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聞いたことないのにはワケがある――JR東日本で一番短い鉄道路線「赤羽線」

「赤羽線」の富士道踏切。というか、赤羽線なんて路線、聞いたことありますか?

いろいろ思うところがあって、2日連続でnoteをしたためてしまいました()

以前、“本当の”山手線は環状線ではないという話をしました。その時に、ちょっとだけJR東日本には「赤羽線」という路線があることに触れました。しかし、皆さんJR東日本の駅で赤羽線の案内を見たことはあるでしょうか。恐らくないと思います。強いていうと、みどりの窓口や指定席券売機で乗車券を購入すると経由路線として表示されることがあるくらいでしょうか。

このnoteでは、JR東日本の営業路線としては“最短”で、表立って案内されない赤羽線について紹介したいと思います。


JR東日本の「有価証券報告書」を見れば赤羽線の実在を確認できる

確かにあったよ「赤羽線」

前の山手線のnoteでも触れた通り、日本の鉄道路線には必ず路線名が付けられており、正式な名称と区間は電気車研究会が発刊する「鉄道要覧」か、発行企業であれば「有価証券報告書」の「重要な設備の状況」で確認できます。

JR東日本は株式を上場していますから、有価証券報告書を発行しています。そこで同社の有価証券報告書の重要な設備の状況を見てみると、「線路および電路施設」の項目に赤羽線なる路線の表記があります。その状況は以下の通りです。

区間 : (池袋)~(赤羽)
営業キロ : 5.5km
駅数 : 2

この赤羽線は、「池袋駅」を起点として「赤羽駅」を終点とする路線です。以前も書いた通り、カッコ書きの駅は別路線に所属する駅として計上されているので、純粋な赤羽線所属の駅は2駅のみということになります。わずか5.5kmしかないので、歩きでも1時間ちょっとあれば移動できてしまいます(実際に歩くと、意外と遠回りさせられてもっと時間が掛かるかもしれませんが)。

他線に所属する駅を含めて赤羽線はたった4駅しかないので、全駅を簡単に見てみましょう。

赤羽線の起点「池袋駅」

池袋駅の4番線の赤羽寄りにある、赤羽線の0キロポスト(起点表示)

赤羽線の起点は、東京都豊島区にある「池袋駅」です。池袋駅は山手線に所属する駅で、環状運転系統としての「山手線」で使われる電車の車庫(旧池袋電車区)も用意されています。この車庫には、「埼京線」の車両(ここポイント)や山手線(貨物線)の池袋駅または新宿駅を発着する特急列車用の車両も留置されることがあります。

同駅には東京地下鉄(東京メトロ)の丸ノ内線・有楽町線・副都心線の他、東武鉄道の東上本線、西武鉄道の池袋線も乗り入れており、一部では「埼玉への玄関口」とも言われます。

赤羽線の1つ目の駅「板橋駅」

ギリギリ東京都北区にあるのに「板橋駅」です(改築前の古い写真しかありませんでしたorz)

純粋な赤羽線の1つ目の駅は、東京都北区にある「板橋駅」です。「え、板橋って東京都板橋区じゃないの?」って思うかもしれませんが、実はこの駅は北区と板橋区、そして豊島区の区境に所在しており、駅舎の改築工事前はれっきとした板橋区の駅でした(駅舎の改築で、駅の事務所が北区に所在するようになったので北区の駅に)。

この駅の近傍には東武鉄道東上本線の「北池袋駅」と東京都交通局三田線(都営三田線)の「新板橋駅」があり、新板橋駅については定期券限定で当駅との「乗り換え駅」として指定可能です。

この駅はかつて貨物駅としても営業していました。その跡地の一部を活用する形で、現在では「埼京線」の電車を留置できる側線(また伏線です)が設置されており、「埼京線」を走る電車は一応この駅を始発着とする設定も可能です(定期運転では存在しません)。

