序章|『休む勇気 人生で一番大事な仕事は「思い出づくり」』
2月3日に『休む勇気 人生で一番大事な仕事は「思い出づくり」』(谷口たかひさ著)が発売となります。インフルエンサーとして、また実業家としても世界を股に掛けて大活躍中の谷口さんが、あえてこのテーマで訴えたかったこととは――。休み下手な日本人に対する、強力なメッセージが詰まった1冊。発売を記念して序章を公開します。
序章
ヨーロッパの
日曜日は
異様な光景
僕は30歳を機に、ヨーロッパでやりたいビジネスがあり、ドイツに移住して起業しました。
そのドイツでビックリしたことの一つは、土日(とくに日曜日)は、とにかくどこも店が閉まっているということです。
開いているところがまったくのゼロ、というわけではありませんが、本当に驚くくらい開いている店が見当たりません。
だから金曜日や土曜日の夕方になると、週末に備えて買いだめをしようとする人たちの行列がスーパーを賑わせます。
僕は当時あまり曜日感覚がない生活をしていたので、買いだめをするタイミングをよく逃しては、家に残っていた食材だけで何とか間に合わせる週末を送っていました。
当時の僕はドイツでビジネスをしていたので、とても単純な考えですが、地元の人たちにこうたずねたことがあります。
「土日はどこの店も閉まっているんだから、土日に店を開けたら、競争相手がいなくてメチャクチャ儲かるんじゃない!?」
どの人に聞いても、返ってくる答えは同じでした。
「そりゃ儲かるんじゃない? だけど、土日の家族とのかけがえのない時間を犠牲にしてまでお金を稼いで、いつ何のためにそのお金を使うのさ?」
これに、とてもハッとさせられたことを覚えています。
その他、アジアの国々にも少し住んだことがあるのですが、同じ質問をすると、ドイツで返ってきたのと同じような答えが返ってきました。
逆に「稼げるなら」と、時には遅くまでだろうが土日だろうが働くという人は、日本とアメリカに多いように感じます(主観です)。
日本では、億万長者になりたいというより、「お金がないととにかく不安だ」という人が増えているように感じます。
どちらが良い悪いとかではなく、人それぞれの価値観でいいと思いますが、僕個人としては次のように思います。
儲けたお金で、寿命が延びるとかなら話は別かもしれませんが、人が生み出した紙切れにそこまでの力はありません。
であれば、大切な人と過ごすかけがえのない時間や、取り戻せない若さや健康をともすれば犠牲にしてまでお金を稼ぐことに、どれほど意味があるのでしょう。
いくら稼いで、通帳の数字や、目の前のお金や資産価値の高いものに一喜一憂したところで、急な事故や病気で死を迎えれば、それらは何の意味もなさなくなります。
そう考えると、「人生の究極の宝物」はやはり思い出であり、大切な人たちとの時間や繫がりなのだと思います。
0か100かといった極端な話をしたいわけではありません。働いても働いてもギリギリの生活がやっとという状況にある人も、少なからずいらっしゃるかとは思います。
これは頭の隅に置いておいていただきたい、「人生の優先順位」の話です。
お金よりも大切なものはたくさんあるが、そのすべてにお金がかかる。だけど、「お金が優先順位の一番」になってしまったら、あなたはお金よりも大切なものを失ってしまう。
では、お金より大切なものとは一体なんなのでしょうか?
「お金より大切なもの」を僕に思い出させてくれたのは、僕より年下のオーストラリア人の女性が書いた、一通の手紙でした。
27歳の彼女が、ガンでこの世を去る直前に遺した『私が死ぬまでのノート』という手紙です。
少し長くなりますが、この本を読み進めていただくにあたって、最初にどうしてもこちらを紹介しないと始まらないと思いましたので、読んでいただけると幸いです(翻訳は僕が行ないました)。
26歳で命に限りがあるということに気がつき、それを受け入れなければいけないのは、変な気持ちです。
それは、あなたが無視していることの一つでしょう。
ただ何となく過ぎていくその日々が、この先もずっと続くと、あなたは思っていることでしょう。
そうではなかったのだと、否が応でも気づかされる出来事が起こるまでは。
私は、年をとって白髪でシワだらけになり、(子だくさんの)美しい家族に囲まれている未来があると信じて疑いませんでした。愛する人と共に、人生の計画を立ててきました。 心の底からそれを望んでいたから、今も胸が痛い。
人生は、とても儚く、貴重で、予測できないことが起きるものです。一日一日は当たり前ではなく、一日一日がギフトなのです。 私は今27歳になりました。 まだ死にたくない。 私は私の人生が大好きです。 それは、愛する人たちのおかげです。
だけどもう、どうすることもできないのです。
この、『私が死ぬまでのノート』は、あなたに死をおそれてほしくて書き始めたのではありません。
死が必ず訪れるものであるということに関して、私たちはほとんど何も知らないという事実が私は好きです。 私が死について話そうとする時、その話題が「タブー」として扱われることを除いては。それは辛かった。
私はただあなたに、人生の大きさからすれば小さくて、無意味なことに気をもんだり、ストレスを感じてほしくないのです。
私たちはみんな、いずれ死ぬ運命にあることを忘れず、限られた時間を、有意義で偉大なことに使ってほしいのです。しょうもないことに、時間を使ってほしくないのです。
この最期の数ヶ月、私は人生について深く考える時間をたくさん持てたので、私の考えをたくさん書き遺しておきます。 もちろん、これらのことが頭に浮かんでくるのは、だいたい夜中です!
