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うまくいった日だけ、ちょっと遠くの“あの店”に行きたくなる

仕事帰り、ふと気づくと、いつもの帰り道じゃなくて少し遠回りしていたことがある。

疲れてるはずなのに、なんでこっちに足が向いたんだろう。駅の反対側、歩くとちょっとだけ息があがる距離にある“あの店”。

今日は、そこに行きたくなった。
なんでだろう、あの味をふと思い出した。

その店のことは知ってる。たまの休みに街を歩いても、昼間のあの通りを歩いているはずなのに、見つけることはほとんどない。
なのに、不思議と──その日の夜だけ、あの店が浮かぶ。

思い返せば、そういう日はたいてい、仕事で何か良かったことがあった日だった。

段取りがハマったとか、気まずい空気を自分から整えられたとか。
「やれたな」って思える何かがあった日。

そんな日は、「あれ、食べて帰ろう」って自然に思える。
あの味が、今日の自分をちゃんと受け取ってくれる気がするから。

逆に、なんとなく流されて終わった日や、ぐったりした日は、
食べることよりも優先したいことがいくつも浮かんできて、
近くのコンビニや、職場のそばの馴染みの店でパパッと済ませてしまう。
早く座りたい、何も考えずに風呂に入りたい。
「食べることですら億劫になる日」って、たまにある。

でも、遠くのあの店に足を運んだとき、
その一皿は、ちゃんと美味しい。
疲れてるはずなのに、なんでこんなに味がするんだろうって思うくらい。

食べるものを選んでるようで、選ばれてるのは、その日の自分なのかもしれない。

──なんでだろう、うまい店って、ちょっと遠くにあるんだろう。
それとも、遠いところにあるから、うまい店なのか。

うまくいった日の味は、たぶん、ちょっと遠くの場所にある。

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