今から追いかける旧作.hackシリーズVol.1
.hack//シリーズの完全新作家庭用ゲーム作品『.hack//Z.E.R.O.』が発表された。
今作はゲーム開発会社のサイバーコネクトツーが.hackシリーズの権利保有者であるバンダイナムコエンターテインメントからの許諾を得て、製作販売を行う自社パブリッシングタイトルである。
最新作のZ.E.R.O.はバンダイナムコから展開されていた過去の.hackシリーズとは地続きではない内容であり、アトラスのペルソナ1,2に対するペルソナ3のようなゲームだとインタビューで公表されている。
つまり、本作に興味を持った人は特に旧作.hackシリーズをやる必要はなく、新作の発売を心待ちにしていればいいだけなのだが……それはそれとして旧作があるならそれを知りたい、あるいは昔やっていたので久々にやり直したい、あるいは中途半端に触れていたのでこれを機に一通りやってみたいと思うのがオタクの性である。
.hackシリーズは架空のオンラインゲーム『TheWorld』を舞台に、ゲーム・アニメ・漫画・小説といった媒体で展開されたメディアミックス作品である。これまで大きく分けて三つのシーズンが展開され、それぞれの作品が物語上で相互作用して絡み合いひとつの大きな事件の全容に迫っていくサスペンスが魅力であるが……
とりあえずバンダイナムコ側の公式サイトに載ってるシリーズ展開年表でもご覧頂こう。
$${\LARGEあーもうわけがわからん。}$$
ぶっちゃけこれだけ作品数が多いとほぼ番外編のような内容でシリーズを追う上では特に触れなくても問題ないものは存在するし、来年25周年を迎えるシリーズともなると現行機では遊ぶことのできないゲームや事実上の絶版状態になっている漫画や小説がいくつも存在している。
というわけでこの解説では2026年2月現在、公式からの供給(現行ゲーム機やPCで遊べるゲーム、動画配信サイトで配信中のアニメ、電子書籍が販売中の漫画等)がある.hackシリーズを中心に紹介していこうと思う。
書いてたら長くなったので記事を分割し、今回は1stシーズンについて紹介。
※基本的にはシリーズの発売・放送・完結順等で紹介していきます。原作は絶版だが後年発表されたノベライズ作品などの代替手段がある場合はそちらを紹介します。
※記事内では作品の発売年などは『20XX年』と表記し作中の舞台となった年代は『A.D.20XX』と表記します。
1stシーズン
2002年から展開された.hackの第一期シリーズ。
OVAを同梱した全四巻のゲームを販売することで当時話題を呼んだPlayStation2用ゲーム『.hack//感染拡大Vol.1~絶対包囲Vol.4(通称無印.hack)』を作品の中心とし、総じてZ.E.R.O.のインタビューでも語られた『デジタルサスペンス』とも言うべきジャンルの作品群。押井&神山版攻殻機動隊や機動警察パトレイバーthe movie辺りの近未来SF作品が好みな人にオススメである(1stシーズンのゲームとアニメのシリーズ構成を担当したのはその押井版攻殻とパトレイバーの脚本を担当した伊藤和典氏である)
.hackの魅力とも言える作品間の相互作用性もシリーズで最も色濃く、古参が語る「これぞ.hack」という魅力を思う存分体感できるだろう。
なお初作だからといって必ずしも本シーズンから入る必要はなく、次回紹介する2ndシーズンから入っても支障はないことは先にお伝えしておく。
.hack//SIGN
2002年放送の.hack//1stシーズンのアニメ作品。現在はdアニメストア(forPrimeVideoやニコニコ支店含む)やバンダイチャンネルなどで見放題配信中。
ゲーム『無印.hack』の半年前の物語であり、アニメ独自の主人公『司』を取り巻く人間模様と、シリーズ通しての最重要キャラクター『アウラ』の覚醒までを描く。
2002年というVRを題材にした作品の黎明期に公開されたアニメであるにも関わらず、ゲームからログアウトできなくなった主人公が第一話から「これはこれで悪くない」と受け入れてしまうなど20年くらい先を生きてる内容。ネットを通じた人との関わり方など現代視点で見ても考えさせられる脚本は秀逸の一言。
無印を前提としたメディアミックス作品であるため多くの謎を残したまま最終回を迎えるも、主人公の物語は完結して終わるのでそこは安心して欲しい。
ただし、全編を通じて監督である真下耕一氏の真下ワールドとでも呼ぶべき独特な作風があり、キャラクターのセリフが殆ど無い中で劇伴を担当した梶浦由記氏(魔法少女まどか☆マギカやFate/stay night [Heaven's Feel]など)のボーカル楽曲を全面に押し出した演出が続くなど、少々人を選ぶ癖の強い作品ではある。
なお、配信版の最終話である第28話『UNISON』は、ゲーム完結後に発売されたOVA作品であり、ゲームの後日談となっているので下記小説を読み終わった後の視聴を推奨。
新約小説.hack
こちらは1stシーズン当時に展開された作品ではなくシリーズ15周年を記念して、サイバーコネクトツーの公式ホームページで連載された1stシーズンのゲーム作品=無印.hack全四巻のノベライズ。
