見出し画像

気になったニュース考察

先日、コスタリカで日本人が起こした事件があった。
元の記事は以下のリンクだ。

https://www.crhoy.com/ambiente/japones-cazaba-mariposas-en-san-vito-lo-atraparon-con-213-ejemplares-ocultos-en-una-maleta/

このニュースは、日本のネットニュースでも発信されていたので、記事を読まれた方もいるかと思う。

日本鱗翅学会に同姓同名の人物がいるが、同一人物かどうかは不明。
問題は、日本人が不法に野生生物を捕まえて捕まった、という事実よりもむしろ、目的はどうあれ、野生生物を不法に捕まえることに対しての抵抗がない、ということではないかと思う。

コスタリカでは、自然保護区であろうが私有地であろうが、野生生物の採取は全て禁止されている。動物はもちろん、植物も含まれる。
自然保護区のトレイル散策をした際、綺麗な石が転がっていた、美しい葉が、花びらが落ちていた。これも持って帰ってはいけない。
ビーチへ行って貝殻を拾って持って帰ることも禁止だ。
コスタリカでは、自然のもので取っても良いものは写真だけ。
日本語では撮ると取る。スペイン語の場合はTomarという動詞が取るにあたるが、写真を撮るもTomarを使うので、このような使い方を標語にして注意喚起と啓蒙を行なっている。

スペイン語では、野生生物をVida Sirvestreという。
コスタリカには、野生生物保護法という法律が存在し、野生生物(動植物)の保護、保全に寄与している。
多様性の記事でも記述したが、コスタリカは国を11の保全区域に分けている。その区域は環境エネルギー省下部組織である(SINAC)Sistema Nacional de Area de Conservacionによって管理される。
保全区域は、国立公園や自然保護区内に限らず、その地域全体となるため、その区域内で起きた自然環境に関わる事案は、国立公園街であっても野生生物保護法が適用される。
特に、密猟、不法投棄を含む環境汚染、密猟した生物、植物の輸送の取り締まり、国立公園や自然保護区の侵入禁止エリアへの不法侵入。これらの取り締まりを、地元の警察と共にSINACの管理官(パークレンジャー)が行う。
罰則も明確に定められており、密猟に関しては給料の30%以下の罰金、もしくは2年以内の懲役。不法投棄や川への毒の放流などによる環境汚染は2年以下の懲役、密猟された生物の輸送は、給料20%以内の罰金。
これらの刑罰が定められている。
生物学者や大学などの教育機関が、研究目的のため、植物や昆虫の採取を行う場合があるが、この場合は環境省の許可証が必要となり、その発行のためには採取エリアや目的を含め、関わる人物のID情報などを詳細に記す必要がある。その結果、許可が得られた場合、申請区域内のみにての採集が許可される。
野生生物の生息地における生態バランスを壊さないためにも、そこを訪れる人間は、極力介入しないよう、決められたトレイル内のみを歩く、食べ物を与えない、触らない、驚かさない、ということを徹底させることが求められる。
国立公園や自然保護区へのペットの持ち込みも禁止されている。
野生動物への影響を避けるためにも、食べ物やアルコール類の持ち込みも禁止だ。
コスタリカの多くの商業施設、ホテルやレストランもペット禁止は少ない。ショッピングモール内も、犬の散歩がてら訪れる人は多い。
唯一、自然保護区がペット立ち入り禁止だ。
保護区の自然環境を守るための処置である。

このように、コスタリカでは神経質に見えるまで、細かく、厳しく野生生物の保護を行なっている。
しかしそのお陰で、20世紀後半に絶滅が危惧された多くの種が、今世紀に入って数を劇的に回復しているのだ。
世界中からエコツアーで観光客がやってくる、という国の事情もあり、この国の自然環境は貴重な観光資源であり、資産なのだ。

San Vito近郊の風景

冒頭のニュースに話を戻す。
ニュース記事によると、捕虫ネットを改良した罠をあちこちに仕掛け、確認されただけで213匹の蝶を押収したとある。
実際、どんな種類の蝶が押収されて、時価総額3800万円の根拠が不明だが、恐らく、捕まえた蝶の中から選んで捕獲していたのだろうと思われる。
ちゃんとした学術目的、つまり大学なり博物館なり、テレビ局なり、出所のはっきりした研究機関や施設、メディアが主体であれば、許可証を持参している、更には現地に詳しいガイドもいるはずなので事件化は考えにくい。
となると、個人の趣味、もしくは販売目的としか考えられない。
個人の趣味が高じてコレクションを販売する人もいると思うが、そうなってくると商売であり、やはり業者、それも違法業者となる。
コスタリカでの許可無い昆虫採集は、いかなる理由があっても違法だ。
昆虫に限らず、植物、全ての野生生物が対象となる。
魚釣りや漁は場所、期間で許されているが、それでもコスタリカの野生種のエビなどの甲殻類、爬虫類や両生類は厳しく規制されている。
例え知らなかったとしても、違法であり、処罰の対象となる。

