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建築家の空想休憩 第二話|風の郵便局

届かなかった手紙を、
風が預かっている小さな郵便局がある。

海沿いの崖の上。
白く古びた建物の前には、赤いポストがひとつだけ置かれている。

読み返せなかった手紙。
出せなかった言葉。
最後まで書けなかった文章。

ここには、そんな届かなかった時間が集まってくる。

午後になると、海から少し強い風が吹く。

古いカーテンが揺れ、
棚に並んだ封筒の角が小さく震える。

壁には潮風の跡が残り、
白い塗装はところどころ剥がれていた。

けれど、その古び方は不思議と嫌ではない。

まるで建物そのものが、
長い時間を静かに受け止めてきたようだった。

郵便局の中には、住所の書かれていない手紙が並んでいる。

「あの日、ごめんと言えなかったこと」

「もう会えない人へ」

「出さなかった夏の手紙」

誰にも届かなかった言葉は、
夕方になると風に混ざり、空へほどけていくのだという。

人は時々、
伝えられなかった言葉を、心のどこかに置いたまま生きている。

夕方、最後の光が海に落ちる頃、
郵便局の窓が少しだけ開いた。

風が通り抜ける。

机の上の一枚の手紙が、
ふわりと揺れた。

もしかすると風は、
人が届けられなかった言葉の続きを、
今もどこかへ運び続けているのかもしれない。


この空想は、
私が考えている「時間建築論」というテーマとも、どこかでつながっています。

▶︎ 「設計は、空間ではなく時間を扱う仕事だ。」


風のように、建築には目に見えないものがあります。
空気、気配、視線、時間、身体の動き。

それらをどう図面やパースに置き換えるのか。
そこに、設計者の力が表れるのだと思います。

関連して、パースを「うまく描く技術」ではなく「設計力の表れ」として書いた記事があります。

▶︎ パースは“うまさ”ではなく“設計力”で決まる


はじめて読んでくださった方へ。
このnoteでは、建築、暮らし、時間、そして日本と韓国の住文化について、建築家の視点から記録しています。
私がどのような立場で、どんなテーマを大切にしながら書いているのかは、こちらのプロフィール記事にまとめました。
よろしければ、あわせて読んでいただけるとうれしいです。

▶︎ 建築家として、時間と暮らしを記録する|新しいプロフィール



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