WIndy 21歳、大学生の夏の夜
東京に出てきて三年目のある夜、音楽サークルの練習が終わるころには、街の空がすっかり暗くなり始めていた。

「盛り上がってすっかり遅くなったな」
笑い声の余韻を背に、WIndyはひとり駅へ向かって歩き出す。
ふと耳に届いたのは、祭りの太鼓の音。
そういえば、東京に来てからお祭りに行ったことがなかった。
「まあ、祭りといえば福岡が一番だけどな」
そうつぶやきながらも、足は自然と音の方へ向かっていた。
屋台の明かり、浴衣の人々、甘いソースの香り。
見上げると、夜空に煙がゆらめいている。

「すごい人だな……博多の祭りとは全然違うけど、これはこれで悪くない」
そのとき、ふと一つの屋台の前で足が止まった。
焼きそばを焼く女性の横顔――どこかで見覚えがある。
(まさか、高校の時のあの同級生?)
思わず列に並び、声をかけた。
「焼きそば一つください」
「はーい、すぐ焼けますからね」
(……気づかないのか?話しかけたら思い出すかな)
「久しぶりじゃん、覚えてる?」
「えっ?すみません、どなたでしょうか?」
……人違いだった。

「ご、ごめんなさい。高校時代の同級生に似てて……」
「あはは、びっくりしたけど、面白いですね。最後なのでサービスしときます、大盛りで!」
「ありがとう。いい思い出になりそうだよ」
その瞬間、空に花火が上がった。
白い光が屋台の煙を照らし、笑顔が一瞬だけ浮かんだ。
(もし本当に再会だったら、どんな気持ちになってただろう)
帰り道、WIndyの頭の中に一つの旋律が流れ始めた。
「♪白い煙が夜に溶けて 君の輝きだけが残る♪」
「♪あの頃知らなかった横顔に 今気づいてしまったんだ♪」
あの夜の花火のように、
音の粒が胸の中で弾けていく――
WIndyの心の中には、風のように音楽が舞い込んでいた。
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