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【#私のお金の使い道】裏ごし器を置いた大晦日。「2本で423円」の金時芋が教えてくれた、新しい親孝行の形

12月29日。私は本来、母の「減塩梅干し」を買いにスーパーへ走ったはずでした。 ところが、お目当ての梅干しは見当たらず、トボトボと歩いていた私の目に飛び込んできたのが、野菜売り場の隅で誇らしげに並ぶ「金時芋」でした。

「2本で423円」 普段の私なら、迷わず隣にある特売品を選んでいたでしょう。けれど、梅干しを買えなかった物足りなさを埋めるように、私はその立派な赤紫色の肌をしたお芋をカゴに入れました。結局その日は「何をしに買い物に行ったのやら」という結果になりましたが、今思えば、あれは運命の出会いだったのかもしれません。

かつて、我が家のお正月には「母のきんとん」が欠かせませんでした。 茹でたての熱いさつま芋を、木べらで裏ごし器に押し当てる母の背中。「なかなかつぶれないねぇ」と笑いながら、額に汗を浮かべていた母の姿。その手間ひまこそが、お正月を彩る「豊かさ」そのものでした。

けれど今、母の手にその力はありません。そして介護と仕事に追われる今の私にも、裏ごし器に向き合う心の余裕は残されていません。

私は、母がデイサービスから帰宅する20分前から準備を始めました。 お芋を丁寧に洗い、水をつけてラップでくるむ。 600Wで2分30秒。その後、少し大きめだったその金時芋に合わせて、200Wでじっくりと16分。

かつての先生が言っていた「遠赤外線の魔法」を、現代の電子レンジで再現する時間。それは、母の帰宅を待つ静かな20分間であり、私にとっての新しい「お正月準備」の時間でした。

玄関のドアが開き、母が帰ってきました。 「お母さん、今日はお正月の予行演習だよ」 レンジから取り出し、湯気の立ち上るお芋を割る。中は鮮やかな黄金色です。一口食べた母は、パッと顔を輝かせてこう言いました。

「美味しいね!幸せだね!」

その言葉を聞いた瞬間、私の胸の支えがスッと消えていくのが分かりました。 手間というフィルターを通さずに味わう、金時芋ダイレクトの甘み。そこには裏ごしされた滑らかさこそありませんが、ホクホクとした温もりの中に、今の私たちらしい「等身大の幸せ」が詰まっていました。

結局、お目当ての梅干しは大晦日の今日、ようやく手に入れることができました。 「生活費に消えていくお金」が大半の日々。けれど、あの日たまたま出会ってしまった423円の金時芋は、私に「今の自分を許すこと」と「母と笑い合う時間の尊さ」を教えてくれました。

形に残るものは何も買えなかった2025年。 でも、この20分間の魔法で生まれた甘い香りと、母の「幸せだね」という言葉。それこそが、私にとって今年最高のお金の使い道だったのです。



実はこのお芋、私にとっては50年前の記憶を呼び覚ます特別な鍵でもありました。そのお話は、こちらの記事で詳しく書いています。↓


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