あなたがバカなこと(この数ヶ月で、本当にバカだったなと思うことがたくさんありました)に泣いているヒマがあったら、本当に困っている人のことを考えてください。 そしてあなたの問題はちっぽけであったことに感謝し、乗り越えてください。
腹が立っているということを認めてもよいですが、それを引きずらないでください。それは他の人の時間にも悪い影響を与えますから。
腹が立ったときは、一度そこを離れて外に出て、深呼吸して肺に空気を入れ、空がいかに青くて、木がいかに緑かを見つめてください。それはとても美しいですから。
そして、あなたがそれをできるということが、いかに幸運であるかを考えてみてほしいのです。ただ、呼吸ができるということが、いかに幸運かを。
あなたは今日渋滞につかまったり、あなたの可愛い赤ちゃんのおかげでろくに眠れていなかったり、美容室で髪の毛を切られ過ぎてしまったかもしれません。
ネイルが欠けていたり、胸が小さかったり、お尻にセルライト(肥大した皮下脂肪に老廃物が付着したもの)ができたり、お腹が出ているかもしれない。そういうことは、すべて気にしないでください。
私が約束しましょう。あなたも自分の番を迎える時には、そんなのは1ミリも気にならないということを。一生から見れば、それらは本当にどうでもいいことなのです。私は目の前で自分の糞尿を持ち去られるのを見ていますし、それに対して何もすることができません。
だけど私が願うのはそんなことより、あと一度だけ、誕生日やクリスマスを自分の家族と過ごすことです。あと一日だけ、私のパートナーと犬と一緒に過ごすということです。あと一日でいいから。
私は、いかに仕事が酷いかや、運動が辛いかについて人が文句を言っているのをよく聞きます。 だけど、あなたはそれができる身体であるということに感謝してほしいのです。
仕事や運動ごときで感謝なんて、と思うかもしれません――。
あなたが、それらができない身体になってしまうまでは。
私は健康に生きることに情熱を燃やしてきました。だからこそ健康であり、身体が動くということを喜んでください。 たとえ、体形があなたの理想ではなかったとしても。
身体に気をつけて、身体があるということを喜んでください。 身体を動かして、新鮮な食べもので栄養を身体に与えて、色々な物への執着心は、できるだけ減らして。
そして健康とは、身体だけではないことを忘れないでください。精神的にも、目に見えない幸せを見つける努力もしてください。
そうすれば、SNSで見るような、つくりものの身体がいかにしょうもないものかにも気がつけるでしょう。
SNSに関して言えば、あなたがイヤな気持ちになる投稿があがってくるアカウントはブロックしましょう。 たとえそれが、友だちのアカウントであろうとも。あなた自身の心身の健康のために、そこは非情になってください。
ツラいことが起きなかった日は、感謝しましょう。
あなたが風邪や、背中の痛み、足首のねんざなどで調子のよくない日でも、それを受け入れましょう。 気分は最悪かもしれませんが、それらは命に関わるほどの問題ではなく、いずれよくなりますから。
泣きごとばかり言っていないで! お互いに助け合いましょう。 ギブ、ギブ、ギブしましょう。
「自分のために何かをするよりも、人のために何かをしたほうが幸せになれる」というのは、本当ですよ。
私も、もっともっと、人のために何かをしておけばよかった。
私が病に倒れてからというもの、信じられないくらい親切で、私に与えてくれる人たちに出逢えました。 私は、最も思慮深く、愛のある言葉とサポートを、家族や、友人や、知らない人たちから、もらってばかりです。
私にはもう、もらった以上に返すということができないのです。 私はこの恩を絶対に忘れず、永遠にその人たちに感謝し続けます。
死ぬ時に、使っていなかったお金があるというのは、変な気持ちですよ。もうこの世からいなくなるというのに。死ぬ時というのは、お出かけして、新しいワンピースといった物を買うわけではありませんからね。
人生において、物や服などにたくさんのお金を使うことがいかにバカげているか、死ぬ時になって考えさせられました。 新しい服や宝石なんて物を買うお金があるなら、人に何かをしてあげましょう。
1.あなたが同じ服を着ているかどうかなんて、誰も気にしていません
2.人に何かをしてあげると、とても気持ちがいいですよ
食事に連れていってあげたり、自分で食事をつくってあげたりすると、なおいいですね。 コーヒーも淹れてあげてください。 植物、マッサージ、ろうそくなどのプレゼントがいいでしょう。渡す時には、「愛してる」と伝えることも忘れずに。
