タダ働きの正体
みなさん、こんにちは。
週刊しんきちブログの、しんきちです。
8月も最終週に入りましたね。
残暑どころか酷暑真っ只中、みなさんは元気に過ごせていますか?
私は毎年このお盆前後の連休を、次のステップに向けた準備期間として使っています。
創造力・想像力だけは人一倍豊かなタイプなので、次から次へと面白いアイデアが浮かんでくるのですが、全部を実行するリソースはさすがにありません。
だから、やることはグッと絞って集中する。
逆に優先度が中くらいのものは、無理に急がず、アンテナだけ張っておく。
このバランス感覚が、地味だけど地味に大事だったりします。
さて、まずはちょっとだけ自己紹介させてください。
私は集客プロデュースというサービスをやっていて、伴走型で皆さんのセルフプロデュースをお手伝いしています。
もともとWeb制作を長くやってきた人間で、今もノーコードツール「Studio」を使ったサイト構築を生業のひとつにしています。
この週刊ブログは、その1週間にあった出来事をもとに、私なりの価値観や考え方を綴っているだけのものです。
正解・不正解はみなさんが決めることなので、「役に立ちそうだな」と思ったところだけ、「自分だったらどうするか」を考える材料にしてもらえたら嬉しいです。
今日のテーマは、ずばり「タダ働きの正体」です。
「そんなつもりはなかった」
「ちょっとお願いしただけ」
悪気のない一言が、気づけば誰かの時間をタダで奪っている。
そんな現場、実は身近にたくさんあります。
今日は、私自身の制作案件で起きた出来事をもとに、その正体を一緒に暴いていきたいと思います。
テーマは「時間と対価」、そして「期日を軽く見る人たち」についてです。
もしあなたが、
・過剰な業務を振られて疲弊している下請け・外注の立場の人
・外注先をなぜか"部下"のように扱ってしまっている発注側の人
・「期日くらい多少遅れても大丈夫でしょ」と思っているタイプの人
このどれかに当てはまるなら、たぶん今日の話は他人事ではないはずです。
実際に私の身に起きた制作案件のドタバタ劇を題材に、じっくり掘り下げていきます。
事の発端は「たった2週間の高単価案件」だった
最近、私が関わっている制作案件で、ずっと引っかかっていることがあります。
それは「対価」の話です。
今回のプロジェクトは、クライアント → 制作会社A → 制作会社B → 私、という流れで進んでいました。
私の役割はシンプルで、すでにデザインされたものをノーコードのStudioで構築すること。
制作会社AはStudioの機能特性をあまり理解していなかったので、構築にあたって「これは機能上できません、代わりにこうしましょう」という代替案の提示も、実質私が担っていました。
当初の依頼は、6月25日納品。
構築期間はわずか2週間ほど。
ただし報酬は50万円(仮)という条件だったので、2週間で50万円ならかなり良い仕事だと判断し、そのスケジュールでコミットしました。
そして私は、2週間の期限のところを1週間で仕上げて提出しています。
ここは自分でも誇れるところで、構築スピードには自信がありました。
ところが、しばらくすると「デザインの揉み直し」の連絡が届きました。
あれ、デザインFIXしたはずでは…?
と思いつつ対応。
次にデザインがFIXしたのは、なんと1か月後の7月末でした。
しかも、FIXしたと言われた状態を見てみると、まだダミーテキストが残っている箇所がちらほらある。
まあ、クライアント自身が後からテキストを入れるならそれでもいいかと考え、調整して進めました。
ここまでの流れを時系列でまとめると、こんな感じです。

表にして見返すと、当初「2週間」だった予定が、気づけば2か月近くに膨れ上がっていることがよく分かります。
ここがまさに、今日いちばん伝えたいポイントにつながっていきます。
「時間を戻して」の一言に隠れた本当の問題
8月17日
制作会社Aから「8月12日時点の状態に戻してほしい」と連絡が来ました。
理由を聞くと、クライアントが制作会社A、また制作会社Bや私に何の連絡もないままStudio上でテキストを直接変更していたそうです。
当然、知らされていない私は、その変更を「またデザインが変わったのか」と受け取り、FIX版に合わせて戻してしまいました。
さらに厄介なのは、クライアント自身も「自分が何をどう変更したか覚えていない」状態だったこと。
だから履歴を遡ってバージョンを戻してほしい、という話になったわけです。
でも、ちょっと待ってください。
過去の状態に戻すということは、その間に私が積み上げてきた作業も一緒に巻き戻ってしまうということです。
「私のあの時間は、いったい何だったんだ」という話になってしまいます。
そこに制作会社Bが出してきた案が、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』さながらの提案でした。
「履歴で過去に戻ってスクリーンショットを撮り、現在に戻ってからそのスクショを見ながらクライアントに再入力してもらう」というものです。
しかも、それが本当に実現可能かどうか、検証してほしいとまで言われました。
検証した結果を制作会社Bが制作会社Aやクライアントに
「こういうリスクがあります」
と説明したい、というのが彼らの言い分です。
……ちょっと、おかしくないですか?
