密着ルポ:「見栄で買った中古レクサス」の意識他界系男子
――意識高すぎて現実が見えなくなった若者・佐藤健太の3年間と、その末路
取材・文:紙魚ふみ(ノンフィクションライター)
【プロローグ:「レクサスは、私のライフスタイルの一部です」】
2021年4月。表参道のオーガニックカフェで出会った佐藤健太(仮名・当時27歳)は、リネンの白シャツにサングラス、左手には最新モデルのApple Watch Ultra、右手には限定パッケージのスターバックス「サマーアイスラテ」を持っていた。
「最近、ちょっとだけライフスタイルをアップデートしまして。中古とはいえ、レクサスLS460hに乗ってます。静粛性が半端ないし、何より“佇まい”が違うんですよね。周りの目?いえ、別に気にしてませんよ。ただ、自然と選ばれる存在になるだけです」
彼のスマホ画面には、インスタグラムのプロフィールが映っていた。
@kenta.sato.lexus.life
フォロワー:12,843人
自己紹介文:“Quality over quantity. レクサスと朝焼けと、自分だけの美学。”
投稿の9割は、レクサスを“さりげなく”背景に配置したライフスタイル写真。車内から撮った朝焼け、助手席に置かれたアートブックと無印のタンブラー、駐車場で映り込むレクサスのフロントグリル越しのサングラス姿……すべてが“偶然”に見えるように計算され尽くされていた。
「車の話はあまりしない主義なんです。でも、わかる人には伝わる。それが大人の余裕じゃないですか」
そのときの彼の瞳には、現実の金銭的負担など、微塵も映っていなかった。
【第一章:レクサス・フィルター越しの世界】
佐藤のSNS投稿は、まるで映画のワンシーンのようだった。
【投稿1|2021年5月】
朝6時。渋谷の高層駐車場から見る空。
ハイブリッドモードで無音のまま昇っていく朝日。
#静寂の美学 #LS460h #morningvibes
(写真:ダッシュボード越しに広がる空。シフトノブに手を添えた指には、ヴィンテージ風のシルバーリング。車体のレクサスエンブレムが、朝日にきらりと光る)
【投稿2|2021年7月】
週末は軽井沢へドライブ。
車内で淹れたドリップコーヒーと、たまたま見つけた古書。
#大人の休日 #LexusLife #slowliving
(写真:助手席に置かれたハリオのポットと『ロルフィング入門』。窓の外には緑。そして、ドアミラー越しに映るレクサスの流麗なサイドライン)
【投稿3|2021年10月】
銀座のパーキングで、たまたま隣に止まったフェラーリ。
彼も一瞬、うちのLSを見て微笑んでくれた。
#車は語る #understatedluxury
(写真:スマホを車内から外に向けて撮影。ガラス越しにぼんやりと赤いフェラーリと、自分のシルバーのレクサスが並ぶ。焦点はあくまで“自分”の手元のカフェラテ)
実際のところ、その“軽井沢ドライブ”は高速代とガソリン代で2万円超え。翌週の食費はコンビニおにぎり3日連続だったが、そんなことは一切投稿されない。
“見せない苦労”こそが、“本当の意識高さ”だと、彼は本気で信じていた。
【第二章:崩れぬふりの美学】
2022年。会社の業績悪化で賞与ゼロ。昇給も凍結。年収は460万円にまで落ちた。
だが、佐藤のSNSは、むしろさらに“洗練”されていく。
【投稿4|2022年2月】
冬の六本木ヒルズ。
車内で聴く坂本龍一。
時間が止まったような静けさ。
#hybridquietness #sophisticatedlife
(写真:ダッシュボードのナビ画面に映る『async』のアルバムアート。背景にぼんやりとレクサスのエンブレム。実際は、暖房を最大にしてもヒーターが効かず、コートを3枚重ねて震えていた)
【投稿5|2022年6月】
新宿の高層パーキングでランチミーティング。
ビジネスは、車内でも成立する。
#mobileoffice #LexusAsLifestyle
(写真:レザーシートに置かれたMacBookと抹茶ラテ。実際は、クライアントとのZoom面談中にバッテリー警告が出て、焦って充電ケーブルを探していた)
車検が近づき、整備工場から「ハイブリッドシステムの点検で25万円必要」と連絡が来ても、彼は一切動じないふりをした。
「車検?ああ、ディーラー任せだから全然気にしてないですよ。レクサスは信頼できるんで」
実際には、クレジットカードのリボ払い枠を限界まで使い、親に「投資の勉強代」と称して10万円を借りていた。
SNSには、その苦悩の一片も現れない。
なぜなら、「弱みを見せる=意識が低い」と、彼は信じていたからだ。
【第三章:見栄の果てに――崩壊は静かに】
2023年秋。ハイブリッドバッテリーの警告灯が点灯。ディーラーの見積もりは「48万円」。
彼はその日、Instagramにこう投稿した。
【投稿6|2023年10月】
最近、自分の“軸”を見直す時間が増えてきた。
モノではなく、マインドが大事。
でも、レクサスは私の一部だから、手放す気はない。
#minimalismwithluxury #innerpeace
(写真:夕暮れの駐車場。シートに座る後ろ姿。窓ガラスに映るレクサスのロゴ。実際は、その車はエンジンがかからず、JAFを呼ぶ寸前だった)
だが、翌月、彼の投稿は突然途絶える。
2024年1月。再び会った佐藤は、ユニクロのダウンジャケットに、マスク越しに疲れた目をしていた。
「…全部、嘘だったんです。あの投稿も、あのライフスタイルも。レクサスは、ただの“鎧”でした」
彼によると、ローン残高60万円を返すために、親に頭を下げ、副業で深夜のコンビニバイトを3か月続けたという。
「SNSで“たまたま映り込んだ”レクサスの写真、全部、何十回も撮り直してました。角度、光、カフェラテの泡の形まで。でも、誰も気づかなかった。気づいてほしかったのに」
【エピローグ:消えた@kenta.sato.lexus.life】
現在、佐藤のInstagramアカウントは非公開。過去の投稿はすべて削除されている。
彼は今、自転車通勤で都内のスタートアップで働いている。車は持たず、SNSもほぼ使っていない。
「見栄って、自分を守るための嘘ですよね。でも、その嘘が大きくなりすぎて、自分すら騙しきれなくなった」
彼が最後に言った言葉は、静かだった。
「レクサスは、本当に美しい車でした。でも、それを“自分の価値”だと思い込んだのが、最大の過ちだった」
【取材後記】
佐藤健太の3年間は、“SNS時代の見栄の病理”を如実に映し出す鏡だった。
彼は一度も「車が壊れた」「修理代が高い」とは言わなかった。
なぜなら、その瞬間、“意識高い系”という仮面が剥がれてしまうからだ。
現代の若者は、現実よりも“演出された現実”を生きる。
そして、その演出が崩れたとき、人は初めて“自分”と向き合う。
レクサスは、彼にとって乗り物ではなく、“存在証明の舞台装置”だった。
だが、舞台が終われば、役者はただの素人に戻るしかない。
レクサスにご興味ある方は、下記カーセンサーのリンクをご用意しています。総額安い順に設定してありますので、あなたもLクサスライフを、どうぞ。
(このルポルタージュは創作です)