日本のニュースを見て、金額が表示されたのを見て、コスタリカ 昆虫 標本 価格 と売ってググってみた。すると、膨大な量のページが出てくる。
中には、”天然種を採取し、標本にしたものです。”という丁寧な但し書きまで振ってあるものある。オークションには膨大な量が出ているが、それだけでなく、Amazonでも出品されていた。
この結果には少し驚いた。
販売業者は、違法にコスタリカから国外へ持ち出されていることを知らないのか、それとも知っていても日本国内では処罰対象にはならないから販売しているのか。
コスタリカ産の生き物で、国外持ち出しが許されているものは、正規のロットナンバーが付いている蝶の標本、お土産用の小さな観葉植物や種。それらに限定される。お土産屋で販売されている蝶の標本は、全て養殖の蝶で、養殖業者は法に則った養殖、標本制作、販売をしている。
野生生物は、商売目的では一切国外へ持ち出す事はできない。
つまり、カブトムシや希少種の蝶、プラチナコガネなど、珍しい野生種が、オークションも含めて販売されている、という事態がおかしいのだ。
販売者がいる、ということはそれだけ需要があって商売が成立しているからだ。

Amazonでも売られている

日本ほど、子どもたちに虫が好きな国民は他にはあまり知らない。
コスタリカでも、日本の子供たちは珍しい生き物や虫を一生懸命、一心不乱に見ている。欧米の子供たちは、親に連れられて何となく来ている感じが多く、子供に関しては、日本人の子供がコスタリカの自然を最も楽しんでいるかもしれない。
私もそうであったが、特に昆虫に関しては、見ると同時に触りたい、持ちたいという気持ちが出てくるのも子供達の特徴で、そこに昆虫採集というジャンルがあるのだと思う。だが、そろそろ昆虫採集というジャンルの遊びを見直してくる時期ではないだろうか。
昆虫採集そのものは悪いとは思わない。それがきっかけで、生き物に興味を覚える、これは素晴らしいと思う。
問題は、採集の後のプロセスをどうするかだ。子供達の当然の行動として、数を競う、どれだけ沢山の虫を集めたら勝ち、のように集めることも多い。で、集めた後、家に持って帰る、その場で捨てる、が殆どではないだろうか。
仮に夏休みの自由研究として、標本作りをし、保存するまでを行う場合もあるだろうが、実際は少数派だ。大抵は、虫を採って集めて、そして満足して飽きて捨てる。これが当然の認識のままに大人になると、虫は無限にその辺にあるもの、野生のものだから、誰がどれだけ採っても文句を言われる筋合いはない。このようになってしまう。

コスタリカは、前述したように、厳しい法律で野生生物の採取を禁じている。
だが、密猟すると罰せられるからしない、というのは、子供時代にその法律が施行されていなかった大人たちの世代で、若者たちは、当然のように誰も生き物を採らない。30年以上続けられた環境教育によって、なぜ採ってはいけないのか、という事が理解されているからだ。ネット社会の現在、珍しい昆虫標本がどれだけ高値で取引されているか、誰でも情報は手に入る。
プラチナコガネムシ、ヘラクレスオオカブト、テナガカミキリ、シロモルフォ、キプリスモルフォ、1万円以上の高値で取引されているこれなの昆虫も、生息地へ行けば見ることは可能であるし、近所の子供が教えてくれることもある。

コスタリカでは生きていようが死んでいようが、国外への持ち出しは違法


これらの希少種も含め、昆虫全般を含めた野生生物が日常的に観察できる環境が維持できている。その結果、観光客たちがそれを見にくることによって、村や地域の経済が潤う。学習することによって、このようなシステムを理解し、そこから自発的に環境保全を考えさせる。
この教育システムが実を結ぶ事で、密猟が減ってきた。
虫や植物を採る、という行為は、側面では自然に興味を覚えさせる有効な手段であるとも思う。昆虫採集をするならば、傷をつけない採集方法、そして元いた場所へ戻すところまで完結させるように教えるべきだろう。
もっと言えば、採るのではなく撮る。見つけたものを写真に撮る。今はカメラが高価な時代でもなく、スマホでも良い写真は撮れる。
ならば、昆虫観察を写真を撮りながら行おう、というようにシフトしていけばどうだろう。上手に見つけた昆虫の写真が撮れた時は、捕まえた時以上の充足感が出てくる。