他の人の時間を大切にしてください。あなたが時間にルーズだからといって、人を待たせて、その人の時間を奪うのはやめましょう。 時間に余裕を持って行動して、あなたと時間を共に過ごしたい人がいることに感謝してください。 時間を守れば、尊敬も得ることができますよ。
今年、私の家族は贈り物をしないと決めました。 飾りのないクリスマスツリーは悲しげでしたが(私がクリスマスイブを台無しにするところだった!)。
それに、想像してみてください。 おそらく渡すことができないだろうと知りながら、私に贈り物を買う人の気持ちを――。 変ですよね! 痛い人と思われるかもしれませんが、一通のクリスマスカードは私にとって、衝動買いするようなどんな物よりも、意味があるのです。
私の家には子猫がいないので、クリスマスは家で過ごすほうが楽でした。 とにかく、有意義なクリスマスにプレゼントのモラルの話なんて不要なので、次に行きましょう。
お金は経験に使ってください――。少なくとも、目に見えるしょうもない物を買うのに使ってしまったから、経験に使うお金がなくなり、チャンスを逃した、なんてことはないように。
あなたがずっと行きたいといっては、これまで行けなかったビーチに行くために使いましょう。 水に足をつけ、つま先を砂に潜らせ、海水で顔をぬらして。自然の中に入りましょう。
写真でそれを切り取ろうなんてしないで、ただその瞬間を楽しむことに集中して。 人生とは、スクリーンを通して生きるものではないし、映え写真を撮ることでもありません。その瞬間を楽しむこと! 他の人にあとで見せるための写真なんて撮らなくていいから。
次の質問には、答えていただかなくて大丈夫ですよ。 毎日毎日、髪の毛のセットやメイクに何時間もかけたり、夜遊びすることは、それほど価値があるのですか? 私には理解できません。
たまには朝早く起きて、日の出が織りなす美しい色を眺めながら、鳥のさえずりに耳を傾けてみてください。 音楽も聴きましょう。真剣に聴くのです。音楽はセラピーですよ。昔の曲が最高ですね。
犬を抱っこしましょう。私もまた犬を抱っこしたくなるだろうなぁ。 友だちとお話をしましょう。スマホは置いて。
友だちは元気ですか? 旅行が好きなら、旅行しましょう。旅行があまり好きでないなら、やめときましょう。
生きるために、働きましょう。 働くために、生きないで。 本当に、あなたが心の底から幸せを感じることをしてください。
ケーキを食べましょう。罪悪感を持たずに。
本当にやりたくないことには、「NO」と言いましょう。
他の人が、充実した人生を送るためにはこうするべきだと思っていることを、あなたもするべきというプレッシャーから、自分を解放してあげてください。 平凡な人生を望んでもいいじゃないですか。
愛する人たちには、ことあるごとに愛していると伝え、それから本当に、あなたのすべてで愛してください。
そして、忘れないでください。 何かがあなたを惨めな気持ちにさせているとしても、あなたは自分でそれを変える力があるということを。 それが、仕事だろうが、愛だろうが、何であろうとです。 「変わる」と心に決めるのです。
あなたがこの地球上にいられる時間が、あとどれくらいかなんてわかりっこないのですから、惨めな気持ちになってムダに過ごす時間なんてないのですよ。
「いつ死ぬかわからないから」なんて、これまで耳にタコができるほど聞いてきたことでしょう。
だけど、これ以上の真理はないのです。 いずれにしても、これはホリーという、一人の若い女性からのアドバイスです。
参考にしていただいても、無視していただいてもかまいません。
ああ、最後に一つだけ、人類(私自身も)への貢献をしてください。
定期的に、献血を始めてください。 あなたをとてもよい気持ちにしてくれますから。それに、命を救うことができるというボーナスも付いていますよ。 一回の献血で三つの命が救えるというのに、その重要性はあまり認識されていません。
一人の人間ができることとして、それは本当に大きなインパクトを持つ上に、とても簡単なことなのです。
献血は、私を一年、生き永らえさせてくれました(どれくらいの回数の輸血をしてもらったか、数えきれません)。 私はこの地球上に一年、生き永らえることができ、家族と、友だちと、犬と過ごすことができました。
私はこの感謝を永遠に忘れません。
この一年は、私の人生の中で、最高の年でした。
では、また逢う日まで。
ホリー(ハグ&キス)
いかがでしたか。この手紙は、僕に本当に大切なものを思い出させてくれました。何度読んでも涙が溢れてくるのは、偽りのない言葉で、人生の真実をあらわしているからなのだと思います――。
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