パリで「地図上は近い」ホテルを選んだら、1週間で12時間を失った話
ロンドンの一件から、僕はちゃんと学んだつもりでした。
パリのホテルを予約するとき、僕はまずエレベーターの有無を確認しました。冷房も確認しました。口コミで「shower」も検索しました。編集長に言われたことを、ひとつずつ潰していったんです。
そして自分で追加した条件が、これでした。
「地図上で、ルーヴルに近いこと」
予約サイトの地図を開いて、ルーヴルにピンを置いて、そこから近い順に見ていく。徒歩圏内は高かったので、少し外して、最寄り駅から地下鉄で数駅の宿にしました。乗換案内アプリで調べたら、ルーヴルまで20分と出ました。
20分。上出来じゃないですか。僕は今回もガッツポーズをしました。
学習していたつもりで、僕はまた同じことをやっていたんです。数字ひとつだけを見て、予約ボタンを押した。
「20分」に含まれていなかったもの
初日の朝、僕は宿を出て、最寄り駅の階段を下りました。
パリの地下鉄には、エスカレーターやエレベーターが当たり前にあるわけではありません。これは知っていました。スーツケースはもう転がしていないので、まあいい。
問題は、乗り換えでした。
アプリが「乗り換え1回」と表示していた駅は、地上から見ると同じ場所です。でも中に入ると、その「1回」が、長い通路を歩き、階段を下り、また上がり、また通路を歩く、という工程でした。動く歩道もありましたが、止まっていました。
実測で、乗り換えだけで9分。
アプリの「20分」は、駅から駅までの時間です。宿から駅まで歩く時間も、改札での手間取りも、乗り換え通路の9分も、その数字には入っていません。
実際にルーヴルの前に立つまでにかかったのは、片道38分でした。
往復で76分。1日2回外に出れば、それだけで2時間以上が移動に消えます。
火曜日のルーヴル
そのルーヴルにも、僕は入れませんでした。
閉まっていたんです。火曜日だったので。
僕は「休館日」というものの存在を、まったく計算に入れていませんでした。日本の美術館にもあるのは知っています。でも、旅行の日程を組むときにそれを確認する、という発想がなかった。
しかたないので、じゃあオルセーに行こうと思って調べたら、そちらは月曜が休みでした。前日、僕はオルセーの前を通り過ぎていました。何も知らずに。
つまり僕は、月曜にオルセーに行けたはずの日をルーヴルの下見に使い、火曜にルーヴルへ行って閉まっていた、ということです。
38分かけて。
17時、腹が減っても店がない
もうひとつ、僕がまったく想定していなかったことがあります。
その日、朝から歩き回って、宿に戻る前に何か食べようと思ったのが17時ごろでした。
店が、開いていないんです。
ランチの営業が終わって、ディナーの準備に入る時間帯。表に椅子は出ているのに、中では店員がテーブルを拭いているだけ。何軒か回って、何軒も断られました。
結局、スーパーでバゲットとハムを買って、宿の部屋で食べました。パリで。
これも、知っていれば「その時間に食べようとしない」だけで済んだ話です。誰も悪くない。僕がパリの時間割を知らなかった、それだけのことでした。
帰国後、時間を数えてみた
日本に戻って、僕はメモを見ながら計算しました。
移動に消えた時間が、1週間で約12時間。休館日で潰した半日と、店を探して歩き回った時間を足すと、それ以上になります。
宿代は、たしかに安く抑えられていました。ロンドンのときのように腕も痛くならなかったし、部屋も快適でした。ちゃんと眠れました。
それでも、僕はパリで丸一日以上を、移動と待機に使ったことになります。
編集長に見せたら、地図を出された
このメモを編集長に見せたら、地図を出してきて、こう言われました。
「パリを地図の直線距離で見るのをやめてください」
パリの区は、中心から時計回りに、カタツムリの殻みたいに広がっていく並びになっています。だから番号が近くても場所が近いとは限らないし、番号が離れていても隣同士のことがある。
そして編集長がもっと重要だと言ったのは、こちらでした。
川の北と南で、街の性格がかなり変わる。滞在の目的によって、どちら側に泊まるべきかが変わる
「最寄り駅」より「その駅がどの路線に乗っているか」のほうが効く。乗り換えなしで動けるかどうかで、1日の消耗がまるで違う
美術館の休館日は曜日で決まっている。宿を決める前に、何曜日に何を見るかを決めておくほうが順番として正しい
最後のやつが、僕には効きました。ホテルを先に決めて、あとから予定を埋めていたんです。逆だったんですね。
「タケシさん、パリで失うのはお金じゃなくて時間です」
そう言われて、僕は返す言葉がありませんでした。ロンドンでは体力を失って、パリでは時間を失った。学習しているようで、僕は毎回、別の場所から刺されています。
次に行くときの僕へ
もし次にパリに行くなら、僕はホテルの予約より先にカレンダーを開きます。
何曜日に、どこへ行くのか。それを決めてから、その動線の上にある宿を選ぶ。編集長に言わせれば、順番を逆にするだけで防げることが、かなりの数あるらしい。
パリは、たぶん僕が思っていたよりずっと親切な街でした。ただ、街のほうにはルールがあって、僕がそれを知らなかっただけです。
バゲットとハム、おいしかったですけどね。部屋で食べましたけど。
で、結局どこに泊まればよかったのか
これが、僕がいま一番知りたいことです。
編集長は、パリを「川の南北 × 路線 × 治安」の3つで整理しています。区の番号でも、地図上の直線距離でもなく。
僕が選んだ宿は、地図で見れば確かに中心に近かった。悪かったのは場所じゃなくて、その場所から実際にどう動けるかを見ていなかったことでした。同じ「ルーヴルまで20分」でも、乗り換えなしの20分と、通路を9分歩く20分は、まったく別のものです。
エリアごとの特徴と、どのタイプの人に向いているか。それに、予約前チェックリストの全項目も。noteには表として貼れないので、ブログのほうに置いてあります。パリ行きが決まっている人は、予約ボタンを押す前に一度だけ覗いてみてください。
※この記事はブログ「ShortCut Traveler」のキャラクター・タケシによる体験記です。エリア別の比較、予約前チェックリスト、治安の境界線については、ブログ本編にデータとしてまとめてあります。→ パリのホテルエリアガイド
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