後述する小説専用の追加エピソードがあるためかKADOKAWAから刊行されたシリーズ20周年記念誌では3rdシーズンに含まれているが便宜上ここに記載。
紙媒体として既に完売した15周年記念のファンブックにも記載されたが、現在も公式ホームページにて無料で閲覧可能。
無印.hackは1stシーズンの中心となった作品であり、1stシーズンの作品群で描かれた様々な謎が回収され、事件の全貌が明らかとなる。
旧作.hackシリーズでは伝説的存在、メタ的にも.hackの顔となっておりZ.E.R.O.のキャラクターデザインでもオマージュされている『カイト』が主人公の作品である。
ストーリーとしては、TheWorldをプレイしていて原因不明の意識不明状態に陥った友達を助けるために一般人である主人公が奔走しながら、ゲームに隠された真相に迫っていくという後に続いていく.hackシリーズの基本フォーマットの原点が描かれる。
残念ながらオリジナルである無印.hackはPlayStation2のゲームであり、リマスターも移植もされていないため現在はこのノベライズが公式で追いかけられる二つの手段の内の一つである。
本小説が公開されている公式サイトではしっかり原作ゲーム全四巻の順序立てで記載されており、無印.hackのストーリーを軸にゲーム版では描かれなかった主人公カイトの現実世界での様子を描いたり、3rdシーズンで初登場したTheWorldを開発運営するCC社の重要人物のエピソードなど15年が経過したことで広がりを見せた.hack世界の物語が追加されている。
二つの手段の内の残り一つである次回紹介予定のGULR収録の無印ダイジェスト映像と組み合わせればなんかいい感じに無印をプレイした気分になれるのでなかろうか。(このダイジェスト映像もオリジナル四巻通りに分割して収録されている)
.hack//Liminality
.hack//1stシーズンのゲーム作品、無印.hackの全4巻に同梱されていたOVA
現在はSIGNと同様の環境で視聴が可能。
無印.hackがTheWorldというゲームサイドを描いた作品に対し、こちらは全編現実世界サイドを描いた作品になっている。
ゲームと共通する登場人物がほぼ存在せず(ゲームではモブ同然か、アニメでは上司的立ち位置で名前が登場するのみ)、出会うことのない無関係な他人でありながら同じ事件の謎を解き明かしていく.hackシリーズの相互作用性の真髄を楽しめる。
リリース当時はゲームに同梱されていた(ゲームを買えば必然的にOVAも視聴できる)という仕組み上、ゲーム本編では詳しく語られないTheWorld創生の謎がこちらで語られている。逆にLiminalityでは詳しく語られないTheWorld内の出来事はゲームで語られるという構成になっている。無印とLiminalityは二つで一つの作品と呼んでも差し支えないだろう。
Liminalityは同梱されたゲームの巻数と連動したストーリーとなっているため、今から追うなら新約小説のVol.1エピソード(22話まで)→Liminality第一話→小説Vol.2エピソード(42話まで)→Liminality第二話……という順で追いかけるとGOOD。
.hack//黄昏の腕輪伝説
月刊コンプティークで連載された.hack//1stシーズン漫画作品。通称『うででん』
無印.hackの4年後のエピソードであり、無印の事件が解決した後にTheWorldを始めたプレイヤーたちによる1stシーズンのエピローグ的な作品。
現在は完全版全二巻が電子書籍で配信中。
つまり1stシーズンの一番最後に読めばいい……と思いきや、実はリアルタイムだとこの作品が一番最初に展開された.hackシリーズの作品であり、そして他の作品が一通り完結した後に終わった1stシーズンの作品という特異点のような存在なのだ。(正確には無印完結後に追加で始まった作品もあるが後述する)
「昔、.hackersと呼ばれる伝説のプレイヤーたちが居て……」という体裁で物語が進むため、今からならうででん1巻を新約小説より先に読み、その後に新約小説を読破することで.hackersたちの人物像に迫り、うででん2巻を読んでシリーズが完結するというのが当時に近い体験ができる方法だろう。
平和になったTheWorldが舞台のため、SIGNと比べると特に序盤の作風が180度違うのだがそこは御愛嬌。1stシーズンの真相を知り、うででんを最終話まで読んだ時、あなたの心はホッと満たされるだろう。
うででんはアニメ化がされておりSIGNやLiminalityと同等の環境で配信中である。
しかしこのアニメ版、原作の連載中にアニメ化されたためストーリーが大幅に異なっており、シリーズ作品的にも正史として採用されたのは漫画版のため、時間がない中で追いかけるなら優先度はかなり低い。
作品としては前半は原作のコメディタッチな雰囲気を再現しつつ、後半は.hackらしいシリアスな展開となっていくので興味があるなら。アニメ版の黒幕の設定はここで消費するには勿体ないなかなか秀逸な仕上がりになっている。
1stシーズンの.hackで現在公式から供給されている作品は以上である。
