「怖いです」って言うな、チャラボーイ
この間、リハビリの新人チャラボーイが私に向かって、
開口一番こう言った。
「しょうこさん、怖いです」
……え?
今なんて言った?
その瞬間、周りの空気がピタッと止まった。
リハビリの先輩たちはフリーズ。
一緒にいた先生は焦って、変な笑い声を出してる。
で、私?
「へー、そういうこと言うんだ、ふーん。
あーあ。もうショックだから辞めちゃおー。あー、かなしー」
って軽く返した。
冗談半分のつもりだったけど、場の空気が一瞬で緊張。
「おいおい、今すぐ謝れ!」みたいな空気になって、
周りのリハスタッフ全員がそのチャラボーイを見た。
ようやく“地雷を踏んだ”と気づいたのか、
彼は顔を真っ赤にして言った。
「ち、違います!
しょうこさんに、愛してもらえるまで頑張ります!」
……いや、意味がわからん。
「君は私のタイプに1ミクロも掠ってないから、
愛すわけないじゃん」
って返したら、まわりのリハスタッフが大爆笑。
「俺らだって愛してもらうために頑張ってるのに、
お前だけ早いだろ!」
とか言い出して、もはやリハビリ室は学園祭みたいな大騒ぎ。
いや、なんなんだ君たちは。
仕事をしておくれ。
その日から、彼は出勤のたびに私のもとへ来るようになった。
……暇なのか?
「しょうこさん、今日の俺かっこいいですか?」
「もう認めてくれますか?」
「男として成長しましたか?」
まるで犬。
人懐っこいけど、しつこい。
「私より患者さんの移乗が上手になってから言いなさいな」
そう言うと、悔しそうに笑って去っていく。
でもそのあと、ちゃんと患者さんと真剣に関わってるのを見ると、
案外素直でいい子なのかもしれない。チャラボーイだけど。
「怖いです」って言葉の裏には、
たぶん“圧を感じるほど真面目にやってる”ってことなのかもしれない。
そう思っておこう。
それでもやっぱり、次に言う言葉は変えてほしいけどね。
「しょうこさん、今日もお疲れさまです」
くらいでいいのに。
さあ、きっと今日もチャラボーイが尻尾を振ってやってくる。
新しい掲示物を貼るのに私は背が届かないから、今日もお願いしよ。
さあ、チャラボーイ、出番だよ。
