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売り込むのをやめて、動いてる仕組みを「試しに使ってみて」と渡した話

知り合いの事業者と話していて、「AIで自動化、できますよ」と説明したことがあります。
こういうことができて、あれもできて、と一通り並べた。
相手はうなずいてはくれるんですが、目のほうは「で、それ結局うちに何の関係があるの」という感じで、ぽかんとしている。
悪い人じゃない。むしろ興味はある。でも、伝わっていない。

これ、何度かやりました。
話せば話すほど、相手が静かに引いていく。正直、自分は営業って苦手だな、と思っていました。

今日は、その「説明しても伝わらない」を自分がどうほどいたか、という話をします。
売り方の正解ではなくて、自分の場合はこう入ったら手応えがあった、という共有です。

「AI教えます・作ります」が、なぜか刺さらなかった

まず、なんで説明が刺さらなかったのか。
あとから考えると、理由は2つあった気がします。

  • 相手は、AIの価値を言葉だけでは判断できない

  • 導入して失敗したら、というこわさのほうが先に立つ

1つめ。
自分は「これをこうつないで、AIに判断させて」と、できることを一生懸命に説明していました。
でも相手からすると、それが自分の毎日をどう変えるのか、言葉だけだと像が結ばない。
AIとかツールとか、名前は聞いたことがあっても、手元で動いているのを見たことがない人にとっては、全部ふわっとした話なんです。
すごそう、でもよく分からない。
この「よく分からない」が残ったまま、お金の話にはなりません。

2つめ。
仮にすごさが伝わったとして、次に来るのは「で、それ導入して、もし回らなかったらどうなるの」という不安です。
お金を払って、時間を取られて、結局使わなくなる。
そういう買い物を、たいていの人は一度はしている。だから、価値を大きく語れば語るほど、相手の中では「その分、外したときの痛手も大きい」に変換されていく。

つまり自分は、良かれと思って価値を盛るほど、相手のハードルを自分の手で上げていました。ここに、長いこと気づかなかった。

説明するより、動くものを見せた

あるとき、説明するのをやめてみました。
代わりに、自分がすでに作って動かしていた自動化フローを、そのまま見てもらった。
「こういうのが、今こうやって動いてるんですよ」と、画面を見せただけです。

そうしたら、反応が明らかに違いました。
「あ、こういうことなんだ」と。
言葉を尽くして説明したときより、画面がひとつ動いているのを見せたときのほうが、圧倒的に早く伝わる。
当たり前かもしれないんですが、自分にはこれが発見でした。

考えてみれば、言葉で価値を説明するのと、動くものを体験してもらうのとでは、相手のやることが全然ちがいます。
前者は、相手が頭の中で「それはつまり自分にとってどういうことか」を想像しないといけない。
後者は、目の前で動いているものを見て、感じるだけでいい相手に想像を頼むか、体験を渡すか。刺さらなかった原因は、たぶんこの差でした。

だから今は、最初に長い説明をしないようにしています。
何ができるかを語る前に、動いているものを一つ見せる。話はそのあとでいい。

「試しに使ってみて」で渡す、という入り方

動くものを見せると、相手はだいたい前のめりになります。「うちでも、こういうのできる?」と。
ここで、昔の自分なら「できます、ではお見積もりを」と言っていました。でも、興味を持ってもらった直後に見積もりを出すと、さっきの「失敗したらこわい」がまた顔を出す。

そこで最近は、いきなり契約の話をしないで、「試しに使ってみてください」と渡すようにしています。

前に、知り合いの事業者から「毎日の手作業をなんとかしたい」と相談されたことがありました。
そのときも、いきなり大きい提案はしませんでした。
相手の業務のなかで、いちばん手間になっていて、かつ自分がすぐ組めそうな部分を一つだけ選んで、その分が動く小さなフローを作って、「これ、試しに回してみてください」と渡した。

どこを選ぶかについては、前に、相手の業務を4つの工程に割って、いちばん効く1つを見つける、という話を書きました。
お試しで渡すものは、まさにその「効く1つ」を選ぶといいと思っています。あれもこれも詰め込んだ大作を渡すより、一点だけ確実に効くものを渡したほうが、相手も気軽に試せる。