今から1stシーズンを追いかけるなら『SIGN(27話まで)』『新約小説Vol.1』『うででん一巻』の三種を好みの中から触れ、その後Liminalityと新約小説の続きを交互に消化し、後日談としてSIGN28話を視聴。シリーズ完結作品としてうででん二巻を読破するのが良いだろう。
余談
現在供給が絶たれている1stシーズンの作品は
①ゲーム.hack//感染拡大Vol.1~絶対包囲Vol.4
②小説.hack//AIbuster(全二巻)
③小説.hack//ZERO(一巻のみ刊行。未完)
④小説.hack//AnotherBirthもうひとつの誕生(全四巻)
⑤アニメ.hack//GIFT
⑥ゲーム.hack//MOBILE
⑦ゲーム.hack//fragment
の七作品である。
いずれの作品も現在は絶版状態で中古で手に入れるかサービスが終了しており遊ぶ手段がない。欄外ということで軽く紹介していこう。
『.hack//感染拡大Vol.1~絶対包囲Vol.4』は記事中で紹介しているので詳細は割愛。余談なので書いておくが、新約小説には原作からの細かな改変があるためオリジナル版の復刻を望む声はある。
『.hack//AIbuster』の全2巻の読破は中古本でもよければ強く推奨したい。この作品はカイトと並び3rdシーズンまでセルフオマージュされ続ける『フィアナの末裔』の誕生秘話が明かされ、劇中の運営会社であるCC社の中間管理職から見たTheWorldというものが垣間見れる。時系列はSIGNよりも前であり、1stシーズン中はこの作品が最も古い時代を描いた.hack作品だった。
『.hack//ZERO』はSIGNから無印の間の空白の六か月間の物語が描かれ、SIGNの後日談の側面もあるのだが……如何せん未完である。本作の存在があるので今回発表されたZ.E.R.O.のことは間違っても『ドット』を抜いて記述しないよう留意して欲しい。20年ZEROの続刊を待ち続けている亡霊たちが怨嗟の声を上げるぞ。
『.hack//AnotherBirth』はシンプルに無印.hack全4巻をヒロイン視点で描いた小説。無印完結後から2ndシーズンが開始するまでの空白期間中に連載されたため特にこれと言った目新しさはなく、ゲームの登場人物のリアルの姿が描かれたり終盤に「あの時のあの人が実は……」的な種明かしがあるもののかなりマニアックなネタの拾い方をしており、基本的には無印をプレイして(新約小説を読んで)ヒロインのことが気になったら読んでみよう程度である。
『.hack//GIFT』はゲーム全四巻の全巻購入者特典としてプレゼントされたOVA。配布用の単体DVDの他、SIGNのDVD-BOXや後述のゲームの限定版特典として再録されている。作品としてはSIGN29話という位置付けになっているが、その正体は崩れてデフォルメされたキャラクターデザインの無印とSIGNのキャラが暴れ回るシリーズぶっちぎりの問題作である。当然のように配信対象にはなっていない。こんなものを全巻購入してくれた熱心なファンに配るのは正気の沙汰ではないと気づいたのか、2ndシーズンの全巻購入特典OVAは面白味のない至極真っ当な内容になった。また、3rdシーズンのゲーム.hack//Link限定版収録のBlu-rayにはHD画質の本作が収録されているが、ゲームの特典という都合上CEROの規制を受け乳首が黒枠で塗りつぶされた。.fuck!!
『.hack//MOBILE』はフィーチャーフォンアプリゲームである。筆者は当時携帯電話なんて持っていなかったので、姉に頼んでほんの少しだけやらせてもらった程度で中身については全く覚えていない。ので特に書けることもない。シリーズ年表にもほぼ載ることがない存在を抹消されているゲームなので多分知らなくても大丈夫なのだろう。
『.hack//fragment』はPlayStation2で発売されたオンラインマルチプレイ対応のゲームである。無印.hackをベースにオンラインプレイに対応した意欲作で、オフライン用のストーリーモードもあった。現在オンラインはサービス終了済み。
オフライン用のストーリーモードはというと、時系列を無視したお祭りゲーである。このゲームはオンラインとオフラインでセーブデータが共有されるため、全体的なゲームバランスはオンラインモードでレベル上げやアイテム収集を行うことを前提としたものとなっており、稼働するゲーム機を入手できたとしても今からオフラインモードのみで遊ぶにはかなりの苦行。オンラインモードのシステムの都合上リマスターなどの移植も絶望的な状態なのでこのゲームが当時のまま遊べるようになる日が訪れることはまず無いだろう。
更に余談だが1stシーズンのアニメ作品は2002年~2003年製作と画面比率4:3でSD画質のアナログ放送が主流だった時代のアニメなのにも関わらず画面比率16:9のHD製作である……が、配信中の映像ソースが2000年代にバンダイチャンネルで配信されたSD画質のものから更新されておらずBlu-rayBOXも発売されていない。これは後述の.hack//Rootsまで共通している問題のため、版元であるバンダイナムコにはZ.E.R.O.の盛り上がりに便乗してBlu-rayBOXの販売と映像ソースの更新をお願いしたい(15周年でも20周年でもやらなかったからやらないんだろうなあ)
以上1stシーズンの話でした。
2ndシーズン編へつづく。
