小さい嵐とお下がりのカーディガン
長男を出産した時、実家に里帰りしていた。
そのときの、長女の面倒は私の父がよくしていた。家のことや、私のこと、祖母の事で忙しい母。
退職していて、自由にどこでも動き回っていた父。
その父が、いろいろと長女を連れ出してくれたり、お風呂に入れてくれたり、なんと、寝かしつけまでしていた。
あ、寝かしつけは、母もついていたけどね。(父は絵本読んであげたら速攻で寝ていた)
お経のように聞こえてくる、父の棒読み絵本読み。実家暮らしの妹と「お父さんがそんなことするなんて!」驚いていた。
長女は、意外と環境に振り回されない性格なのか、どこででも、誰とでも居れたので、「ママがいい」と父、母を困らせるような事がなかったので、ますます良かった。
もりもり食べるし、食べるとすぐ出る。
なかなか寝付かないが、一度寝付くとどうやっても起きない。
お風呂に連れて行く時や、遊んでいるのを途中でやめさせられるときの長女の嫌々っぷりが激しいのを見て父は
「あいつは快食快便だな。そして嵐のようなやつだ。」
とよく言っていた。
それを聞いた親しい親戚は、すごいせっかちで、気づけばもう居なくなっている父を
「自分も嵐のようなくせして…」
と言っていた。
父が長女を連れてその親戚の家に遊びに来ると
「大きい嵐が小さい嵐を連れてきた」
と言って笑っていた。
そんな小さい嵐も、少しずつ成長してきた。
少しは落ち着いてきたかな?
去年、妹が職場の人から
「お下がりをもらってさーよかったら長女ちゃんにって」
と職場の人の娘さんのお下がりを持ってきてくれた。綺麗に着てあって、可愛いものもいくつもあった。
その中に、肩にフリルのついた、グレーの薄手のカーディガンが入っていた。
可愛いな。
服に無頓着な長女には着やすさ第一なシンプルな服を選んで買っていたので、こういうのは珍しかった。
まだそのときは冬だったので、春先に着せてみようと長女が着ている姿を想像して楽しみにしていた。
そして、とうとう薄手のカーディガンでもいける季節になってきた。
運動が得意ではない長女が、補助輪なしで自転車に乗れるようになった。
それが嬉しくて、休みの日や学校から帰ってきてから自転車を庭で乗り回すことが増えた。
その日も
「自転車乗ってくる」
と言うので、
「ちょっとまだ寒いからカーディガン着ていきな〜」
と、あのフリルのついたカーディガンを取り出してみた。
とうとう、このカーディガンの登場だ!
「可愛い〜♡」
と長女も着ながら言った。
長女ちゃんでも、服を可愛いと思う気持ちがあったのか…🥹
と内心思ったが、私も可愛いカーディガンを長女が着るのを少しわくわくしていた。
そして、長女がカーディガンを着たのを見た。
フリルって、可愛いとか華やかなイメージを持っていた。
でも、なんだろう?
え?
強そうに見える。
心なしか、防御力と攻撃力がアップしたような、、
違う。
長女が着ているのはフリルのついた薄手の可愛いカーディガンだ。
でも、その長女を見て思い浮かぶのは、
「北斗の拳」
あの、有名な少年マンガ。
その「北斗の拳」に出てくる、敵役の着ている、肩に鋭いトゲのようなものを突きだしている服。
見るだけで怖い。いざ、こっちが攻撃しようとすると、自分に刺さってしまう危険性がある、防御と攻撃を兼ね備えたあのベストのような服。
それを思い出してしまう。
違う、違う、違う。
長女が着ている服は、フリルのついた可愛いカーディガンなんだ。
そして、長女は、嬉しそうに可愛いカーディガンを着て、自転車を乗り回す。
見ているこっちがハラハラするくらい、自転車をこいで、こいで、こいで、ビュンビュン風をきって走っていく。
まるで小さな嵐のように。
その日仕事から帰ってきて、長女を見たパパが、「なんか、今日長女ちゃん…」と言って、口をつぐんだ。
きっと、私はもう、あのカーディガンを積極的に勧めたりはしないだろうな、とパパの表情を見ながら思った。
