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写真は氷山の一角

写真を撮ることは、ただ目の前の風景を写すだけではありません。そこには、撮る人の暮らしや考え方、生き方がそっとにじんでいます。どんな毎日を過ごし、どんなことに心を動かされ、どんな気持ちを大切にしているのか、そうした背景が写真の一枚に表れます。

私たちが目にする写真は、まるで海に浮かぶ氷山の一角であり、1割程度にすぎません。その下には残り9割の、もっと広くて深い「見えない部分」が隠れています。そこが大事なところで、見えている1割と見えていない9割全体を合わせて写真が完成していくような気がします。

目に見える写真も大切ですが、もっと大切なことは、見えない心の部分と写真を繋ぐことです。なぜなら、写真の本当の魅力は目に見える「技術」でなく、目に見えない撮る人の「心」にあるからです。

だからこそ、「自分が何をどう感じているか」心の声と向き合うことがとても大切です。その気持ちが自分の中でいっぱいになり、溢れ出したものが写真として表れてくるような気がします。人によっては、写真ではなく詩や小説、絵画や音楽、スポーツやビジネスでもあります。

そう気づいたのは、須田誠さんの写真集『NO TRAVEL, NO LIFE』を久しぶりに読み返したことがきっかけでした。10年前はただただ写真に圧倒されただけでした。

その写真集には世界各地で暮らす人々の姿が写し出されていて、生活の音や息遣いまで聞こえてきそうです。心と心が繋がり愛に満ち溢れた写真が並んでいます。人物を撮る方にはぜひ一度手に取ってほしい一冊です。

さらに心を動かされたのは、写真の「見えない部分」、撮影に至るまでの想いや日々が文章として綴られていることです。須田さんは34年間写真と距離を置きながらも、その間に蓄えたエネルギーと魂の叫びが、この写真集に込められています。読後には、もう一度ページをめくりたくなる不思議な余韻が残ります。

「自分のハートにピントを合わせなきゃ」

そんな言葉にハッとさせられました。


多くの人は目に見える写真と、目に見えない心の部分を切り離しています。そのほうが楽だからです。更に目に見える1割はわかりやすいので、どうしても目が行きやすいです。カメラ機材や構図、光の捉え方やレタッチの方法など、そこを磨き上げていくと、どんどん写真が上手になります。それは悪いことではありませんが、もし写真で何かを伝えようとするなら、見える1割を磨き上げると同時に、見えない9割にも意識を向けると、写真により厚みが加わります。

写真が氷山の見えている部分だとすると、氷山の沈んでいるところは、写真とは関係ない日々の生活であり、喜怒哀楽であり、魂の叫びでもあります。見えない部分は誰でも持っています。今まで生きてきたベースがそれに当たります。ただそれは写真教本に載っているものではなく、生い立ちや日々の暮らし、経験や願望の中から、自分の中に湧き上がってくるものを感じとるしかありません。それは時に負の感情と向き合うことになるため辛いことにもなります。だから多くの場合、写真と切り離してしまいます。

もし写真集を見たり、写真展を訪れることがあれば、展示されている写真だけでなく、その奥にある背景にも思いを馳せてみてください。「この写真は、どんな心の土壌から生まれたのだろう」「この作者はどんな幼少期を送ったのだろう」そんな問いが、写真をより深いものにしてくれます。


そんなことまで気づかせてもらえる一冊です。


須田誠さんはnoteでも活動されています。
今年10月には個展が開催されるそうなので、きっとその展示でも、見えないところから湧き上がってくる須田さんの思いが、写真として表れ、見る人の心に語りかけてくれることでしょう。


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