今回の依頼における私の役割は、あくまで「デザインを構築すること」です。
この検証にかかる時間は、そもそも見積もりのどこにも入っていません。
そもそもこうした事態が起きうることを想定し、事前に指示を出しておくのがディレクターの仕事のはずです。
それを、たまたま構築スキルがあるという理由だけで、私に丸投げしようとしている。
ここに、大きな違和感がありました。
時間をかけるほど、単価は静かに下がっていく
ここで少し立ち止まって、「時間と報酬」の関係を数字で見てみましょう。
文章だけだと実感しづらいので、簡単な表にしてみます。

見ての通り、報酬額そのものが変わらない以上、時間をかければかけるほど「実質の時給・月単価」はどんどん下がっていきます。
当初1か月分の仕事だと思って引き受けたものが、ズルズルと引き延ばされることで、気づけば割に合わない仕事へと変質してしまうのです。
これは今回の私の案件だけの話ではありません。
フリーランスや個人事業主として仕事をしている方なら、似たような経験は一度や二度ではないはずです。
「ちょっとした修正だから」
「すぐ終わる話だから」
という言葉に乗せられて対応し続けた結果、気づけば単価が半分以下になっていた、なんてことは珍しくありません。
時間は有限です。
そして、こちらの時間を使うということは、同時にこちらの人生の一部を使ってもらっているということでもあります。
ここへの意識が低い発注者は、悪気なく相手の人生の時間をどんどん削っていることに、案外気づいていません。
「ビジネスだから」の一言が、なぜ響かないのか
今回のやり取りの中で、制作会社Bの担当者から言われた一言が印象に残っています。
「そんなに感情的にならずに、ビジネスですから」
正直、この言葉には強い違和感を覚えました。
ビジネスだからこそ、決めた期日はきちんと守るべきではないでしょうか。
今回の案件も、デザインを揉み直して行ったミーティングの後、あらためて設定した納品日は8月18日でした。
しかし、今日は8/23。
正直なところ、まだ納品できる感じがまったくしていません。
もし私の構築作業が納期に間に合わなかった場合、状況によっては損害賠償の話にまで発展した可能性もあります。
会社によっては、実際にそうなるところもあるでしょう。
なぜなら、Webサイトを公開してから何人の訪問者が来て、どれだけお問い合わせにつながったかという数値を追いかけ、それを売上に直結させる方針の会社であれば、納期遅延はそのまま経営上の損失に直結するからです。
会社の存続がかかっているのですから、そのくらい厳しく捉えるのも理解できます。
私自身は、構築のスピードには自信があり、これまで納期に遅れたことは一度もありません。
ただしそれは、要件定義がきちんと固まっていて、「デザインがFIXしたら基本的にはもう修正しない」という、構築する側への配慮があってこそ成立しているものです。
協力がなければ、どんなにスキルがあっても実現はできません。
今回の案件のように、エンドレスに揉み直しが続き、ダラダラと進んでいく状態であれば、こちらとしてもそこに割くリソースの優先度を下げざるを得ません。
追加費用の件はすでに制作会社Bの担当者に伝えていますが、返答はないまま、検証作業だけを求められ続けている状態です。
担当者は「軽くやればできそうだから」と言うので、私は「では、それでいいのではないですか」とだけ返しています。
会社員と個人事業主の、決定的な違い
ここで、あえてはっきり言っておきたいことがあります。
私が会社員として毎月決まった月給をもらっている立場なら、多少の雑用を引き受けることもあるでしょう。
それも組織で働くということの一部だからです。
しかし、個人事業主として仕事を受けている以上、私にとって「時間=対価」以外の何物でもありません。
ディレクション費用としてきちんと支払っていただけるのであれば、割に合う話なので対応します。
逆に、それがないまま「ついでにこれもお願いします」が積み重なっていくのであれば、それは事実上のタダ働きを強いられているのと同じことです。
今回の件をまとめると、関係者それぞれの役割分担が最初から明確になっていなかったことが、根本の原因だったように思います。
特に、制作会社Bの担当者自身が忙しいのかどうかは分かりませんが、面倒事をすべて私に振ろうとしてくる。
その振り方も、正直かなり雑でした。
だからこそ、余計に「押し付けられている」という感覚が強くなってしまったのだと思います。
疲弊している下請けさんへ ──
あなたの時間には、ちゃんと価値がある
ここからは、それぞれの立場の方に向けて、もう少し踏み込んだメッセージを書きます。
まず、過剰な業務を振られて疲弊している下請け・外注の立場の方へ。
「これくらいならすぐできますよね」
「ついでにお願いします」
という言葉は、悪気なく発せられていることも多いです。
だからこそ厄介で、断りづらい空気が生まれます。
でも、あなたの時間には、他の誰かの時間と同じだけの価値があります。
無償の対応を重ねれば重ねるほど、実質の単価はどんどん下がっていき、最終的に疲弊するのは自分自身です。
