訪問介護とぶち壊れていく精神
第1話 甘い誘惑に騙されて…
前の仕事を辞めるより、ずっと前からの話である。
私はある人物から、絶え間なく忍び寄る「甘い誘惑」を受け続けていた。
差出人は、知り合いのおばさま。
彼女は会うたびに、甘〜いトーンで魅惑の悪魔の囁きを投げてくるのだ。
「ねぇ〜、うちの会社は甘〜いよ〜♡」
「仕事なんてラ〜クちんだし〜♡」
「今のところより、絶対に稼げるんだからぁ〜♡」
…………。
当時の私は、鉄壁のガードで固く固く拒否し続けていた。
「いやいやいや、結構です! 本当に大丈夫ですから!」
何度も、何度も断った。
なぜなら私は、過去の苦い経験から「次の転職で絶対に失敗したくない」と強く心に誓っていたからだ。うまい話には裏がある。中年・介護歴◯◯年の直感がそう告げていた。
……ところが、ある日のこと。
おばさまから、ついに**「究極の王手(詰み)」**となる一撃が届く。
「ねぇ〜♡ もう待ちきれなくって〜♡ あなたのことは、すでにお上の方に伝えておいたからねっ♡」
………………え?
待って。
待ってください。
なんで話が進んでるんですか!!??
私、一回も「行きます」なんて言ってない。むしろ毎回全力で断ってたはずだが??
外囲いがエグい。もはやホラー映画の追跡者並みの強引さである。
しかし、来る日も来る日も浴びせられる「甘い言葉のシャワー」と、勝手に外堀を埋められていくプレッシャー。
じわじわと体力を削られた私の防壁は、ついに脆くも崩れ去った。
(……ま、まあ……そんなに言うなら……見るだけ……見るだけなら……)
ついに自分自身へ、禁断のゴーサインを出してしまったのだ。
「……ちょっとだけ、見学してみるか。」
——これが、すべての悲劇の始まりだった。
あの時の愚かな私は、まだ知る由もなかったのだ。
「甘〜いよ♡」という魅惑の言葉の先に待っていたのが、
騙し討ちの早期入社、拷問の歓迎会、ノースペックナビ、2Lのブカブカ制服、早朝5時の爆撃メール、そして地獄の兵糧攻めという、怒涛のパンチラインだらけの修羅場であることを……。
※より読みやすく加筆・修正しました!
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称・出来事は、実在のものとは一切関係ありません。
