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権限がないのに動かす — 会計士が経営企画で覚えた7つの技術

経営企画への配属が決まった時、私は「指示すれば物事は進む」と思っていた。実際に待っていたのは、誰も私の指示で動かない世界だった。

経営企画には部下がいない。事業部に対する指揮命令権もない。「これをやってください」と言っても、相手は私の部下ではないし、私には相手を評価する権限も、業務を命じる権限もない。それなのに、経営企画の仕事は、全社のあちこちにいる人たちに動いてもらわなければ一つも終わらない。予算を作るにも、計画を引くにも、出資案件を検討するにも、数字も情報も判断材料も、自分の手の中にはない。全部、他の部署が持っている。

この連載では、ここまで「経営企画とはどういう職種か」を無料の記事で書いてきた。5つの顔があること。最初にぶつかる言葉の壁。長期計画がどう作られるか。それらは「経営企画とは何か」という構造の話だった。

この記事は、その続きにあたる。構造ではなく、実践の話をする。権限も部下もない人間が、どうやって全社を動かすのか。私が会計士として事業会社に入り、経営企画で何年か揉まれながら覚えた、7つの技術を書く。

一般的な「社内調整術」の記事は、たいてい「根回しをしよう」で終わる。この記事はそうしない。それぞれの技術が、なぜ効くのかその原理から書く。原理が分かれば、自分の置かれた場面に合わせて応用できる。やり方の丸暗記は、場面が変わると使えない。原理は、変わっても使える。

この記事が答えること

先にこの連載の要点を、二つだけ引いておく。連載を読んでいない人でも、この記事だけで完結して読めるようにしておきたい。

無料の1本目で、私は経営企画には5つの顔があると書いた。そのうち2つが、この記事の前提になる。

ひとつは、部署と部署が仕事を押し付け合って宙に浮いたとき、間に割って入る顔だ。経営企画は、どの事業部の味方でもない第三者の位置にいる。だから「これは会社として決めることだ」と言って、押し付け合いを裁定する側に回れる。自分に権限があるからではない。社長のスタッフだという社内の見方を、借りているからだ。

もうひとつは、事業部が出してくる計画の数字に「その目標、本気か」と値決めをする顔だ。経営企画は会社全体の整合性を預かっているので、一つの事業部の都合だけでは押し切られない立場にいる。

この2つの顔、つまり第三者として割って入る顔と、全体の整合から値決めをする顔が、これから書く7つの技術の土台になる。連載を読んでいればここは復習だし、読んでいなくてもこの2点だけ頭に入れておけば、この先は問題なく読める。

ここから先は、その7つの技術を一つずつ書いていく。動かす前に越えるべき落差から始めて、正当性の借り方、弱い依頼の通し方、数字屋で終わらない方法、決裁会議の勝たせ方まで。順番には意味がある。これから経営企画に入る人が、入る前と入った直後に何を準備すればいいか、その地図になるように並べた。


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