【散文詩】九龍寨城に迷う
九龍寨城が好きだ。
あの混沌した、蠢く配線の下。
揺れる蛍光灯にどうしても惹かれずにはいられない。
かつての香港に巣食った、無秩序な城。
薄暗く、すれ違うのもやっとの、
水浸しのコンクリートの道。
無差別に貼られた、チラシで埋まる壁に
そっと手を触れてみたい。
九龍寨城が好きだ。
混沌とした、無法地帯だからではなく。
あの無秩序な世界で、
秩序を作り出したエネルギーが。
陽の入らない世界で、笑顔で暮らした人たちが。
人の力やしぶとさが、
あの薄暗い中で光となる。
生きようとする力が作りあげた、
活気の満ちた粗雑な街。
九龍寨城。
足を踏み入れたら出られない。
そう言われたその場所に、
私も足を踏み入れ、帰ってくることが出来ない。
私を何度も呼んでは、
深く。
迷い込んでいく。