対応するかどうかを判断する軸は、シンプルにこの2つで十分だと考えています。
・追加の対応に、見合うだけの追加費用や時間的猶予が用意されているか
・その対応が、当初の契約や見積もりの範囲内に収まっているか
この2つのどちらも満たされないまま「とりあえずお願い」と言われたときは、一度立ち止まって「これは追加費用が発生する範囲になります」と、冷静に伝えてみてください。
感情的にならず、淡々と事実として伝えるだけで十分です。
それだけで、相手の受け取り方も変わってきます。
外注先を部下だと思ってしまっている発注者の方へ
次に、外注先を無意識のうちに"部下"のように扱ってしまっている発注者の方へ。
社内の部下であれば、多少の雑務をお願いしても、それは雇用契約や給与の範囲内で吸収される話です。
しかし、外部のパートナーに同じ感覚で依頼をしてしまうと、それは相手にとって純粋な持ち出しになってしまいます。
今回のケースのように、検証作業や仕様変更のリスク管理は、本来ディレクターやプロジェクトマネージャーが担うべき仕事です。
それを「できそうな人に振ってしまえばいい」という発想で外注先に丸投げしてしまうと、短期的には楽でも、長期的にはその外注先との信頼関係を確実に削っていくことになります。
優秀なパートナーほど、静かに離れていくものです。
期日を軽く見てしまっている方へ
最後に、期日や約束を「多少なら仕方ない」と軽く見てしまっている方へ。
時間は有限です。
そして期日というのは、自分だけでなく、関わる全員の時間を拘束する約束事でもあります。
期日を守らないということは、本人だけでなく、他者の時間まで同時に奪ってしまっている可能性がある、ということをぜひ意識してみてください。
これから加速していくAIの時代、スケジュール管理そのものはAIに任せる場面が増えていくはずです。
でも、そのスケジュールを実際に守るかどうかは、最終的には人間本人にしかできません。
ここへの意識があるかどうかが、これからの時代、信頼される人とそうでない人を分ける、大きな差になっていくと私は感じています。
結局、大事なのは「プレゼン力」と「伝え方」
今回の一連の出来事を振り返って、あらためて感じたのは「プレゼン力」「伝え方」の重要性です。
私が普段から大切にしているのは、話し相手の頭の中に、こちらが伝えたい内容がきちんとイメージできているかどうかです。
イメージできて、なおかつそれが楽しそうだと感じてもらえたら、印象にしっかりと残ります。
印象に残れば、似たような場面に出くわしたとき
「そういえば、あの人がこんな話をしていたな」
と思い出してもらえる。
これは、単純接触の回数を増やすこと以上に、相手の記憶に残るための大切な行動だと思っています。
そして、こうしたコミュニケーション力の土台になっているのが、実は「ペイフォワード(先ギブ)」という考え方です。
ペイフォワードとは、相手のことを想って先に行動することです。
ただし、これは中途半端にやると効果が薄く、逆に一方的にやりすぎると「余計なお世話」になってしまう、非常に塩梅が難しいものでもあります。
こればかりは、経験=場数を積むしかありません。
誰かのロジックをそのまま真似したところで、にわか仕込みではなかなかうまくいかないでしょう。
スキルというのは、一朝一夕で身につくものではないからです。
だからこそ私は「集客プロデュース」というサービスを通じて、皆さんに伴走型でセルフプロデュースをお手伝いしています。
発注する側もされる側も、一度「自分ごと」として考えてみてほしい
これを読んでくださっている皆さんは、発注する側でしょうか、それとも発注される側でしょうか。
どちらの立場であっても、お互いの状況や事情への理解を示しつつ、自分の意思ははっきりと伝えたほうが、結果的に良い関係を長く続けていくことにつながります。
今回の私の案件のように、役割分担が曖昧なまま「なんとなく」で進んでしまうと、必ずどこかで歪みが表面化します。
その歪みは、たいてい立場の弱い側、つまり時間を切り売りしている個人事業主やフリーランスに押し寄せてきます。
だからこそ、発注する側も、される側も、一度自分ごととして今回の話を捉えてみてほしいのです。
「これくらい大丈夫だろう」
という小さな油断が、積み重なって大きな信頼の崩壊につながることを、私自身、身をもって経験しました。
時間は、誰にとっても平等に有限です。
そしてその時間の使い方こそが、そのまま対価につながっていく。
ここへの意識をお互いが持てるかどうかで、仕事の質も、関係性の質も、大きく変わっていくはずです。
タダ働きの正体とは、結局のところ
「誰かの時間への想像力の欠如」
なのだと思います。
悪意はなくても、想像力がなければ、人は簡単に誰かの時間を奪ってしまう。
逆に言えば、そこに想像力さえ働かせられれば、防げるトラブルはたくさんあります。
それでは、また来週!
もし今回のような外注先とのトラブルや、期日・対価の設定で困ったことがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
