不倫慰謝料を新NISAに全額ぶち込んでいる話|第1話「彼女の誠実さ」
300万円。
これが、わたしが受け取ることになった慰謝料の金額だ。
最初から弁護士を通して話を進めた。
成功報酬型だったため、支払いは60万円。
最終的に手元に残ったのは、240万円。
それは一括ではなく、毎月5万円ずつの分割払いというかたちになった。
よくあること、でもあるらしい。
当初は正直、不満だった。
まとまったお金があれば、人生の方向を一気に変えられる気もしたし、
何より“分割で受け取る慰謝料”という事実が、感情的に受け入れがたかった。
けれど、月末になると毎回機械的に記帳される、カタカナの振込名と「5万」という数字。
最初は、彼女の名前を見るだけで心臓がバクバクした。
でも、毎月通帳アプリを開くたびに、不思議と苛立ちは消えていった。
代わりに湧いてきたのは、感情では説明できない落ち着きだった。
冷静に考えて、毎月5万円という額は軽くない。
彼女は自分よりもとても若い。
その年齢で、毎月5万円。生活の中から捻出し、こちらに支払い続けている。
わたしはその行動に、誠意を感じている。
一方、別居中の夫はというと──
「今月ちょっと立て込んでいて…」
「来週まで待ってくれないか」
こちらが催促しなければ動かない。期日も守らない。
正直、比べたくはなかった。
でも、現実として──彼女のほうが、よほど責任感がある。
あれから、わたしは仕事をひとつ増やした。
フルタイムではないけれど、それでもどうにかして
新NISAを満額埋めるために、手を動かしている。
数年前のわたしが、今のわたしを想像できなかったように、
今のわたしも、未来のわたしをまだ描けていない。
でも一つだけ決めたことがある。
この出来事を、ただの過去で終わらせないということ。
未来に変えていくということ。
投資とは“過去の代償”を“未来の資産”に変えていく作業なのだと思う。
月末、5万円が振り込まれるたびに、
「このお金は、わたしの未来につながっている」
そう思えるようになってきた。
まだ道の途中だけれど、少なくとも、立ち止まってはいない。
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