赤羽線2つ目の駅「十条駅」

周辺は絶賛工事中の「十条駅」

純粋な赤羽線の2つ目の駅は、東京都北区にある「十条駅」です。名前から察した人もいるかもしれませんが、東北線の電車線(通称「京浜東北線」)の「東十条駅」から比較的近い場所にあります(歩いて10~15分くらい)。

十条駅のホーム前後には踏切があり、その都合から通過禁止駅(※1)に指定されています。現在、これらの踏切を含めて周辺の6つの踏切を撤去すべく、東京都が主体となって高架化工事を進めています(2030年度完成予定)。

周辺は有名な商店街「十条銀座」があったり、東京家政大学があったりと、駅のサイズの割に乗降客は思った以上に多めです。高架化工事が進めば、恐らく規模に見合った立派な駅になるのかな…。


(※1)その名の通り、回送列車を含む全列車が必ず停車しなければならない駅。ホームの直前と直後の両方に踏切がある場合や(十条駅はこれ)、設備の都合で列車が止まらず通り過ぎると危険な場合に指定される。赤羽線を走る快速/通勤快速電車が各駅停車になるのは、十条駅の存在が一因とも言われる。


赤羽線の終点はズバリ「赤羽駅」

試運転で赤羽駅から赤羽線に入っていく相模鉄道(相鉄)の12000系

その名の通り、赤羽線の終点は東京都北区の「赤羽駅」です。赤羽駅は東北線の駅で、同線の電車線(通称「京浜東北線」)、旅客線(通称「宇都宮線」)、貨物線(通称「湘南新宿ライン」)、そして「武蔵浦和駅」経由の支線が一堂に会しています。

赤羽線はこの先、東北線の武蔵浦和経由の支線と物理的に一体化されており、支線の終点である「大宮駅」、そして同駅で支線と一体化している川越線(※2)を介して「川越駅」まで直通運転をしています。

池袋駅の0キロポストが4番線の先にあること、そして直通運転を行うルートを見ると、地元の人なら赤羽線の正体が見えてくるはずです。


(※2)川越線には、大宮駅の東北線(貨物線)の11番線からも直通可能。逆に、川越線からは東北線(旅客/貨物線)の6番線または7番線(いずれも通常は高崎線からの列車が利用)に入線できる。


現在の赤羽線は「埼京線」の一部

通称「埼京線」の運転系統

なぜ赤羽線は実在するのに案内されないのか――理由は思ったよりもシンプルで、現在の赤羽線は「埼京線」と通称される運転系統の一部とされているからです。

以前書いた“本当の山手線”に関するnoteでも触れた通り、何らかの理由で本来の路線名を伏せる(案内しない)ことは意外とよくあります。赤羽線の事例の場合は複数路線にまたがる直通運転系統を分かりやすくするために本名を案内しないのです。

「埼京線」については、あえて下り方面(東京から遠い方)から説明した方がいろいろ分かりやすいので、大宮駅から区間を区切って解説していきます。

大宮~武蔵浦和~赤羽間 : 「大人の事情」あふれる東北線の支線

埼玉県の代表駅にして、日本有数の規模をほこる「大宮駅」

「埼京線」の大宮~武蔵浦和~赤羽間は、東北線の支線として1985年9月に開業しました。今年(2025年)でちょうど40周年です。

この区間は、東北新幹線を建設する際の沿線自治体の反対運動を抑えるために、反対の原因となった騒音の“見返り”として東北新幹線とセット(一体)で建設されたという経緯があります。東北線の支線となっているのは、東北新幹線が東北線の線増部だから、それに合わせてということです(※2)。

大宮駅は東北線に所属する駅で、高崎線や川越線の起点駅でもあります。「埼京線」は当初、宮原駅で高崎線と合流して直通運転を行う計画でした。しかし、「埼京線」の沿線で車両基地を造成すること(土地を取得すること)に失敗したため、車両基地(現在の「川越車両センター」)を確保する目的で川越線に直通させることになりました

