議事録の整形を自動化したら、会議後の30分が消えた
会議が終わって、通話を切る。相手はもう次の予定に移っている。でも自分の作業は、ここから30分残っている。
録音は取ってある。走り書きのメモも残っている。あとはそれを「議事録」の形に直すだけ。だけ、なんだけど、この「直すだけ」が毎回30分かかる。決まったことを拾って、ToDoを整理して、体裁を揃えて、共有できる形にする。頭はもう次の仕事に行きたがっているのに、手だけがさっきの会議に残される。
正直、この30分がずっと嫌いでした。会議そのものより、会議の後片付けのほうが重い日もある。
今日は、この30分をどう消したかの話です。魔法みたいにゼロにしたわけじゃありません。「議事録を作る」という作業を割ってみたら、消せる部分と消せない部分がはっきり分かれた、という話です。
「議事録を作る」を割ってみる
まず、議事録づくりが本当は何をしているのかを分けてみます。
ひとかたまりに見えているけど、中では性質の違う2つの作業が起きています。1つは「記録」。会議中に、何が話されたかを残すこと。もう1つは「整形」。残した記録を、後から読める形に直すこと。
この2つは、まるで別ものです。
記録のほうは、会議のその場でしか取れません。誰が何を言ったか、どういう温度感だったか。これは自分がその場にいないと拾えない。一方で整形は、記録さえあれば、後からいつでもできる。決まった型に流し込むだけの作業だからです。
自分が毎回30分かけていたのは、後者の「整形」でした。録音という記録はもうある。それを読める形に直す、その手作業に30分が溶けていた。
ここに気づいたときは、ちょっと拍子抜けしました。ずっと「議事録づくりは面倒だ」と丸ごと憂鬱に思っていたのに、面倒だったのは半分だけ。しかもその半分は、いちばん機械に向いている作業だった。業務を工程に割るとこういうことが見えてくる、というのは前に別の記事でも書きました。今回はそれを、1つの業務で最後まで通してやってみた回です。

整形がAIに向くのは「型に流す」から、なんだけど
整形がAIに向いている理由は、シンプルです。決まった型に、素材を流し込む作業だから。
会議の文字起こしは、そのままだと読めたものじゃありません。「えーと」とか「さっきの件なんですけど」とか、口で話した言葉がそのまま並んでいる。ここから要点だけ抜いて、決まった見出しの下に置き直す。これはAIがいちばん得意な種類の仕事です。
ただ、大事な条件が1つあります。型は、自分が先に決めておかないといけない、ということ。
自分が最初にやらかしたのは、「いい感じに議事録にして」とだけ頼んだことでした。すると毎回、見出しの付け方も要約の長さも、微妙に違うものが返ってくる。結局それを自分で整え直すはめになって、30分が25分になっただけ。これでは自動化した意味がほとんどありません。
そこで型を固定しました。自分の場合は3つだけ。【要約】(会議全体を3行で)、【決定事項】(決まったことだけ)、【ToDo】(誰がいつまでに、が分かるものだけ)。この3ブロック以外の形では出さない、と最初に決めておく。
なぜ3つに絞るかというと、多いと結局読み返さないからです。議事録は、後から見る人が「決まったこと」と「やること」さえ分かればいい場面がほとんど。凝った構成にするほど、作るのも読むのも重くなって、続かない。少ないほうが、回り続けます。
型を先に決める。ここができているかどうかで、整形の自動化がうまくいくかどうかは、ほぼ決まると思っています。
ツール1つで全部やろうとしない
型が決まったら、あとはつなぐだけです。
ここで自分が意識しているのは、1つのツールに全部やらせようとしないこと。議事録づくりを工程で見ると、実は4つの別々の作業が並んでいます。録音する、文字にする、整形する、保存する。この4つを、それぞれ得意なものに担当させて、線でつなぐ。
録音:会議ツールやスマホでそのまま
文字起こし:録音をテキストに変える(会議ツールの自動文字起こしでも、専用アプリでもいい)
整形:さっきの3ブロックにAIが直す
保存:決まった置き場所(自分はNotion)に、新しいページとして残す
自分はこの流れをn8nで組んでいます。骨組みだけ言うと、「文字起こしのテキストを受け取る入口」を作って、そこにテキストが届いたら「AIで整形するブロック」に渡して、出てきたものを「保存するブロック」に流して、最後に「終わったよ」と通知が飛ぶ。ノードを左から右へ、この順番に並べてつなぐだけです。細かい設定の話はしません。ここで効くのは、設定値より並べる順番のほうなので。
なんで1つのツールに全部詰め込まないのか。詰まったときに、原因の場所が分からなくなるからです。全部が1個のかたまりだと、うまくいかないときに「どこが悪いのか」を切り分けられない。でも4つに分けてつないでおけば、「文字起こしまでは合ってる、崩れてるのは整形だ」と、原因の位置がすぐ見える。
実際、自分のこの仕組みも、一度3日ほど気づかず止まっていたことがあります。原因は、文字起こしを受け取る入口の仕様が少し変わっていただけ。工程を分けてつないでいたから、「あ、入口のところだけだな」とすぐ直せました。もし全部を1個のかたまりで組んでいたら、まるごと作り直していたと思います。