やってみて分かったのは、ここには決まった流れがあることでした。
動くものを見せる → 試しに使ってもらう → 効果を自分で実感してもらう → 月額に落ち着く
この順番です。大事なのは、こちらが「効果があります」と言うんじゃなくて、相手が自分で「あ、これ楽だ」と気づくところまで、口を出さずに待つことでした。

お試しは、断りやすい形で渡す

ただ、「試しに使ってみて」は、渡し方を間違えると押し売りになります。
ここ、ハマりやすいところなんですけど、良かれと思って作り込みすぎると、相手が「こんなに作ってもらったら、断りにくい」と身構えてしまう。
お試しなのに、相手にプレッシャーがかかる。それだと逆効果でした。

だから自分がお試しを渡すときは、3つだけ意識しています。

  • 小さく:相手の業務全部じゃなくて、一つの工程だけ

  • 低リスク:もし外しても、相手の仕事に穴が空かない範囲で

  • 断りやすく:「合わなかったら、やめてもらって大丈夫です」と先に言っておく

小さく、は上に書いたとおり、効く一点に絞ること。全部を一気に自動化しようとすると、渡すほうも時間がかかるし、相手も「大がかりだな」と構えてしまう。

低リスク、は、お試しの段階で、相手の本番の仕事に食い込まないようにすること。
今までのやり方はそのまま残して、その横で新しい仕組みを回してもらう。
もし止まっても、元に戻ればいいだけ、という状態にしておく。相手にとって、外して困らない形で渡すのがいいと思っています。

断りやすく、は、渡すときに「合わなかったら、いつでもやめてもらって大丈夫です」と先に言っておくこと。
これを言うと、相手はぐっと気楽になります。断る余地を最初に渡しておくと、かえって、じっくり試してもらえる。
売り込まれている、と感じないからだと思います。

この3つは、全部、相手のハードルを下げるためのものです。
自分が売りたい気持ちを前に出すほど、この3つは崩れていく。
だから渡すときは、いったん「売る」を忘れるようにしています。

一度回り始めると、止めるほうがめんどうになる

じゃあ、お試しから月額契約に、どうやって移るのか。
正直に言うと…こっちから強く勧めた記憶が、あまりないんです。

小さなフローでも、一度その人の毎日に組み込まれて回り始めると、だんだんそれが「あって当たり前」になっていきます。
毎朝やっていた手作業が消えて、その状態に慣れる。
そうなると、止めるほうがかえってめんどうになる。
元の手作業に戻るのは、もう考えたくない。
価値が、言葉じゃなくて体で分かっている状態です。

そこまでいくと、月額の話は自然でした。
自分の最初の案件も、月3万くらいのお試しから入って、そのまま月額契約に落ち着きました。
最初から「月いくらでどうですか」と大きく構えたわけじゃなくて、小さく試してもらったものが、続けて使われるうちに、契約という形になっただけ。

だから自分の場合は、営業でいちばん力を入れる場所が、「説明」でも「最後の詰め」でもなく、「最初に渡すお試しが、ちゃんと相手の毎日に効くかどうか」でした。
そこさえ外さなければ、あとは相手のなかで勝手に価値が育っていく感覚があります。

もちろん、全部がこうなるわけじゃないです。
試してもらって、合わなくて終わることもある。
でも、合わなかったものを無理に契約にしなくていい、と思えるのも、お試しから入っているからでした。

まず、動くものを一つ手元に

自分が営業で手応えを感じたのは、うまく説明することじゃなくて、動くものを見せて、試してもらうことでした。
言葉で価値を伝えようとするより、そのほうが早いし、相手も安心して入れる。

で、これをやるために最初に要るのは、営業トークじゃなくて「すでに動いている仕組みが、自分の手元に一つあること」です。
見せられるものが一つあれば、それが説明の代わりになる。
だから、もし今から何か始めるなら、誰かに売る練習をするより先に、自分の身の回りの手作業をひとつ自動化して、動く状態にしておくのがいいと思います。

それが、そのまま最初の「見せられるお試し」になります。
売るために作るんじゃなくて、自分のために作ったものが、結果的に見せられる一つになっている。
自分の場合は、その順番がいちばん無理がなかったです。


最後まで読んでくれて、ありがとうございます。
今後も実装メモとつまずきの記録を書いていきます。
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