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「それ、いま何分かかってますか」から始めるようにしたら、提案書が短くなった話

提案資料を12ページ作って、ほとんど読まれなかったことがあります。

前日の夜まで直していました。構成図の矢印の向き、色の使い分け、ページの順番。
丁寧に作れば伝わるはずだと思っていました。

構成図も入れました。
どのツールとどのツールをつないで、どこで判断が入って、どんな流れでデータが動くのか。
自分としては、いちばん丁寧に作った資料でした。

相手はぱらぱらとめくって、「ありがとうございます、検討しますね」と言いました。それきりでした。


機能を並べていた頃

当時の自分は、提案とは「何ができるかを説明すること」だと思っていました。

メールを自動で振り分けられます。議事録を整形できます。
集計してチャットに流せます。将来的にはこういう拡張もできます。

できることを1つでも多く並べたほうが、価値が伝わるはずだと思っていました。

しかも、資料を作り込むほど熱が入ります。
この連携は我ながらきれいに組めた、この分岐は工夫した。
そういう部分ほど丁寧に説明していました。

なぜ機能を並べたくなるのか、いまは分かります。
自分が非エンジニアだからです。
技術の話をきちんとできることで、この人に頼んで大丈夫だと示したかった。
相手の不安を消すつもりで、消していたのは自分の不安のほうでした。

いま振り返ると、あれは全部自分の言葉でした。

ノード、連携、トリガー、自動振り分け。
作る側にとっては具体的な言葉です。
でも、相手にとってはどれも初めて聞く言葉で、良し悪しを判断できません。
判断できないものを12ページ渡されても、返せる言葉は「検討します」しかない。

「それ、いま何分かかってますか」

変わったのは、ある打ち合わせで、資料を開く前にこう聞いたときでした。

「それ、いまだいたい何分かかってますか」

相手は少し考えて、「んー、25分くらいですかね。毎朝」と答えました。

そこから話が急に具体的になりました。
25分の内訳は何か。どの部分が面倒なのか。飛ばせない工程はどれか。
相手が自分から話しはじめて、こちらは聞いているだけの時間が続きました。

途中で「あ、これ実は前の担当者から引き継いだだけで、誰も使ってないかも」という話まで出てきました。
こちらからは絶対に出てこない情報です。

最後に、こう言いました。

「そのうち、集めて貼るところは無くせます。確認する部分は残るので、たぶん5分くらいにはなります」

そこで決まりました。資料は結局、開きませんでした。

相手が値踏みしているもの

なぜこれで決まったのか。しばらく考えて、いまはこう理解しています。

相手が値踏みしているのは機能ではなく、自分の時間のほうです。

「メールを自動で振り分けられます」と言われても、それが自分にとって何なのかは分かりません。
でも「毎朝25分が5分になります」なら、価値を自分で計算できます。
20分×20営業日で、1ヶ月に6時間半。

それに対していくらまで出せるか、その場で判断できる。

つまり、相手が判断できる単位に翻訳して渡す、というだけの話でした。

機能の説明は、相手が判断したあとに必要になります。
順番が逆だっただけで、資料が無駄だったわけではありません。
実際、決まったあとの打ち合わせでは、あの構成図が役に立ちました。

提案の前に聞く3つ

いまは、提案らしいことを話す前に、3つだけ聞くようにしています。

  • それ、いま何分かかってますか(時間)

  • 週に何回ありますか(頻度)

  • いちばん面倒なのはどの部分ですか(痛点)

時間を聞くのは、価値を計算できる単位にするため。
頻度を聞くのは、1回の重さより回数のほうが効くから。1回5分でも毎日なら年に20時間になります。
痛点を聞くのは、時間が短くても「そこが嫌で仕事が止まる」工程があるからです。

この3つが埋まらないうちは、まだ提案する段階じゃないと考えています。

数字が出てこないこともあります。
「うーん、測ったことないですね」と言われたら、そこで止めて、次までに何回かストップウォッチで測ってもらうようお願いすることもあります。
急がば回れで、そのほうが結局早い。

面白いのは、この3つを聞いているあいだに、相手のほうが乗り気になっていくことです。自分の作業を言葉にしていくうちに、「これ、けっこう無駄だな」と本人が気づく。
こちらが「無駄ですよ」と言うより、ずっと強い。

一度、聞いている途中で「あ、そもそもこの作業いらないかも」と言われたことがあります。
自動化どころか、業務ごと消えました。
仕事は減りましたが、あれはあれで良かったと思っています。
少なくとも、要らない作業を自動化して納品するよりはずっといい。

数字が出た瞬間から、話が短くなる

以前は「何ができるか」を長く話していました。
いまは、相手の数字が出た瞬間から、話がどんどん短くなります。

「25分が5分になります。まずそこだけやりましょう」

これで足ります。提案書も1枚で済むようになりました。
むしろ長い資料を出すと、読む手間そのものが検討を遅らせます。

自分の議事録の作業を自動化したときも、同じでした。
会議のあと30分かけて整えていたものが、ほとんど残らなくなった。
あのとき効いたのは、機能がうまく組めたからではなくて、消えた30分が自分にとって具体的だったからだと思います。

逆に言うと、自分でも測っていない作業は、自動化しても効果が実感できません。前後を比べる基準がないからです。

実際、測らずに作って失敗したこともあります。
動くものは納品できたのに、相手の感想が「まあ、楽になったかな」で終わってしまった。
効果を数字で言えないと、社内でも共有されません。作ったものが良くても、そこで止まります。

だから相手に数字を聞くのは、提案のためだけではなく、あとで「やってよかった」と言ってもらうための準備でもあります。

聞くのにかかるのは3分です。
12ページの資料を作る時間と比べたら、ほとんどコストがない。
それで決まる確率が上がるなら、順番を変えない理由がありません。

提案書を出す前に、1つだけ確認しています。
この資料に、相手の数字が1つでも入っているか。
1つも入っていないなら、それはまだ自分の話をしているだけです。


最後まで読んでくれて、ありがとうございます。
実際に作った仕組みの実装メモと、つまずきの記録を書いています。
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