当時の川越線は非電化で、11番線と12番線(現在欠番)から発着していたのですが、この支線と直通させるために大宮~日進間のルート変更(ついでに複線化)と(※3)、大宮~川越~高麗川間の電化を行いました。

なお、この支線の完成により、東北線の赤羽~大宮間には「旅客線(宇都宮線)」「貨物線(湘南新宿ライン)」「電車線(京浜東北線)」そして「支線(埼京線)」の4線が並ぶことになりました。支線は武蔵浦和駅を経由するため、他の3線と比べると遠回りですが、いずれもあくまで“東北線”の構成要素です。

なので、東北線の赤羽~大宮間を乗車する(または両駅を通過する)場合は、距離の短い川口・浦和経由で乗車したとみなして運賃を計算する特例があります。途中下車できる乗車券なら、遠回りとなる支線の各駅でも途中下車可能です(ただし、フリー乗車タイプの乗車券を除き、後戻りはできません)。


(※2)新幹線は元々「新しい幹線」という意味で、並行する在来線の線増部として建設されてきました。ただし、いわゆる「整備新幹線」については、並行する在来線の経営分離(別法人への移管)または廃止を前提としたため、一部の例外(並行する在来線がJR線として存続した場合)を除いて独立した路線として建設されています。

(※3)大宮駅の11番線から川越線に入るルートと、日進方面から大宮駅の6番線・7番線に入るルートは、川越線の大宮~日進間が地上を走っていた頃のルートを流用しています。


赤羽~池袋間 : 東北線(支線)と山手線(貨物線)の短絡ルートに

昔は山手線の一部だったんですよ…

今回の主題である赤羽~池袋間は、繰り返しですが赤羽線という独立した路線です。現在でも深夜や早朝には赤羽線区間だけを運転する「埼京線」の電車が存在します。

そして以前のnoteでも触れた通り、赤羽線は元々山手線の一部でした。大ざっぱな沿革を書くと以下の通りです。

  • 1885年 : 日本鉄道が品川~赤羽間に「品川線」を開業

  • 1903年 : 日本鉄道が品川線に池袋駅を設置し、そこから田端駅へと分岐する「豊島線」を開業

  • 1906年 : 日本鉄道が国有化される(戦後、国鉄に改組)

  • 1909年 : 品川線と豊島線をまとめて「山手線」に改称(赤羽方面が本線)

  • 1972年 :国鉄が山手線の池袋~赤羽間を「赤羽線」という独立路線として分離(山手線は田端方面が本線に)

  • 1983年 : 赤羽駅を高架化(東北線支線への直通準備を兼ねる)

  • 1985年 : 新設された東北線支線への直通運転を開始(ここで「埼京線」の通称を使用開始)

  • 1986年 : 「埼京線」の電車が池袋駅から山手線(貨物線)を介して新宿駅まで乗り入れ

ということで、1985年の「埼京線」開業以来、路線名としての赤羽線は次第にフェードアウトしていきました。現在では、この区間が「赤羽線だ」と強く意識して乗る人はいないと思います

ただし、先にも書いた通り、みどりの窓口や指定席券売機で乗車券を購入すると経由路線として表示されることがあります。また、この区間にある踏切や高架橋にはハッキリと「赤羽線」と書かれているため、今でも感じようと思えばその息吹を感じられます。

池袋~大崎間 : 山手線(貨物線)の有効活用策

「埼京線」の池袋駅から先の区間は山手線の一部です

「埼京線」の池袋~大崎間は、山手線の貨物線を走行します。

旧国鉄は首都圏、特に(運行系統としての)「山手線」内の混雑対策に手を焼いていました。そこで「山手線」を担う山手線の電車線に並行している貨物線に着目しました。

先の赤羽線の沿革でも触れた通りですが、1986年から国鉄は「埼京線」の電車を山手線(貨物線)経由して新宿駅に乗り入れさせました。これは武蔵野線の開業によって運行本数が減少した山手線(貨物線)の有効活用策であると同時に、「山手線」の西半分(特に新宿~池袋間)の混雑緩和策でもあります。

