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終章:1日16時間勉強したのではない。気づいたら16時間経っていた

「どうやったら1日16時間も勉強できるんですか?」
もし誰かにそう聞かれたら、僕は正直、少し困る。
ここまで読んで、こう思った人がいるかもしれない。**「結局この人は、特別な人間だったんじゃないか」「気合いと根性があったから続けられたんだろう」**と。もしそう思わせてしまったなら、僕の書き方が悪かったんだと思う。断言する。僕は特別な人間じゃない。誰よりも誘惑に弱く、中学生の頃は机の片付けだけで1時間を溶かしていた、あの少年と本質的には何も変わっていない。
実を言うと、僕は最初から「16時間勉強しよう」と思っていたわけじゃない。むしろ逆だ。16時間勉強したのではなく、気がついたら16時間経っていた。 これが、僕の感覚として一番近い。
でも、そこには理由があった。ここまで各部の終わりに、僕は小さな一行を残してきた。実はあれは全部、バラバラな気づきじゃない。一つの方法の、違う断面だった。ここで、それを繋ぎ合わせてみようと思う。
一つ目。ピースを揃えること。 第1部で「できない理由は性格でも才能でもない」と書いた。あのピースの正体は、目標・課題・環境の3つだった。僕には「独立する」という明確なゴールがあった。そこから逆算すると、必要な資格が見える。「この資格を取るには、ここまで理解しなければいけない」「じゃあ今日は何をやる?」と、一つずつ逆算していく。ここで大切にしていたのは、時間ではなく課題だった。「今日は16時間勉強する」ではなく、「このドリルを全部終わらせる」。それが終わるまでは終われない。逆に早く終われば、そこでやめてもいい。16時間という数字は目標じゃなかった。課題を終わらせた結果として、生まれた時間だった。
二つ目。動機は不純でいい。 第2部で書いた通りだ。ゴールがスーパーカーでも、なんでもいい。ゴールさえあれば、逆算できる。
三つ目。「わからない」を埋める道具を持つこと。 第3部のYouTube勉強法がそうだった。課題を具体的にするための武器を持つと、机に向かう時間そのものが変わる。
四つ目。習慣は生活の導線に埋め込むこと。 第4部の、半身浴での30分がそうだった。「勉強するかどうか」を毎日悩まなくて済むように、生活の中に埋め込んでしまう。
五つ目。誘惑に勝とうとしないこと。 第5部の図書館、そして第6部のコワーキングスペースが、まさにそれだった。意志の力で誘惑と戦うのはやめた。誘惑そのものが少ない場所に、自分を置いた。 周りに、集中して作業している人がいる。誰かが勉強している。その空間にいるだけで「自分もやらなきゃ」という気持ちになる。適度な緊張感もある。「やる気があるから勉強する」のではなく、**「やらざるを得ない環境だから勉強する」**という状態を、先に作ってしまう。
そしてもう一つ、書いていなかったことがある。時間の管理方法だ。16時間ずっと集中していたわけじゃない。そんなことは僕にはできない。基本は50分勉強して10分休憩。調子が悪い日は30分勉強して5分休憩。全部タイマーで管理した。タイマーが鳴ったら、また戻る。スマホでSNSを開いて時間が溶けても、タイマーが鳴れば「はい、戻る」。意思を強くするんじゃない。時間のルールを先に決めて、そのルールに自分を戻していく。それだけだった。
眠くなれば、コーヒーを飲んで15分だけ仮眠した。食事をしながら問題を解いたこともある。「そこまでして」と思われるかもしれない。でも僕にとっては苦行じゃなかった。今日やると決めたことを、終わらせる。ただ、それだけだった。
小さな課題を一つクリアする。昨日解けなかった問題が、今日は解ける。それを積み重ねていくうちに、勉強は、少しずつRPGゲームのような感覚になっていった。
朝7時。コワーキングスペースに行く。朝食も昼食も夕食も持ち込む。ひたすら課題をこなす。50分やったら10分休む。眠ければ15分寝る。それを繰り返していると、気づけば夜になっていた。時計を見て、「もう23時か」。そこで初めて、「今日、16時間くらいやってるな」となる。これが、僕の16時間勉強の正体だ。
特別な才能があったわけじゃない。ものすごい集中力があったわけでもない。精神力が人より強かったわけでもない。むしろ、昔から誘惑には人一倍弱かった。だからこそ、目標を決める。ゴールから逆算する。今日やる課題を決める。小さな課題を一つずつクリアする。集中が切れたら休む。タイマーで戻る。誘惑に勝てないなら、誘惑のない環境に行く。ただ、それを繰り返しただけだ。
だから、今の僕はこう思っている。「16時間勉強できる人間になる必要なんてない。」 まずは、今日やることを一つ終わらせる。それでいい。一つ終わったら、次をやる。それを毎日繰り返す。その先に、気づけば自分でも想像していなかった場所まで来ているかもしれない。中学時代、机に座って1時間経っても、片付けしかできなかった僕がそうだったように。

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