自分の仕事が「AI slop」かどうか判別する方法


最近、海外のテック界隈で『AI slop』という言葉がよく使われるようになりました。slopは直訳すると「残飯」や「泥水」のような意味で、AIが大量生成した低品質なコンテンツを指す言葉です。Xのタイムラインに流れてくる中身のないAI生成記事や、どこかで見たような画像、誰の役にも立たないまとめコンテンツ。ああいうものが『AI slop』と呼ばれて嫌われています。

ただ、私はこの言葉を「AIが作った低品質コンテンツ」の話だけで終わらせるのは、正直もったいないと思っているんですよね。なぜなら、本当に怖いのはコンテンツのslopではなく『仕事のslop』だからです。

「AIっぽい成果物」より怖いもの

きれいに整った要件定義書。網羅的なリサーチレポート。ロジックが通っているように見える事業計画。パッと見はふつうにクオリティが高い。でも読み込んでいくと「で、あなたはどう思ったの?」に答えられる部分がどこにもない。AIの出力を軽く整えただけで、作った本人の判断が1ミリも乗っていないんですよね。

これが私の考える『仕事のAI slop』です。そしてこの現象、決して他人事ではありません。生成AIが職場に入ってきてまだ数年ですが、体感ではホワイトカラーの成果物の3割くらいはすでにslop化していると感じます。しかも本人にその自覚がない。「AIで生産性が上がった」と本気で思っている人の成果物が、受け取る側からは「中身がない」と静かに評価を下げられている。この認識のズレが、いま職場のあちこちで起きているんですよね。

slopかどうかは「AIを使ったか」では決まらない

ここで大事なのは、slopかどうかは『AIを使ったかどうか』では決まらないということです。

私自身、毎日めちゃくちゃAIを使っています。リサーチも、ドキュメントのたたき台も、コードレビューの補助も。AIを使うこと自体は完全に正義で、いまどき使わない選択肢はありません。むしろ「AIを使うのはズルだ」みたいな感覚のほうが危険です。

逆に言うと、AIを一切使わず全部手作業で作った成果物でも、slopなものはslopです。誰のためかも分からず、判断も責任も乗っていない仕事は、手作りだろうがslopなんですよね。

考えてみれば、AIが登場する前から『slopな仕事』は存在していました。誰も読まない定例レポート、コピペで回している議事録、前例踏襲だけの企画書。AIはslopを発明したのではなく、slopの生産コストをほぼゼロにしただけです。だからこそ、これまで手間というブレーキで抑えられていたslopが、一気に職場に溢れ始めている。問題の本質はAIではなく、もともと私たちの仕事に潜んでいた「判断の不在」なのです。

すると何が起きるか?

『AIを使ったかどうか』という分かりやすい基準が使えない以上、自分の仕事がslopかどうかは、自分で判別するしかないということになります。そしてこれが想像以上に難しい。slopな仕事をしている本人ほど「自分はちゃんと仕事をしている」と感じているからです。

slopな仕事は静かに評価を溶かす

さらに厄介なのは、slopな仕事は短期的にはバレないことです。

アウトプットの見た目はきれいなので、上司も同僚も最初は気づきません。むしろ「アウトプットが速くなった」と評価されることすらあります。実際、私の顧問先でも「あの人、最近アウトプット量がすごいね」と話題になっていた方がいました。ただ数ヶ月後、経営会議でその方の資料が使われることがなくなっていた。理由を聞くと『読んでも判断材料にならないから』でした。量は増えたのに、影響力は減っていたわけです。でも半年、1年と経つうちに、じわじわと信頼が溶けていきます。「あの人に頼んでも、AIに聞くのと変わらないよね」と思われた瞬間、その人の市場価値は一気に下がります。

マッキンゼーのレポートでも、AI時代に人間に残るのは意思決定と品質管理、そして人柄だと整理されていました。逆に言えば、この3つが乗っていない仕事は、遅かれ早かれAIに置き換えられる。つまりslopな仕事を続けることは、自分から『置き換えられる側』に並びに行く行為なんですよね。

私はPM CareerでたくさんのPMや開発者のキャリアを見てきましたが、この分岐は本当に残酷です。転職市場では、職務経歴書の見た目はもう差がつきません。面接で深掘りされた瞬間に「自分の判断で何をしたのか」を語れるかどうかで、評価が天と地ほど変わる。slopな仕事を3年続けた人は、語れるものが何も残っていないんですよね。AIを使って自分の判断を増幅している人と、AIの出力を運搬しているだけの人。同じ「AIを使いこなしている風」の2人が、2〜3年後にまるで違う場所に立っている。

しかも厄介なことに、この判別は上司や同僚に聞いても答えが返ってきません。slopな成果物を受け取った側は、わざわざ「これslopですよ」とは言ってくれない。ただ静かに、あなたへの依頼の重要度を下げていくだけです。気づいたときには、判断が必要な仕事が自分に回ってこなくなっている。

では、自分の仕事がslopかどうかは、具体的に何を見れば判別できるのか?

slop判定の5つのチェックポイント

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