この取り組みは山手線(貨物線)の旅客営業本格化の“第一歩”で、国鉄を継承したJR東日本は時間をかけて山手線(貨物線)を走る旅客列車/電車を増やしていくことになります(その辺の話は割愛します)。

山手線(貨物線)における「埼京線」のおおざっぱな沿革は以下の通りです(一部、先の項目と重複します)。

  • 1986年 : 「埼京線」の電車が池袋駅から山手線(貨物線)を介して新宿駅まで乗り入れ

  • 1996年 : 山手線(貨物線)の「渋谷駅」と「恵比寿駅」にホームを新設し、「埼京線」の電車が恵比寿駅まで延伸(恵比寿駅には折り返し機能がないので、恵比寿発着の電車は大崎駅構内まで回送してから折り返し)

  • 2002年 : 山手線(貨物線)の「大崎駅」にホームを新設。これにより「埼京線」の電車が大崎駅まで延伸された。同時に、このホームを介して東京臨海高速鉄道りんかい線への直通運転も開始

  • 2019年 : 「埼京線」の車両を用いた相模鉄道への直通運転を開始(ただし、「埼京線」との直通は朝のみ)

相鉄本線への直通も「埼京線」と案内されますが、“電車”ではなく“列車”として運転されます

2019年11月30日から始まった「埼京線」からの相鉄線への直通運転ですが、大崎駅から東海道線の支線(通称「品鶴線」)に入り、「武蔵小杉駅」の先で東海道線(貨物線)に入り、「横浜羽沢駅」(貨物専用)で連絡線を渡って相模鉄道相鉄新横浜線(※4)の「羽沢横浜国大駅」に至ります(※5)。相鉄新横浜線から先は、「西谷駅」で接続する相鉄本線の「海老名駅」まで直通運転を行います(相鉄いずみ野線への直通は行いません)。

ただし、この相鉄線への直通ですが、車両こそ「埼京線」用のE233系7000番台を使いますが、通常の「埼京線」とは異なり電車ダイヤではなく列車ダイヤで運転されます(駅の発車時刻表や自動案内放送も「電車」ではなく「列車」と出てきます)。

また、乗務員も「埼京線」を担当する部署ではなく、「湘南新宿ライン」の東海道線側を担当する部署が担当します。朝に設定されている(川越~)大宮~新宿間の「埼京線」直通については、新宿駅を境にダイヤの切り替えと乗務員の交代が行われます。担当乗務員やダイヤの話もしたいのですが、割愛します。


(※4)「相模鉄道」と「相鉄」が被っていると思うかもしれませんが、相鉄新横浜線は“相鉄”を含めて正式な路線名です。これは東急電鉄の東急新横浜線(こちらも「東急」込みで正式路線名)と区別する必要があるためです。ちなみに、相模鉄道は厚木線(貨物専用線)を除く全路線に「相鉄」を含む名称を付けています。

(※5)JR東日本から見ると、羽沢横浜国大駅は東海道線の駅とみなされます。また、JRグループの運賃制度における「横浜市内」も適用されます。なお、この辺の話は昔にブログにしたためているのですが、これもちょっと書き直そうかと思っています。


まとめ : 「埼京線」なんて存在しない!!!!!

???「『埼京線』なんて存在しない。正式な名称で(赤羽線と)案内しろ!!!!!」(池袋駅にて)

今回、このnoteをしたためたのは、赤羽線という鉄道路線が存在することと、「埼京線」という鉄道路線が存在しないことを伝えてみたかったからです。何と“どうしようもない”理由でしょう(

ただ、赤羽線と案内すると「赤羽にいけることは分かるけど、そこから先でどこに行けるのか想像しづらい」ということで、「埼京線」のように運行系統を表す通称を押し出すということ自体は良いことです。正式な路線名を意識しないといけないのは「中の人」だけですからね、基本的に。

鉄道の通称にまつわる話は、今後も暇を見つけてやっていこうと思っています。逆に、通称名が嫌いな鉄道会社の話も…。


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