AIに任せていい線と、任せちゃいけない線
ここまでで一番ハマったところを、正直に書いておきます。
整形をAIに任せると、たまに「書いていないこと」を書いてきます。決定事項の欄に、実際には決まっていないことを、それっぽくまとめて足してくる。文章としては自然なので、パッと見では気づけない。
これ、議事録ではいちばん危ないやつです。議事録は「事実の記録」なので。決まっていないことが「決定事項」に載っていたら、それはもう記録として壊れている。要約が少しぎこちないのは直せばいいけど、事実が足されるのは、後から見ても直しようがありません。
そこで自分が引いた線は、こうです。「書いてあることを整える」のはAIに任せる。でも「書いていないことを補う」のはAIにやらせない。
具体的には、整形を頼むときに「文字起こしに無いことは足さないで。その欄に該当が無ければ『特になし』と書いて」と、はっきり伝えておく。空欄を埋めようとする動きを、最初に止めておくわけです。これを入れてから、事故はほぼ無くなりました。
この線引きは、たぶん議事録以外でも効きます。AIは「空欄を埋めよう」とする方向に強い。だから、埋めてほしくない場所では「埋めなくていい」と先に言っておく。任せる作業を選ぶというより、任せない場所を先に決めておく、という感覚に近いです。

消えたのは、30分だけじゃなかった
数字で言うと、1時間の会議で30分かかっていた整形が、テキストを投げてから1分ほどで済むようになりました。会議が多い週だと、これがそのまま積み上がります。
ただ、自分にとって本当に大きかったのは、時間そのものより「後回しにしなくなったこと」でした。
前は、会議が立て込むと議事録が溜まりました。「後でまとめよう」と思ったものほど、記憶が薄れて、まとめるのにさらに時間がかかる。最悪、そのまま流れる。整形が30分の重い作業だったから、つい先送りしていたんです。
それが、会議が終わって録音のテキストを投げれば、その場でだいたい形になる。重くないから、後回しにする理由が消えた。溜まらないから、記憶が新しいうちに片付く。時間が浮いた以上に、この「詰まらなくなった」感覚のほうが効きました。
派手な自動化ではないです。AIが会議を深く理解して賢く判断している、みたいな話でもない。やっているのは「決まった型に、素材を流し込む」だけ。でも、毎回発生して、毎回地味に重かった作業なので、消えたときの軽さは、はっきりありました。
面倒なことほど、まず割ってみる
「議事録づくりが面倒」と丸ごと憂鬱になっていたけど、割ってみたら面倒だったのは「整形」の部分だけでした。そして整形は、型さえ先に決めれば、いちばん機械に任せやすい作業だった。
だから、何か面倒な作業を自動化したくなったら、いきなりツールを開く前に、その作業を工程に割ってみるのがいいと思います。どこが「その場でしか取れない部分」で、どこが「型に流すだけの部分」か。消せるのは、たいてい後者のほうです。
割る、型を決める、任せない場所だけ人に残す。この順番で見ると、たいていの「重い作業」は、思っていたより軽くできます。次に会議が終わったとき、その30分の中身を一度分けてみてください。半分は、もう手放していいかもしれません。
最後まで読んでくれて、ありがとうございます。
週1くらいのペースで、実装メモとつまずきの記録を書いています。
今後の投稿が気になる人はフォローしておいてください。
