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役定で犬服づくりを始めました♯9(ミシン屋の職人さん)

ヤフオクで手に入れた古ぼけた職業用ミシン君。 汎用の電源コードとメルカリで届いた新品のフットコントローラーを繋ぎ、
針は虚しく上下に動くものの、生地がまったく前に進まない。送り歯が死んでいる……!?

「やっぱりだめかぁ……」

あまりのショックに呆然としながらも、あきらめきれない僕はYouTubeで「ミシン DIY 分解掃除」の動画を検索。動画を見ながら恐る恐るカバーを開けてみました。

しかし、素人の僕がパッと見たところで、何が決定的な原因なのかサッパリわからない。 「これ以上分解を進めたら、二度と元に戻せなくなるやつだ……」と察し、DIYでの修理は即座に断念しました。

藁にもすがる思いで、僕はその重たいミシン君を抱え、隣町のミシン屋さんへ駆け込みました。

お店に持ち込むと、対応してくれた店員さんは僕の持ってきたミシンを見るなり苦笑い。 「……まずは中を拝見しますね。一週間ほどお時間をください」と言われ、トボトボと店を後にしました。

それから2日後、店から電話がかかってきました。

「もしもし。……いやぁ、まずね、とんでもないもの持ってきたね? どうしたのこれ?」

声の主は、お店のベテラン職人さんでした。 「あ、あの……オークションで落札しまして……」と白状する僕に、職人さんはため息まじりに語ります。

「あ〜、オークションで変なの掴まされる人、本当に多いんだよねぇ。で、いくらまでなら出せる? 普通の状態にまで直すなら、新品買った方が安いレベルだよ」

「に、2万円までなら出せます……!」

僕が苦し紛れに予算を伝えると、職人さんは少し沈黙したあと、

「……わかった。やれるところまで、普通に縫えるようになるかやってみるよ。ただ、自動糸切りとかは期待しないでね」

そう言って電話を切ってくれました。

そして5日後。再び職人さんから電話が!

「ひとまず動くようになったよ。相当ひどい状態だったね。でも幸い、糸切りも動いているよ。」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

歓喜する僕に、職人さんは静かなトーンでこう続けました。

「でもね…。次に不調になっても、もう直せないと思って大事に使ってね

最悪の「修理不能」の通知を覚悟していた分、その言葉は僕にとってまるで「執行猶予」をいただいたかのような救いの響きでした。

「ありがとうございます! すぐに取りに行きます!」

お店に駆けつけると、職人さんから一枚の紙片を渡されました。
そこには、【これをやるとミシンがれます!!』と書かれていました。
・説明書を読まずに使う。
・糸の掛け方が、『最重要!』とは知らず、何となく適当にやっている。
・プーリー(はずみ車)を逆にまわす
・100均の針を使う(職業用ミシンだぞ)
・針をマメに交換しない。折れるまで使う
・ミシンを使いすぎる。使わなさすぎる
・押さえを下して、すぐ縫い始める
などなど。このほか、下糸の糸調子をやたらにするなとか、油のさし方とか、ミシン職人のこだわりを教えてもらいました。

紙片の一部 (ぼかしてます)

要するに『ちゃんと説明書を読んで、自分勝手な使い方をするなよ!』という、別に僕が壊したわけではないのですが、職人さんの愛の説教でした。数か月たった今、この紙片を読み返しても、耳がイタく目から鱗の話もあります。

僕は、急いで家に持ち帰り、電源を入れ、糸を丁寧にセットし端切れを用意して試し縫い。

「カッタン、カタカタカタ……ッ!」

教室で使っていた上級ミシンとはかなり違う、少し不安を煽る動作音ではありましたが、布はぐんぐん前に進み、まっすぐ綺麗に縫えていきます!目飛びもなく、 返し縫いも、諦めていた自動糸切りもバッチリ機能している!

「あー……これで、なんとかなるぞ……!」

安堵のあまり、誰もいない部屋でひとりごちました。 ボロだけど愛おしい、僕の「マイ職業用ミシン」が、こうして我が家にやってきたのです。

(次回へ続く)

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