日本の現状を見ていると、野生に有るものを金に換える、つまり野生生物を利用して商売する、という意識をそろそろやめませんか。強く思うことだ。
春には山菜、タケノコ採り。秋は木の実やキノコ。海では潮干狩り、川ではサワガニや小魚。
日本の自然には幸溢れるものがあるが、決して無限には存在しない。
自身の土地で今晩食べるものを採る、ならばだが、なぜに皆持ち帰れないほどの量を採るのか、遭難の危険を冒してまで採るのか。結論としては売るためじゃないだろうか。
自然愛好家、山好きの格好をしてザックに溢れんばかりの山菜やキノコを持ち帰る。破壊者以外の何者でもない、にも関わらず、当然の権利を謳うのは如何なものか。

法による規制が曖昧だから違反者が出てくる。法整備されていないから違法行為ではない。それは最もな言い分ではあるが、法規制するだけでは対立しか生まない。コスタリカは野生生物保護法を施行したときにそれを学んだ。
法規制されるまでは、田舎の人にとっての野生動物は食糧であり、商品であった。ある日、この法律制定されてから、それらの行為が全て違法となり、山で野生動物を狩っていた人々は密猟者となった。
逮捕もされるし、罰金も課せられる。そして道具は全て没収される。
結果、密猟者たちは取締官、環境エネルギー省へ恨みを抱き、その結果多発したのが放火による山火事だ。90年台から2,000年代初頭にかけては、放火による山火事が頻発し、世界遺産の国立公園内にあるシンボルの古民家も焼け落ちてしまった。
国立公園側の粘り強い対話、そして始まった環境教育プログラム。更にはエコツーリズム推進と共に整備された施設への雇用、森林を所有する土地所有者への補助金。30年近く経って、対話の効果が出てきた。
密猟者は皆無ではない。依然田舎へ行けば多い、が、SINACのレンジャーや地元の協力によって数は減っている。

San Vito付近の自然保護区を臨む

ニュースで捕まった邦人も、実は現行犯でパトロール中の警官に捕まったわけではない。地元民より注意されたにも関わらず、それを無視したために通報された。
本人の気持ちは知らないが、途上国だからと舐めてかかった結果だろう。
日本で外国人が違法に潮干狩りをしている、というニュースが2年前ぐらいにざわついた時があったが、これと同じことをしでかしたわけで、このような行為は何々人だから、というように国籍で区分されるわけでもない。
残念ながら、コスタリカのSan Vito一帯での日本人への信頼度は地に堕ちたと考えざる負えない。

ここでは、行為を断罪するつもりもあまりない、またモラル低下の注意喚起を促しているわけでもない。
捕まった人は、単に運が悪かったと思う程度で、反省すらないだろう。
コスタリカと比べると、日本は遥かに自然の恵みを享受する文化が大きく発展していて、それは素晴らしいと思う。現在のコスタリカはスペイン植民地から独立している国で、もちろんスペイン植民地以前からのインディヘナ文化は多少あるものの、根本は欧米文化であり、採取文化ではなく栽培飼育文化だ。日本のような山野草を食べる文化は、インディヘナから伝わったもの限定で、基本栽培されたものを食べる。
という違いはあれど、やはり享受と略奪は違う、という認識は必要だろう。そろそろメディアを挙げての天然物信仰やめませんか。
無農薬が環境に優しいことも含めてありがたがられている、と同様に、100%天然ものがありがたられている矛盾に気が付くべきだろう。
昔ながらの方法で、共栄共存のなか、必要なだけを獲る、それを生業としている方々がいる一方で、儲かるからという理由で根こそぎ攫ってしまう人々がいるのも事実。絶滅の危機になってから、新しい技術で栽培可能にした。
これは自然の姿ではない。
昆虫や動物も、現地で野生の生態系にいるから美しいし、それを見にくる人がいる。

大人の意識改革は、褒美や罰則がないと中々難しいが、子供には、そもそも意識改革は必要ない。意識を埋めれば良いから、素直に新しい考えが入っていく。
これからの時代、特に子供たちへ何をどう教えていくか、これの重要性を痛感した。


ここから先は

0字
ガイドブックには載らない情報、深掘りした内容の記事が中心です。 自然、観光、政治や文化、生活、そして私の日常の雑感などから、テーマを決めて更新します。 記事に掲載する写真は、ご自由にお使いください。 コメントにて知りたい情報等がありましたら、お気軽にお寄せください。

Sloth Lifeを目指して

¥800 / 月 初月無料

20年以上過ごしているコスタリカより、コスタリカを訪れたい人、リアルなコスタリカを知りたい方への情報発信をします。コスタリカは、現在世界中…

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?