしまう。写経しながら忙しさが全然変わらなかった理由が、これでした。良くなった受け答えを、結局ぜんぶ手で運んでいたんです。

転機は、磨くのをやめた日だった
方向が変わったきっかけは、わりと突然でした。
あるとき、仕事で関わっていた事業者さんに、「毎日の手作業を、なんとかしたいんだよね」と相談されたんです。
その人もChatGPTは知っている。
でも、それを使っても、毎日の作業はちっとも楽になっていない。
そのとき、はっとしました。この人が困っているのは、ChatGPTの答えの質じゃない。答えの前後にある、集めて・貼って・渡すという往復のほうだ、と。
そして、それはそのまま自分のことでもありました。
考えてみれば、自分が本当に欲しかったのも「もっと賢いChatGPTの返事」ではなく、「その返事が、手を動かさなくても勝手に流れていく状態」だったんです。
プロンプトをどれだけ磨いても、そこには一生たどり着けない。
磨く方向の先に、自分の欲しかったものは無かった。
このとき初めて、「ツールとツールをつなぐ」という発想を知りました。
メールが届いたら、自動でChatGPTに渡して、要約させて、そのままSlackに流す。
この一連を、手を離しても回る形にする。
真ん中の受け答え(=プロンプト)は、写経のおかげで、もう8割方できている。
あとは、その前後の往復を、自動でつないでいくだけでよかった。
磨く方向と、つなぐ方向
磨くのをやめてから、自分の中でようやく整理がついたことがあります。
プロンプトを磨くのと、ツールをつなぐのは、伸ばしている方向がそもそも違う、ということです。
プロンプトを磨くのは、縦の改善です。
1回の受け答えを、より深く、より正確にしていく。
上に伸ばしていく作業。
ツールをつなぐのは、横の改善です。
受け答えの前後を伸ばして、集める・処理する・渡すを1本の線につなげる。横に広げていく作業。

この2つは、解いている問題が違います。
縦を伸ばすと、答えが良くなる。
横を伸ばすと、業務が回るようになる。
自分がずっと欲しかったのは後者だったのに、ずっと前者だけを磨いていた。
だから、いくらやっても「仕事が変わった」という感覚が来なかったんです。
念のため書いておくと、プロンプトを磨くのがムダだと言いたいわけではありません。
むしろ逆で、横につなぐときには、真ん中に置く受け答えがある程度できていないと、つないでも使いものになりません。
写経で身につけた3つのコツは、つなぐ側に回ってからも毎日使っています。
ムダだったのは、頭打ちの先まで磨き続けた時間のほうです。
方向を切り替えただけで、同じプロンプトが、急に仕事の一部として動き出しました。
写経は、解く問題が違っただけ
写経で仕事が変わらなかったのは、プロンプトが下手だったからでも、まだ良い型に出会えていなかったからでもありませんでした。
磨いていた場所が、業務を変える場所ではなかった、というだけの話です。
もし今、プロンプト集を1冊買い足そうか迷っているなら、その前に一度、自分の作業を思い出してみてください。
ChatGPTを開く前に、何かをコピーしていないか。
答えが出たあとに、それをどこかへ貼り付けていないか。
もしその往復が毎日あるなら、次に磨くべきなのは、たぶんプロンプトではなく、その前後です。
自分の場合は、そこに気づくのに、100時間と15万円と、何冊ものプロンプト集がかかりました。
遠回りではあったけれど、写経で貯めた型そのものは、今もつなぐ側で生きています。だから、あの時間が全部ムダだったとは思っていません。
ただ、もう少し早く「磨く」から「つなぐ」へ方向を変えていたら、とは思います。
そして「つなぐ」に回ると、今度は「どの作業からつなぐか」で迷います。その業務の割り方は、別の記事(業務を4つの工程に割る話)に書きました。
プロンプトを磨くのは、やめなくていい。
磨いたそれを、どこにつなぐか。そこまで来て、やっと仕事は変わり始めます。
最後まで読んでくれて、ありがとうございます。
気分で週1くらいのペースで、実装メモとつまずきの記録を書いています。
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